2021/10/08
大学時代に身についた研究への考え方が材料開発の仕事に役立っています
大学院理工学研究科 2015年度卒業生 牧島幸宏さん
2021/10/08
大学院理工学研究科 2015年度卒業生 牧島幸宏さん
都立両国高等学校出身
2013年3月 埼玉大学理学部基礎化学科卒業
2015年3月 埼玉大学大学院理工学研究科基礎化学コース修了
2015年4月 コニカミノルタ株式会社入社
現在、材料コンポーネント事業本部 機能材料事業部 開発統括部 所属
プリンターなどのOA機器や印刷機、医療向け製品、計測機器などの開発、製造を行うグローバル企業として知られるコニカミノルタ。一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、テレビやスマートホンのディスプレイに使われる材料の開発・製造も同社の重要な事業の1つです。そんなディスプレイ材料の開発に埼玉大学の卒業生が携わっています。
液晶よりも、消費電力が少なく、鮮明な画像が表現できると、注目を集める有機ELディスプレイ。そんな有機ELディスプレイの性能や機能を向上させる材料の開発が現在の仕事の内容です。
有機ELディスプレイの特徴は薄く、軽く、曲げられる点です。最近では、スマートホンなどで、紙のように折り曲げたり、クルクルと巻き取れる形状に進化したものも開発されています。しかし、それを実現するために材料に求められる機能は非常に厳しいものとなっています。私たちの開発チームでは、そんなチャレンジブルな材料の開発を行っています。
このような材料の開発は、単に機能や性能を満たせばよいという訳ではありません。出来上がった製品がいくら優れたものでも、高額すぎては消費者の皆さんに買ってもらえません。それ故、材料そのもののコストや製品を作る際のコストを下げる工夫が必要になるのです。
大学と大学院時代に研究してきた有機機能材料の開発に携われることと、グローバル企業であることが、コニカミノルタに入社しようと思った理由でした。
学生時代には、フランスへの留学も経験しましたが、高校時代から海外を舞台に仕事がしたいと考えていたので、海外市場での売り上げを伸ばしていることが魅力的に感じたのです。
実際に仕事をしていて感じるのは、現在の職場は研究開発という仕事をする上では恵まれているということ。第一に年齢や上下関係にかかわらず、フラットに意見を述べられる雰囲気があります。若手リーダーを後押しする社風で、やる気さえあれば若手でもチャレンジできる環境が整っているのはありがたいです。さらに「失敗を恐れずにまずはやってみる」という考え方が根付いていることも、研究職の仕事をしやすくしてくれていますね。
研究によって導き出した結果をお客様に提案し、評価いただくことがやりがいにつながっています。当然、仕事をしていても思ったような成果につながらないことも往々にしてありますが、お客様に採用されて製品化すると、そんな苦労も報われた気持ちになりますね。
大学4年生から大学院修了まで在籍した石井昭彦先生の研究室では、世の中にない新しい材料を発見して、どういう機能があるか検証していくという素材開発の魅力や醍醐味を知ることができました。
そもそも埼玉大学を選んだ理由の1つは他の大学には珍しい基礎化学科があったから――。「化学を総合的に理解するための基礎的知識・技術を修得させる」という教育理念に魅力を感じたことがきっかけだったのですが、そのおかげで基礎に立ち返って、ミクロで物を見るスキルが鍛えられたと思います。このようなスキルは、仕事をしていて、予想と異なる現象が起きた際の再考察や仮説の立案・検証プロセスで役立っているのは間違いありません。
また、在学中のフランス留学もよい経験になりました。フランスでは学生でも指導教員に対して自分の意見をしっかり述べます。そのような環境に身を置いたこと、物怖じせず自分の意見を述べられるようになったと思います。
埼玉大学の理学部は、学生の数が少なく、先生との距離が近いのが特徴。ですので講義などで疑問が生じてもすぐに質問に答えてくれますし、やりたいことがあれば後押しもしてくれるでしょう。
埼玉大学では、学びの質が高いことはもちろん、緑豊かでゆったりとした時間が流れるキャンパスの雰囲気のおかげで、高校時代に想像していたような理想的なキャンパスライフを送ることができました。
受験生や後輩たちには、学びの環境が整っている埼玉大学でぜひやりたいことを実現して欲しいですね。