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2025/09/10

モヤモヤを話せる“居場所”をつくる

教養学部2013年度卒業生 古堂 達也さん

Profile

埼玉大学ダイバーシティ推進センター 臨床心理相談員古堂達也さん

新潟県立新潟南高等学校出身
2014年3月 埼玉大学教養学部教養学科卒業
2014年4月 介護サービス企業に介護職員として就職
その後、スクールソーシャルワーカーなどを経て、2024年10月から現職

「理系って男子の方が向いてるよね」――そんな何気ないひと言に、モヤモヤしたことはありませんか? 埼玉大学には、そんな思いを、誰にも気兼ねなく、話したり、相談できる場所が用意されています。それが「埼玉大学DEIコミュニティラウンジ SAiTO(サイト)」です。そして、この場所を運営している古堂達也さんは、埼玉大学の卒業生。古堂さんに「安心できる居場所」の大切さや、自身の大学時代の経験についてお話を聞きました。

大学内にジェンダーやセクシュアリティについて安心して話せる場所がなぜ必要なの?

――「埼玉大学DEIコミュニティラウンジ SAiTO(以下、SAiTO)」とはどのような場所ですか。

古堂さん ジェンダーやセクシュアリティを中心としたダイバーシティ(多様性)に関心がある学生が気軽に集まれるスペースです。性や人種、民族、障がいの有無などの違いが尊重される中で、安心して本を読んだり、利用者同士がリラックスして話したり、専属の相談員に相談をすることもできます。「このスペース内では差別的な言動は行わない」というコンセプトを利用者のみなさんに共有して、誰でも安心して過ごせる場所になるよう協力してもらっています。

――大学内に、このような場所があるのは心強いですね。

古堂さん 少しずつ理解は進んできたものの、まだまだジェンダーやセクシュアリティの話は、友達同士でもしづらいことがありますよね。思ったことをちょっと話してみたら「意識高いね」なんて流されてしまうことも。また、性のあり方が規範的ではない学生にとっては、まだまだ排除的な制度や文化が残っていると感じます。だからこそ気軽に集まって、安心して話せる場が必要だと考えています。

――実際には、どのような相談があるんでしょうか。

古堂さん たとえば「理系って男子の方が向いてるよね」って言われて、なんかモヤモヤしたという日ごろの何気ない1コマについての相談もあります。言った人に悪気がなくても、性別で向き不向きを決めつけられるのには違和感がありますよね。また、異性を好きになる前提で話されたとか、見た目で勝手に性別を決めつけられたといったモヤモヤを話してくれる人もいます。 そういう思いを気軽に話せる場所が身近にあるだけでも、気持ちが楽になるものです。それと、そのような声を集めることで、大学内の制度や環境を見直すヒントにもなります。

――具体的にはどのようなお仕事をされているのでしょうか。

古堂さん 「SAiTO」の運営全般と臨床心理相談員としての相談対応が主な仕事です。そのほかにも「SAiTO」のことをより広く知ってもらうために、イベントの開催やSNSでの情報発信なども行っています。仕事のやりがいを感じるのは、利用する学生の皆さんに「ここにいると本当に安心できる」と言ってもらえた時。「SAiTO」が誰かの居場所になれていることが、とてもうれしいです。

埼玉大学は多様性を深く学び、研究ができる理想の環境

――古堂さん自身、埼玉大学の卒業生ですが、なぜ埼玉大学に入学しようと思ったのでしょうか。

古堂さん 正直に言うと、地元の新潟を出たかったというのが一番の理由です(笑)。東京近郊の大学を探していて、埼玉大学の教員紹介で、福岡安則先生(現・埼玉大学名誉教授)の研究を知ったのがきっかけでした。先生のもとで、セクシュアルマイノリティについて学べると思って進学を決めました。

――ジェンダーやセクシュアリティへの関心は以前からあったのですね。

古堂さん はい。私自身、性のあり方が規範的ではないと自認していて、中高生のころはそのことでひとりで悩んでいることが多かったです。そんなときにテレビで、セクシュアリティをオープンにして活動している人たちを見て、「東京にはこういう人がいるんだ」と勇気をもらいました。それが都会へ出たいと思った理由の1つです。

――埼玉大学での学びはどうでしたか?

古堂さん 希望通り、福岡先生のゼミで、自分の興味にあった研究に取り組めて、充実した学生生活を送ることができました。また、ゼミだけでなく、通常の講義でも、NPOで活動する方や様々な社会的マイノリティの方の話を直接聞く機会が多かった印象があります。社会とつながりながら学べる環境があったのはありがたかったですね。そのような経験を通じて「社会をどのような視点でみるか」や「個人として社会課題にどう関わっていくか」ということを深く考えるようになりました。それが今の自分の考え方のベースになっているのは言うまでもありません。

――多様性について、興味関心がある高校生に向けて、メッセージをお願いします。

古堂さん 埼玉大学では、「SAiTO」のような誰もが安心して過ごせる場所をつくるなど、ダイバーシティ(多様性)の推進に力を入れています。2026年度からは、大学院に「ダイバーシティ科学」という新しい専攻もスタートします。マイノリティの立場にある方が安心して学べるのはもちろん、当事者でなくても「マイノリティの人たちを取り巻く状況を知りたい」「よりよい社会づくりに関わりたい」と思っている人にもおすすめです。人々の違いを認めあうダイバーシティの精神はこれからの時代には欠かせません。ぜひ埼玉大学で、そのような心を育んでもらえればと思います。

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