“埼大人”の魅力を
あらゆる角度から掘り下げる
オンラインマガジンです

2023/07/27

【工学部】熱帯植物の国内栽培、アフリカにおける環境破壊問題の解決など、多様なアプローチから循環型社会の実現を目指す

工学部 環境社会デザイン学科/藤野研究室

  • SAIDAI CONCIERGE
  • >
  • >
  • 【工学部】熱帯植物の国内栽培、アフリカにおける環境破壊問題の解決など、多様なアプローチから循環型社会の実現を目指す

環境問題は、私たちが直面する課題の中でも特に緊急性が高いものです。しかしながら、いまだ温暖化や水質汚染、森林破壊などは進行していて、問題解決は程遠い状況といわざるを得ません。本学工学部の藤野毅教授は、この問題に取り組む研究者の1人。都市の緑化や水質保全に寄与する可能性がある熱帯植物を日本で育てたり、アフリカの環境破壊を抑制する方法を考察したりと、ワールドワイドに活躍する藤野教授の研究内容を紹介します。

ヒートアイランドを抑制する舗装技術から熱帯植物の研究まで研究対象は多種多様

専門は、環境問題の解決策を考察する環境工学です。ただし、一口に環境工学といっても、対象となるテーマは様々。研究テーマは敢えて限定せず、その時々で興味のあるものに取り組んできました。

例えば、道路に水分を蓄えることでヒートアイランドを抑制する効果がある舗装技術や木材を使って発電するバイオマス発電技術の開発等々――。研究のフィールドも国内に限られません。過去にはミャンマーの農山村地域における生態系保全の研究を行ったこともありました。

現在、注力しているテーマは主に3つです。「北インド原産の熱帯植物『モリンガ』の研究」と「アオコが発生した水の浄化装置の開発」、そして「アフリカのカメルーンでのパーム油生産に由来する環境破壊に関する研究」に取り組んでいます。

「モリンガ」が環境保全に与えるインパクトとは?

「モリンガ」の研究は、埼玉県さいたま市に位置し、首都圏にありながら、広大な面積を誇る緑地として知られる「見沼田んぼ」で、栽培しながら進めています。

栄養価に優れる「モリンガ」は、健康食品や化粧品などに活用されていますが、従来、寒さに弱く、日本では栽培が難しいため、輸入に頼ってきました。しかし、近年、日本の冬を越せる「モリンガ」があることが判明。そこで、「見沼田んぼ」で栽培を試みています。「モリンガ」は成長が早く、栽培効率が高いのが特長。この研究をきっかけに「モリンガ」の栽培が国内に広がれば、都市緑化やカーボンニュートラルの実現などが期待できるのです。

▲インド産モリンガの種(左上)と見沼耕作放棄地で生育中のモリンガ(右上)。すぐに数mの樹木になり葉は栄養補助剤(タブレット(左下))に、幹はチップ化(右下)して燃料や土壌改良剤として活用

また、「モリンガ」の研究は、現在並行して進めている浄水装置の開発にも役立つのではないかと期待しています。

現在、開発中の浄水装置は、アオコが発生した汚水を電気分解反応により浄化するもの。薬品を使わないため、安全に飲み水が確保できるのが特徴です。

ただ、この装置、浄水性能は申し分ないのですが、実用化までには乗り越えなければならない壁が存在します。消費電力量を抑えて、処理コストを下げなければならないのです。

そこで、目をつけたのが「モリンガ」の種。「モリンガ」の種を粉砕したものには、活性炭と同様の浄水作用があることがわかっています。つまり、電気分解反応と併せれば、浄水にかかる消費電力量の抑制が期待できるというわけ。現在、その実現に向けた研究を進めています。

▲栄養塩(窒素・リン酸)の自動分析装置を前に

カメルーンで循環型社会の構築を目指す

カメルーンの環境破壊に関する研究は、実際に現地に訪問しながら進めています。

現在、カメルーンでは、大企業によるパーム油生産が盛んですが、それに伴う環境破壊が社会問題化しています。

この問題を解決するために、私が注目しているのが、現地の農村で伝統的に行われてきたパーム油の生産方法。工場で作る油に比べ、生産量や油の品質は劣るものの、生産過程における環境への負荷は低いからです。

