2025/05/13
次世代を担う研究者を志す卒業生を表彰!
「梶田隆章賞」受賞者インタビュー
2025/05/13
「梶田隆章賞」受賞者インタビュー
令和6年度 理学部生体制御学科卒業
鴇崎皓紀さん
(北海道札幌南高等学校出身)
令和6年度 工学部機械工学・システムデザイン学科卒業
秦 幸輝さん
(埼玉県立越谷北高等学校出身)
毎年、卒業生の中から研究者への高い志を有する学生を表彰する「梶田隆章賞」。若手研究者の育成推進を目的に、本学フェローで、2015年にノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生(東京大学宇宙線研究所・卓越教授)の寄附により創設された表彰制度です。令和6年度は、工学部と理学部から1名ずつ計2名の学生が表彰されました。
――「梶田隆章賞」受賞おめでとうございます。
鴇崎さん&秦さん ありがとうございます。
――受賞の感想を教えてください。
鴇崎さん 梶田先生が埼玉大学の卒業生であることは、入学を志望した際に当時の担任の先生から聞かされて知っていました。以来、憧れの存在だった梶田先生の名前を冠した賞をいただけて、とても嬉しいです。
正直、自分がやってきたことが、この賞に値するものなのかどうか、わかりませんが、これから大学院で研究を続けることに対する励みになったのは間違いありません。
秦さん 僕も「本当に自分がこのような栄誉ある賞をいただいてよいのか?」という思いが強いです。
だた、その一方で、梶田先生の名に恥じないよう、より真剣に研究に取り組んでいこうという思いが強くなりました。
――大学時代に取り組んだ研究テーマについてご説明いただけますか?
鴇崎さん 脳や神経に関する研究に取り組んできました。特に長きに渡って研究したのが、ゼブラフィッシュという小型の熱帯魚を用いて、神経発生に関わる遺伝子の発現パターンに関するものです。
脳や脊髄などを構成する神経細胞(ニューロン)は、神経前駆細胞が分化して作られます。この神経前駆細胞には、分化するものと分化しないものがありますが、それぞれのメカニズムを調べてきました。
秦さん アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の早期発見を実現するシステムの開発を行ってきました。
例えば、パーキンソン病にかかると、手足のふるえや筋肉の硬直など「運動症状」が出る前に、「非運動症状」と呼ばれる異常な感覚に襲われるような症状が出ることがあります。神経変性疾患も他の病気と同様、症状が悪化する前に治療を始めることが重要です。しかし、多くの場合、病気を自覚するのは「運動症状」が出た後。なぜなら「非運動症状」は、見た目からはわかりにくいからです。
研究では、ロボットを介して自身に触覚刺激を与えさせることで、神経変性疾患を持つ人の「非運動症状」に近い感覚を誘発させる仕組みを構築。誘発後の反応を健常者と比べることで、疾患を持っている可能性を評価することができないか、考察しているのです。
――奇しくもお2人とも脳や神経に関する研究に取り組んできたわけですね。
鴇崎さん&秦さん そうですね(笑)。
――大学院ではどのような研究に取り組む予定ですか。
秦さん 僕は、大学時代に在籍していた原 正之教授の研究室で、引き続き大学時代に携わってきた研究を進めていきます。
これまでは、主に診断装置の小型化を実現することに取り組んできましたが、大学院では、患者の方や健常者の方を対象にした実験を進めていく予定です。
鴇崎さん 総合研究大学院大学の遺伝学コースで、米原圭祐教授の研究室で視神経の研究に携わる予定です。具体的には、網膜で受け取った情報を、脳がどう処理をしているのか。そのメカニズムを解明したいと考えています。
――あなたにとって研究とはどんなものでしょう?
秦さん 研究とは、真理を明らかにする活動だといわれますが、「真理を明らかにすること」の大部分は、「自分なりの正解を検証すること」であると捉えています。
そう考えると、大学での研究以外の活動にも似た一面があると思います。バレーボールや書道などにも取り組んできましたが、自分が納得できるようなプレーや作品づくりを追究することも同じ。研究は自分にとって人生の軸となるものですね。
鴇崎さん 自由に着想して、自分で手を動かして、真理を得る取り組みでしょうか。そして、普遍的な価値を有する真理を得るという活動に携われることに大きな喜びを感じています。いずれにせよ、僕にとっては研究とは楽しいものです。
――目指している研究者像を教えてください。
秦さん 現在は、指導教員の先生や先行研究からアイデアを得て研究を進めていますが、これから経験を積んで、ゆくゆくは新しい領域を切り拓いていけるような研究者として活躍したいです。
鴇崎さん 純粋な好奇心を原動力に、真摯に研究に向かう研究者であり続けたいと考えています。