2024/02/27
【教育学部】子どもの豊かな成長に欠かせない自己肯定感を高めるには?
教育学部 生活創造専修/吉川研究室
2024/02/27
教育学部 生活創造専修/吉川研究室
本学教育学部の吉川はる奈教授が取り組むのは、生活と子どもの発達の関係に根差した研究――。人は、家庭や地域、社会など、様々な生活の場を通じて成長していくものですが、「子どもが生活の中で豊かに成長していく姿を生涯発達の視点から捉えることを目指す」という研究とは一体どのようなものなのでしょうか? 吉川教授に語っていただきました。
子どもの心身の健康な育ちを支える環境づくりをめざし、「児童学」を専門に研究をしています。特にその中で私は「子どもが生活する姿」を子育て・保育・教育現場というフィールドで捉え、育ちと支援につなげることにこだわり進めてきました。
つまり子どもが生活する場に出かけ、目の前の子どもの行為、姿を観察し、子どもを支える家族や教員にインタビューや質問紙調査をしながらすすめます。
教員養成学部にきてからは、「自己肯定感」と子どもの育ちにもフォーカスした研究をしてきました。人間が集団の中で他者の存在を認めるには、まず自分という存在を受け入れることが重要です。自分の在り方を「これでいいかな」と認める、肯定することが大事。でも簡単ではありませんね。
どうしたら子どもが「自己肯定感」が高まるような経験ができるか、それを生み出すにはどのような活動をしたらよいか、考えていきます。
子どもの成長の場は学校だけに限りません。小学生が放課後を過ごす学童クラブや児童館にもフィールドとしてでかけます。
地域の子どもたちが放課後を過ごす場ですが、活き活きとした子どもの姿があります。子どもの活動を支える大人とのやりとりで生じるさまざまな変化、子どもがみせる姿を、客観的に観察し、その結果をフィードバックしながら支援スタッフと一緒に自己肯定感を高めるための支援の方法を考えたりもします。
たとえば子ども同士でケンカが起きたとします。大人の多くはとにかくケンカを止めようとするでしょう。ケガをしないように、早くその場をおさめなければと考えるからです。
もちろん安全第一ですが、「子どもの自己肯定感を醸成する」ことを視野に入れるといつでもまず止めて、方法をアドバイスし、指示することが必ずしもよい方法ではありません。
ケンカ自体は自己主張のぶつかり合い。ケンカ自体が成長のきっかけになりますよね。
時々刻々変わる状況の中で目の前の子どもの姿を丁寧に観て、気持ちを受け止めることは大事なんです。だから目の前の子どもを観ることが基本。
研究の最終的な目標は、子どもが「生活」の「主体者」として豊かに成長できる社会の実現。そのために教育現場、学校が果たす役割が大きいことはいうまでもありません。
先生たちには子どもたちの「自己肯定感」を高めるため、ひいては豊かな成長を促すために幅広い視野をもって子どもに接することが求められます。
教育学部の学生たちには将来、そのような幅広い視野をもつ教員になってほしいなと思っています。
また、学生たちには「子どもイコールかわいい」という先入観だけで捉えることはしてほしくない。確かに子どもはかわいい。でも本当にそれだけなのか。
生活のさまざまな場面で観察し、いろいろな側面からみると、多様な特性を発見できますよ。そこがおもしろい。
この研究の本質は「人とのかかわり方を考えていく」こと。「育つこと」を捉え、「育てる」ことに還元すること。
児童学研究室は、埼玉大学教育学部では小学校の教員、中学校・高校の家庭科教員になりたい学生が数多く所属する生活創造専修の中にありますが、家庭科という枠組みの中には収まりきらない研究テーマといえるかもしれませんね。