▲アフリカ・カメルーンの零細パーム油生産現場。環境汚染の防止と資源循環の両立を目指す

そこで、伝統的な生産方法で、パーム油の生産量を増やし、品質向上を実現する仕組みづくりを検討。同時に生産時の排水を浄化する装置の開発も進めていますが、低環境負荷な農村のパーム産業を支援することで、循環型社会の構築に寄与できると考えています。

この研究が実を結べば、カメルーンと同様の課題に直面するアフリカ諸国にも展開することが期待できるでしょう。そうなれば地球環境に大きなインパクトを与えられるのはいうまでもありません。

▲自然再生後のサクラソウトラスト地(桶川市)保全活動。自然との共生からサステナビリティを考える

目指すのはゼネラリストというスペシャリスト

これまで幅広い研究テーマに取り組んできた私が目指すのは、「ゼネラリスト(編注:幅広い知識を備える人のこと)」のスペシャリスト。一般的に、大学教授といえば、その道のスペシャリストというイメージがあるので、少し独特に思われるかもしれませんね。

工学で求められる技術は、時代とともに変化していきます。そのため、求められているタイミングで、解決策が提示できなければ、それは不要なものになりかねません。それが工学の難しさの1つだといえるでしょう。

ただ、幅広いテーマを対象としている私の研究では、その時に利用価値がない技術や知識でも、別のテーマで利用できる可能性が残されています。ですので、たとえ成果につながらなかった研究でも、そこで得た知見はいつか役に立つかもしれない。そんな期待をもてるのも、この研究の面白さの1つですね。

藤野教授よりMessageMessage

工学に関する幅広いスキルはもちろん、環境に対する広い視点が身につく

研究室に所属する学生には、システムの開発のほか、実験や社会調査を行ってもらうこともあります。
また、埼玉の県花であるサクラソウの自生地で、保全活動の手伝いをする機会も設けているのも特徴の1つ。工学の範疇を超えているかもしれませんが、このような活動を通じて、自然環境を守ることの大変さを肌で感じ、さまざまな立場の人たちと協働することの重要性を学んでもらえればよいと思います。
さらに、海外からの留学生が数多く所属しているのも、私たちの研究室の特長。それ故、英語でコミュニケーションをとることもしばしばです。そのような環境に身を置けば、英語力だけでなく、価値観を広げることが期待できるでしょう。
これから埼玉大学に入る皆さんも、ぜひ幅広い視野をもつことを意識してください。そして、入学後には、その意識をもったまま、貪欲にたくさんのことを吸収して欲しいですね。

工学を学び、研究する上で埼玉大学工学部は理想的

自由なテーマで研究に取り組ませてもらえるのは、研究者として埼玉大学に所属していてよかったと感じる点です。
また、先に話した通り、同じさいたま市内にある「見沼田んぼ」で「モリンガ」を栽培していますが、都市と自然が混在する大学周辺のロケーションは、私のような研究を行う者にとって魅力的なのはいうまでもありません。
工学は、いわば「“理想”と“現実”をつなぐ方法」を考える学問です。そして、埼玉大学工学部には、そんな「“理想”と“現実”をつなぐ方法」を幅広く習得できる環境が整っています。このことは工学を学ぼうとする学生にとっては大きなメリットです。ぜひ、工学を学ぶのに理想的な環境で、自らのスキルを高めてください。

関連タグ

Related article

2020/08/29

【工学部】仕事のコツを自ら学ぶロボットを開発して人の暮らしを豊かにしていくために

2024/03/28

【工学部】 人と人の関係性をよくするためにロボットや機械はどうあるべきなのか――を考える

2022/09/05

【教育学部】長い歴史の中で日本語の語彙がどのように変化していったのかを探る

2021/01/07

【工学部】自動運転実現のカギとなる組込みソフトウエアの性能向上を目指して

ALL VIEW

CATEGORY

ラボ探訪

最先端の研究成果を誇る埼大ラボ。その裏側に迫ります。

在学生の活躍

サークルや学問などの分野で活躍する埼大生の姿を追います。

国際交流

海外留学の経験者や留学生の生の声をお届けします。

キャリア教育

埼大生の未来を切り拓く、大学側の取り組みをお知らせします。

サークル紹介

埼大の顔ともいえる、個性豊かなサークルにフォーカスします。

卒業生紹介

世界に羽ばたき活躍するOB・OGのメッセージを紹介します。

Pagetop