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2023/01/19

【経済学部】なぜ経済政策はうまくいかないのか? お金と経済理論の関係からその謎を解き明かす

経済学部 メジャー:「経済分析」/結城研究室

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お金は私たちの生活に欠かせないものですが、経済学の世界において、その存在はあまり重要視されてきませんでした。「それゆえ、標準的な経済学の理論だけでは、実際に起こっている経済現象を必ずしも適切に説明できない」と指摘するのが、経済学部の結城剛志教授です。そんな結城教授が取り組む研究の内容とは、どのようなものなのでしょうか?

標準的な経済学にはお金の視点が抜け落ちている?

「お金とは何か?」

標準的な経済学の理論では、この問いに対して、明確な答えを出すことはできません。

なぜか。標準的な経済学の理論は、物々交換をモデルに作られていて、お金のことを十分考えていないから。

とはいえ、私たちの経済活動には、当然のようにお金が使われます。そうであるならば、お金の視点が抜け落ちている経済理論は、現実から乖離したものだと考えられます。

たとえば、経済の専門家たちの知見をもとに立案される経済政策には、経済理論が反映されています。なのに、思ったような結果につながらないことが少なくありません。その理由のひとつには、ベースとなる理論がお金を考慮していないことが関係しています。

さらに、テレビなどで、経済政策について議論を交える経済学者たちの姿をよく目にしますが、たいていの場合、話がかみ合っていないように見えるのではないでしょうか。それも、お金に関する経済理論の未確立が影響しています。なぜなら、それぞれの立場のよりどころとなる理論ごとに、異なる理解の上でお金をとらえているから。この状態をたとえるなら、ある人は秋田犬をイメージし、別の人はチワワをイメージしながら、犬について話しているようなもの。これでは話がかみ合うはずがありません。

つまり建設的な議論を行い、適切な政策を立案するためには、お金に対する共通理解をもつことが求められます。さらに実際の経済現象を説明するためにも、お金に関する理論を組み込んだ経済学を作り直すことが必要なのです。

それを実現するために、私が取り組んでいるのが、貨幣論の研究です。

貨幣論とは、その名の通り、貨幣(お金)のことを考える研究分野ですが、とくに論争の歴史をひもとくことを手がかりにして、研究を進めています。

これまでの長い歴史では、さまざまな国や地域で、財政・金融政策にとどまらず、貨幣の制度や管理のあり方にまで踏み込んだ議論がなされてきました。そのような議論の中から問題点を発見し、検証していくのです。

イギリスにおける100年前の論争からアベノミクスに関する論争まで幅広く研究

現在、取り組んでいる研究テーマに、2013年から当時の安倍内閣のもとで進められた経済政策「アベノミクス」があります。

簡単に言えば、アベノミクスは、お金の量を増やして物価を上げようとする政策です。経済学者のほとんどが貨幣論は必要ないと考える中、貨幣論の必要性を説いた点でユニークな政策だといえるでしょう。私のような貨幣論の専門家にとっては、非常に興味深いテーマなのです。

私自身はアベノミクスは失敗したと考えていますが、研究においては、政策の成功や失敗そのものはあまり重要ではありません。それよりも、なぜうまくいかなかったのかを考察し、その政策のベースになった経済理論の問題点を明らかにしていくことが大切です。

もちろん、研究テーマは、現代の経済政策や論争にとどまりません。

たとえば、19世紀初め、不況に襲われたイギリスで生まれた「バーミンガム学派」と呼ばれる共通の経済思想をもつ集団も、注力している研究対象のひとつ。

彼らは、当時、イギリスで採用されていた金本位制(金をお金の価値基準とする制度)に反対し、中央銀行が貨幣の供給量をコントロールする管理通貨制を支持したことで知られています。つまり、現在、世界的に確立されている通貨制度の有効性を100年以上前に説いていたのです。

金本位制の時代が終わったいま、金と交換できることで担保されていたお金の価値が実態を伴わなくなり、「貨幣とは何か?」がますますわかりにくくなっています。彼らも、現在の経済学者と同様に「お金とは何か?」という疑問に直面していました。ですので、当時の論争を研究することは、現代に暮らす私たちにとっても意義のあることなのです。

歴史の中には先人たちの知恵やアイデアが溢れています。歴史に埋もれている新奇性や異端性のある着想を拾い出し、理論的な批判・検証を行い、現代の常識では考えつかないようなユニークな解決法を導き出したいという思いをもって、日々研究に取り組んでいます。

結城教授より受験生へMessage

大学における学びの神髄は、知識の習得ではなく、学ぶ力を養うこと

 ゼミでは、「テキスト・クリティーク」という手法を取り入れた指導を行っています。これは文献を批判的な視点を交えて読む手法。書かれている文章の表面的な意味だけではなく、その論理構造や整合性を検証しながら徹底的に読み込んでいきます。
 このようなことを繰り返し行うことで、文献を理解する力が向上します。同じ文献を読んでいても、そこから学べる量や質が変わってくるのです。さらに文章を書く力も身につきますし、思考も論理的になる。このようなスキルは、社会に出た後でも大いに役立つものだといえるでしょう。
 大学で得た知識は、社会に出た瞬間から古くなっていきます。だからこそ、大学では、知識の蓄積よりも、学ぶための力を養って欲しいですね。

第一線の研究で得た知見が、学生の学びに還元される

 埼玉大学の経済学部には、「経済分析」「国際ビジネスと社会発展」「経営イノベーション」「法と公共政策」というメジャーが用意されていて、経済学以外にも、多様な分野を学ぶことができる特徴があります。幅広い視野をもって学べるのは、学生にとってのメリットのひとつだと思います。
 研究者の立場からいうと、埼玉大学は研究機関としての役割を維持しようと努力しているのがありがたいですね。研究活動のサポートも手厚く、本当に研究がしやすいです。
 また、教員が研究者として活動できる環境が整っていること。このことが学生にとっても価値あることなのは間違いありません。第一線で研究している研究者による講義の内容は、研究で得た知見がベースになるため、常にアップデートされていくからです。
 受験生には見えにくい部分ですが、そこで学ぶ学生にとっては見逃すことのできないポイントだといえます。

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