教育研究上の目的

21世紀は生命科学の世紀と言われており、今後、生物を対象にした研究の重要性がますます高まると考えられる。生物は生体物質から細胞、個体に至るまで多くの階層から構成されており、各階層が相互に影響し合う複雑なネットワークにより生命現象が支えられている。本専攻はこれら生命現象に関与する物質的基盤から、遺伝情報の担い手であるDNAおよび細胞内各種膜構造体の構造と機能、遺伝情報の伝達・発現の制御機能、外部環境に応じた生体の恒常性維持調節などを総合的に研究し解析している。このような生命現象に関わる物質と制御機構の解明と理解を通して、独創的な研究者となるために必要な生物学の幅広い知識・学力・見識を備えた人材の育成を目指した教育を進めている。

分子生物学コース

鉄硫黄クラスター生合成マシナリー中心成分、IscUの結晶構造非対称な三量体構造の中に1つの鉄硫黄クラスターを含んでいる

分子生物学コースでは、核酸・タンパク質・糖質・脂質などの生体分子、および生物のゲノム情報を鍵として、生命現象の包括的な理解を目指した基礎研究、さらにその発展としての応用研究を進めている。生化学・分子遺伝分野では、大腸菌や枯草菌のゲノム情報を利用して、鉄硫黄タンパク質群の生合成機構に関する遺伝生化学・構造生物学的研究、膜脂質の生理機能に関する遺伝学・細胞生物学的研究や、細菌と細菌に感染するバクテリオファージの生存戦略や遺伝子発現機構に関する研究、高等植物を用いた細胞壁関連酵素や遺伝子に関する研究を行っている。細胞生理分野では、ラン藻や高等植物などの光合成生物のゲノム情報を利用して、環境ストレス応答に関する研究、膜脂質の生合成・細胞内輸送および生理機能に関する研究、油脂の生産性の向上をめざす研究、細胞膜上の物質輸送体タンパク質の機能解析や光合成遺伝子の発現制御に関する研究、新規顕微鏡法を用いた植物の長距離シグナルの研究を行っている。本コースの学生はこれらの研究活動のいずれかに加わり、研究遂行に必要な知識と技術を習得すると同時に、研究成果発表を通じて、論文執筆能力やプレゼンテーション能力を磨く。

分子生物学コースのホームページ

生体制御学コース

ホメオボックス遺伝子gbx2 (左、1日胚)と、成長因子遺伝子fgf8 (右、3日胚)の、発生中のゼブラフィッシュ脳における発現パターン。

生体制御学コースは、生体機能、生体情報制御、生体適応に関わる三分野より構成されている。生体機能学分野では、哺乳類を用いた神経・内分泌の調節機構の解析、行動と学習の研究、培養細胞を用いた細胞増殖・分化の研究、新規有用タンパク質の構造と機能の研究等を進めている。また、生体情報制御学分野は、菌類の遺伝子発現機構の解析、DNA修復および細胞死の研究、脊椎動物の発生に関する分子生物学的・発生遺伝学的研究および発生における遺伝子発現調節機構の解析等を行っている。生体適応学分野では、ストレス応答を含む植物環境応答と情報伝達機構の解析、組織培養による細胞分化・形態形成過程の解析、植物細胞の微細構造と機能の相関に関する研究等を行っている。本コースでは、上記研究を担当している教員からそれぞれの専門分野の講義を受け、最先端の知識を得ると共に、研究遂行に必要な研究戦略および種々の研究手法を学ぶ。

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