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研究トピックス一覧

令和6年度 戦略的創造研究推進事業ERATOに採択されました(大学院理工学研究科 豊田正嗣教授)

2024/9/27

9月27日(金)、大学院理工学研究科 豊田正嗣教授を研究総括とするグループの提案が、科学技術振興機構(JST)による戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(Exploratory Research for Advanced Technology、以下ERATO)の令和6年度新規研究総括および研究領域に採択されました。

ERATOは、大規模な研究費を使い、分野融合や新しいアプローチで挑戦的な基礎研究を推進し、科学技術イノベーションの創出を目指すプログラムで、研究総括が複数分野の研究者を集め、プロジェクトを指揮し、新しい研究分野の開拓に取り組む点が特徴です。

推薦やJSTの独自調査で得た9,071名の候補者母集団から、厳正な絞り込みが行われ、そのうち31名に研究構想提案が依頼されました。その結果提出された22件について審査の結果、最終的に3件の研究総括と研究領域が決定されました。豊田教授の研究は、独創的かつ挑戦的な研究であり、これまでのオジギソウの研究実績などから総括にふさわしいと評価され、今回の採択に至りました。

【ERATO】

研究総括 大学院理工学研究科 豊田正嗣教授
研究領域 植物感覚
詳細 詳細は科学技術振興機構報 第1717号からご覧いただけます。

研究領域「植物感覚」の概要(以下、科学技術振興機構報 第1717号より引用)

植物は土壌に根差しその場から自由に動くことがないなかで、日照や気温、乾燥などの天候や他の生物からの影響など、刻一刻と変化する環境に適応しながら生存しています。
近年の研究により、植物が雨風や他の生物からの接触、食害などの物理的な刺激(機械刺激)を感知し、瞬時にその情報を個体全体に伝えることで、成長制御や防御応答などそれぞれの刺激に適した応答をとることや、傷つけられた細胞や組織から放出される化学物質(匂い)を介して互いに情報をやり取りしていることが明らかになってきました。このように、植物が外部の環境から与えられる刺激を局所的に感知し、その情報を個体内・個体間で伝達して最適な反応をとることでさまざまな環境に適応していることが認知されるようになってきましたが、植物の刺激感知や情報伝達の詳細な機構の科学的な解明には至っていません。その一因として、従来の可視化技術では、刺激を受けた植物の個体レベルでの情報伝達の様子を瞬時に観察できず、刺激を感知し細胞内の情報伝達物質に変換する一連の分子機構の解明が困難であったことが挙げられます。 

本研究領域では、植物の情報伝達を可視化できる独自の観測技術を用いて、植物における機械刺激と匂い刺激の感知・伝達機構を分子から個体、集団に至る幅広いレベルで時空間的に解明することに挑みます。具体的には、研究総括らがこれまで開発してきた可視化技術と分子遺伝学的な手法を組み合わせることで、刺激に対する植物の応答を観測し、それぞれの刺激を感知する受容体を探ります。また、電気生理学および生物物理学的な手法を通じて、感知した刺激を情報伝達物質に変換する分子機構を明らかにするとともに、実験室内で自然環境を再現した生態系にまで観測対象を広げることで、自然界の刺激に対する植物の感知・応答の仕組みの解明に迫ります。 

本研究領域を通して、師管や気孔のような植物固有の組織や構造と、進化的にさまざまな生物種に保存された刺激感知・情報伝達の仕組みに基づいて、植物が触覚や嗅覚のような機能を有していることを明らかにします。植物がこれらの生命機能により、外部からの機械刺激や匂い刺激に瞬時に応答し、さまざまな環境に適応していることが明らかになれば、植物科学に限らず基礎生物学や農学、生態学など幅広い学問分野に大きなインパクトを与えることが期待できます。また、植物の感覚応答機構に働きかける制御技術の創出を通して、将来的には食料生産などにおいて、殺虫剤や殺菌剤などの化学合成農薬に依存しない新たな病害虫防除法の開発につながることも期待されます。

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