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2021/02/12

【教育学部】お母さんが自分らしく育児をするために必要な支援の在り方を考える

教育学部 乳幼児教育コース/寺薗研究室

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埼玉大学のユニークな研究を紹介する「ラボ探訪」。

今回は、教育学部乳幼児教育コース 寺薗先生の研究をご紹介します。

今まで見過ごされてきた育児とモチベーションの関係性

ライフスタイルが多様化し、社会環境が変化する中、子育ての悩みを抱える母親が増えていますが、そのような状況を改善するために、自己決定理論を活用した「育児支援モデル」の開発に取り組んでいます。

自己決定理論とは、自律的であること(自己決定すること)が精神的な健康を促進するという「モチベーション(動機づけ)」に関する理論。つまり、育児に対してお母さんが「やりがい」や「楽しさ」、あるいは「できる」という感覚を味わうことで、母親自身はもちろん子どもの幸福感の向上を目指した研究を行っているのです。

そして、この理論を元に、保育者が母親の育児に対するモチベーションを支えること――母親と信頼関係を築きながら母子のニーズを把握し、母子の幸せを目指した育児支援技術の方法をモデル化しようとしている訳です。

従来、盛んに行われてきた育児支援に関する研究と異なるのは、「お母さん」を子どもの発達を支える背景として捉えるのではなく、育児を行うお母さんそのものへの支援を検討するという点。これによって、母親が安心して、自分らしく子育てできる世の中を実現したいと考えています。

研究の成果の1つに挙げられるのが、育児支援アセスメントツールの開発です。これは育児に対する母親の意識を可視化し、そこで得た情報を元に実施した育児支援を客観的に評価するもの。2019年度には、埼玉県内の7つの保育所でツールを使った実験的な研究を行いました。

今後は、この実験やこれから行う新たな実験の結果から収集したデータを分析して、支援モデルの精度や使いやすさを現場で活用できるレベルにまで高めていく考えです。

研究は自分好みの味わいに仕上げる料理のようなもの?

研究の道に進んだきっかけは、看護師をしながら育児をしていた頃に、イヤイヤ期真っ只中の我が子への育児にストレスを感じたことでした。なぜ他所の子どもには優しくなれるのに、自分の子どもにはイライラしてしまうのか? そんな疑問を解消するために、改めて大学で発達心理学を学ぶことを決心したのです。

そして、大学院に進んで、自らの研究を始める際に、育児をする能力は母親に生まれつき備わっているのではなく、学習して獲得するものだと気づき、毎日同じことを繰り返す育児を続けるにも、ポジティブなモチベーションとその支援が必要だという考えに至ったのです。

研究を行うのは、やはり楽しいものです。そのプロセスは、出来上がりをイメージして、素材に様々な味を加えることで自分なりの味わいにしていく料理に似ているような気がします。実際の研究活動では、はじめに仮説を立て、検証のためにアンケート調査を実施し、統計的な処理を行います。そこで、仮説通りの結果が出たときの喜びは何物にも代えがたいですし、予測しなかった結果が出ても、考察を深めるきっかけになるので、それはそれで面白い――。

これまでの基礎研究を踏まえ、母親の自分らしさを尊重することが育児において必要なことを、伝えていけたらと考えています。そのためにも、自己決定理論を活用した「育児支援モデル」を構築したいですね。

 

寺薗 さおり

寺薗准教授より受験生へMessage

保育者に求められる観察力と問題解決能力を身につけるために

 私が受け持つ乳幼児教育コースでは、保育者(幼稚園教諭や保育士)を目指す学生が数多く在籍しますが、子どもや保護者のニーズに応じた育児支援を行うには、対象を客観的にきちんと理解することが必要です。また、伝達能力が未熟な乳幼児はもちろん、保護者が抱える不安や悩みは自発的に話してくれるとは限りませんので、対象のちょっとした変化に気付くための観察力も求められます。
 ゼミに参加する学生はアンケート調査を行う機会がありますが、その中で重要になるのが調査項目の検討ー調査対象を理解するためにどのような視点から調査を行うべきかを検討することー。そのような経験が、客観的に観察する力や問題解決能力の習得にも繋がると思います。
 いずれにせよ学生たちには、子どもたちはもちろん、保護者や同僚に信頼される保育者として、将来活躍してもらいたいと思います。そのためには、常に学び続けることと謙虚な姿勢が大切。受け持つ子どもと親御さんの親子関係がスタートする、尊いプロセスに携われることに感謝する気持ちを忘れずに、保育者という仕事に勤しんでほしいですね。

埼玉大学の多様性を持つ学びの環境が自分らしさを形成してくれる

 アンケート調査がメインとなる私の研究は、幼稚園や保育所、地域の方々の協力によって支えられています。埼玉大学は地域からの信頼が厚いので、非常に研究がしやすい印象です。そして、私自身もそのような信頼を損なわないよう、気を引き締めて研究に当たっていかなくてはならないと常々考えています。
 文系と理系、すべての学部が1つのキャンパスに集まっているので、異なる分野で学ぶ学生同士で刺激を与え合える埼玉大学の環境は、学生にとっても大きな魅力だと言えるでしょう。実際に私の講義に理学部や工学部の学生たちが出席することもあり、私自身も刺激を受けています。大学時代は、アイデンティティを確立する大事な時期。多様な価値観に触れ、視野を広げることが大切です。ぜひ埼玉大学で、自分らしさを深める学生生活を送ってほしいと思います。

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