2021/04/14
【経済学部】社会における最適な憲法の解釈を考察していく
経済学部 メジャー:法と公共政策/栗島研究室
2021/04/14
経済学部 メジャー:法と公共政策/栗島研究室
法律学って、どんなことを研究しているのでしょう?
今回は、経済学部 栗島先生の研究をご紹介します。
法律学は、国と市民の関係を扱う「公法」、刑罰に関する「刑事法」、私人間の関係について規定した「私法」の3分野に分けられますが、私の専門は「公法」で、主に憲法に関する研究に取り組んでいます。
法律を研究するといっても、延々と六法全書に向かい続けるわけでも、条文を暗記するわけでもありません。この研究の本質は、法律の条文そのものより、その解釈にあるからです。
例えば、日本国憲法第21条では「表現の自由」が保障され、表現行為について国が規制をしたり、検閲をすることが禁止されています。しかし、だからといって、ポルノグラフィやヘイトスピーチなどの表現をまったく規制しないことが正しいとは一概には言えないでしょう。しかし、何が認められ、何が認められないかという線引きは、必ずしも条文に明記されていません。そこで法律を根拠としたさまざまな規制に対して、どこで線引きするべきかを考えていく必要があるのです。
それを考えるうえでは、幅広い情報を収集して、現実に起きている問題を分析することが重要になります。そして、他国や過去の事例などを参考にしながら、法律に基づいて様々な問題をどう解決していくかを考察していくのです。
戦後、日本国憲法が作られた時代と現在では、当然世の中は変化しています。その結果、Web上のプライバシーや夫婦別姓、LGBTの結婚など、憲法の解釈に関する新しい問題は次々に生まれています。そのようなことを解決するために、私たち憲法学者が果たす役割は非常に大きいと考えています。
私自身、この研究分野に進んだのは、プラトンやアリストテレス、ジャン=ジャック・ルソーなどの哲学者の思想に触れたことが影響していますが、憲法学は、他の法律学に比べると哲学的でメタレベル(高次)な視点で物事を捉えながら、思考を巡らせることが醍醐味の1つだと考えています。
外国との比較で、同じ問題について、異なったアプローチで解決している事例などに触れる面白さもあります。そのプロセスで、外国の研究者との交流を通じて、意見交換できるのも、この研究の魅力です。
現在は、学問の自由と大学の自治というテーマについて、研究を進めています。日本国憲法は学問の自由を保障していますが、日本の憲法学では「学問の自由には『大学の自治』を当然に含む」という理解をしてきました。しかし、実際は、政府の権限と大学の問題のあいだの線引きが難しいことも少なくありません。なぜなら、日本の大学は、基本的に国の財政的援助のもとで運営されていて、運営費や補助金を交付する際、国は大学に対して、条件を付けたり、使い道を指定することもあるからです。
そこで、何のために学問の自由が保障されていて、大学の自治はどの範囲まで及ぶのかを、特にドイツの学説や判例を辿りつつ、研究しています。
また、憲法は、民主主義の根幹にあるものですが、現在、世界各国で民主主義が後退しているといわれています。それは日本も例外ではありません。その背景には、格差社会が進んだことで、社会から取り残された人たちが「ナショナリズム」や「権威主義」「ポピュリズム」に飲み込まれているという現状があるのです。
このような現状に対し、統治機構の観点から、政治的統合を図り、自由で民主的な体制を維持するための方策を示していくことは、私たち憲法学者の使命の1つだと考えています。
ここでは紹介しきれなかった栗島准教授の研究について、埼玉大学公式YouTubeチャンネルで公開しています。
皆様、是非ご覧ください!