2024/04/18
【経済学部】時代とともに変化する企業の姿を捉え、経営理論を進化させる
経済学部 メジャー 国際ビジネスと社会発展/石研究室
2024/04/18
経済学部 メジャー 国際ビジネスと社会発展/石研究室
学生時代に「生きている学問」だと感じ、経営学の世界に飛び込んだという本学経済学部の石 瑾 教授。そんな石教授が、現在注力しているのが、多国籍企業におけるサプライ・チェーン・マネジメントの研究だといいます。この研究は一体どのようなものなのか? お話を伺いました。
専門は経営学ですが、その中でも現在は多国籍企業におけるサプライ・チェーン・マネジメントの研究に取り組んでいます。
サプライ・チェーンとは、製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れのこと。かつての企業は単独で競合相手と戦ってきました。例えば、他社にない商品を発売したり、他社がもたない技術を駆使して新たなサービスを生み出したりするという具合です。
それが1990年代に入ると、様相が変わります。多くの企業が自社の力だけではなく、サプライヤー(原材料や部品の供給者)や商品の流通を担当する流通業者と手を組んで競合相手と戦うようになりました。つまり競争の軸が個別の企業からサプライ・チェーンに切り替わったのです。
また、最近では、エコシステム(供給と需要の関係に収まらず、異なる業界や企業が連携し、それぞれの業務やサービスを補い合う仕組み)を形成して、競争力を強化する米国のグーグルやアマゾンのような企業も登場しています。
私の研究では、国をまたいでビジネスを展開する多国籍企業がそのような仕組みをいかに構築し、運用しているのか、具体的な事例を分析するのです。
ここ数年、研究としている企業の1つに中国を代表する大手IT企業である「アリババ」があります。
同社は新興国発の多国籍企業の代表企業ですが、グーグルやアマゾンと同様にエコシステムを形成することで、ビジネスを拡大してきました。そして、このエコシステムをどのように構築してきたのかなどについて、欧米の多国籍企業と異なる点を比較しているのです。
新興国発の多国籍企業と欧米の多国籍企業の決定的な違いは「自社が必要とする資源を探すために、あえて海外に行くか、どうか」という点にあると考えられます。
欧米の多国籍企業の多くは、国内市場が成熟した結果、新たな市場を求めてグローバルに展開する一方で、新興国発の多国籍企業は早い時期から海外に打って出るケースが多い。つまり、自社の成長に必要なものを探すためにグローバルに展開しているといえます。
それ故、従来研究されてきた欧米型の多国籍企業論では、新興国の多国籍企業の活動をとらえることができません。私はこの点に着目し、新たな理論を確立するために日々の研究に取り組んでいるのです。
さて、アリババの研究では、先にお話しした欧米型と新興国型の2つの戦略を巧みに使い分けていることが明らかになりました。
例えば、設立して10年たたないうちに、米国で上場し資金を調達していますが、これは自社の成長に必要な資金を海外に求めた新興国型の戦略と位置付けられます。そして、このような活動と並行して、欧米の多国籍企業のごとく、他の新興国市場の開拓にも力をいれているのです。
コストを重視してきた時代には、日本企業もこぞって、中国をはじめとする海外拠点にサプライ・チェーンを集中させてきました。しかし、コロナ禍やウクライナの戦争の影響で、思ったように部品が供給されない自体に直面。その結果、コストよりも安全供給を優先すべきという考えで、サプライ・チェーンの国内回帰を進める動きも出てきています。
このような状況を鑑みても、サプライ・チェーン・マネジメントの研究は、現代の企業活動を考える上で、非常に重要な領域だといえるのです。