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2022/04/13

令和3年度の「梶田隆章賞」は史上初の2名同時受賞!

次世代を担う若手研究者を後押し!

Profile

(左から)

令和3年度 工学部情報工学科卒業 杉下直輝さん(星槎国際高等学校出身)

令和3年度 理学部基礎化学科卒業 野中菜々子さん(千葉県立船橋高等学校出身)

埼玉大学には、若手研究者の育成推進を目的とした「梶田隆章賞」という表彰制度があります。毎年、卒業生の中から研究者への高い志を有する学生を表彰していますが、令和3年度は、賞の創設以来初めて2名の学生が受賞することになりました。ここでは、受賞した学生たちの喜びの声をお届けします。

梶田隆章賞とは?

1981年に埼玉大学理学部を卒業され、2015年にノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生(東京大学宇宙線研究所・教授)の栄誉を称え、梶田隆章先生の寄附をもとに設けられたのが「梶田隆章賞」です。2017年度の創設以来、次世代の若手研究者の育成を推進することを目的として、学業において優秀な成績を収め、高い研究者への志を有する大学院進学予定の卒業生を表彰しています。

坂井学長との記念撮影

勉強は大変でも、大好きな分野を極める喜びに満ちあふれた大学生活

――「梶田隆章賞」受賞、おめでとうございます。まずは受賞の感想を聞かせてください。

杉下さん 受賞できることを聞いたときはびっくりしましたが、とても嬉しいです。

野中さん 私も受賞者に選ばれたことを知らされた時は、「本当に私でいいんですか?」と驚いたことを覚えています。私の中で、埼玉大学の卒業生でまず思い浮かぶのが梶田先生。そんな先生のお名前がついた賞をいただくのは恐れ多いのですが、大好きな化学を一生懸命勉強してきたことが認められたように思えて、とても嬉しく思います。

――大学時代に取り組んだ研究内容を教えてください。

杉下さん いわゆる人工知能(AI)を支える技術である機械学習に関する研究をしてきました。機械学習は、AIがデータの中から何かしらの法則性を見出すもので、現在様々な分野で活用が広がっています。ただ、この技術には、よい結果を出すには大量のデータが必要だったり、導き出された結果がなぜそうなったかという根拠を説明することが難しく、判断の根拠が求められる医療分野などへの応用が進まないという課題があります。私が取り組んできた研究は、方程式で表せる情報だけで機械学習を行うことを目指すものですが、従来の機械学習にこの手法を組み合わせれば、そのような課題の解消に貢献できると考えています。少ないデータ量で機械学習が可能になるだけでなく、得られた結果を方程式によって捉え直せば、AIがなぜそのような結果を導き出したのかが、人間でも理解しやすくなるからです。

野中さん 私はパソコンなどの集積回路に使われる電界効果トランジスタ(FET)の性能を向上させる研究に取り組んできました。具体的には、FETの小型化を実現するため、半導体材料として用いられる層状物質の層を薄くしながら、電気抵抗を減らすためにはどうすればよいかについて、様々な検証を行うものです。

――埼玉大学での学生生活はどのような4年間でしたか?

杉下さん 勉強は大変でしたが、元々興味があったコンピュータや情報処理の分野について幅広い学びがあり、とても楽しく、充実した4年間でした。

野中さん 化学についてひたすら学んだ4年間だったと思います。高校時代に化学が得意だったという理由で理学部基礎化学科に進学しましたが、大学の学びを通して、専門性が高まっていくとともに、あらゆる事象を論理だてて説明していくという化学の奥深い魅力に気付かされました。そして、「さらに化学を探求することで、人々の暮らしに役に立つことに携わりたい」と思い、大学院へ進学して、研究者を志そうと考えたのです。

これまでやってきたことは間違っていない!
梶田隆章賞受賞が自信に

――杉下さんが、大学院に進もうと決心したきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

杉下さん 大学4年生の時、卒業研究に取り組みましたが、時間が限られていて、研究に必要な知識が足りていないと思ったことがきっかけです。卒業後は、埼玉大学の大学院に進み、大学時代と同じ研究室で、数理的な知識を深めながら、機械学習の研究を突き詰めていきたいと考えています。大学の卒業研究では、双対性という概念を使って、方程式を機械学習の枠組みの中で扱えるようにする手法を開発しましたが、大学院では、機械学習で得られた結果を方程式に変換するための研究に取り組んでいく予定です。

――野中さんは、東京工業大学大学院へ進学予定ですね。

野中さん 東京工業大学大学院 物理理工学院 応用化学系 エネルギーコースで、リチウムイオン電池に代わる次世代型電池の開発に取り組む予定です。大学時代とは異なる新たな分野に挑戦しようと考えたのは、電界効果トランジスタの研究をする中で、エネルギーの重要性について気付かされたからです。身の回りにある製品は電気で動いてるものがほとんどなので、エネルギーの研究を突き詰めたいと考えました。現在、パソコンやスマートフォンなど、様々な製品に利用されているリチウムイオン電池は、原料となるリチウムが希少金属で安定供給への不安や、発熱・発火などのリスクがあることが課題。そこで、実用に優れ、安全で材料となる資源も豊富という、条件を満たす電池を開発したいと考えています。

――これから研究者への道を進んでいくにあたって、目指してる研究者像がありますか?

杉下さん 自分なりの新たな視点で、先を切りひらいていくような研究者になりたいです。また、研究の成果は、しっかりした理論に裏付けられたものであればあるほど、社会に貢献できるシーンは多いと思うので、確固とした理論を確立していきたいと考えています。

野中さん 幅広い視野をもった研究者を目指したいです。自分が取り組んでいる研究が楽しければ、楽しいほど、そこにばかり目が向いてしまいがちですが、私は成果を社会に還元するような研究がしたい。だからこそ、研究のことだけでなく、世の中のことや周辺知識についても、きちんと理解することが必要だと考えています。

表彰盾授与後にスピーチをする杉下さん

――「梶田隆章賞」を受賞した経験をこれからの研究者人生にどう生かしていきたいですか?

杉下さん 大学時代に積み重ねてきたことが評価され、受賞したことが自信にもつながりました。これからは、その自信を胸に抱きながら、ひたむき、かつ地道に勉強や研究に励んでいきたいと思います。

野中さん 昔から、わからないことをそのままにできず、例えば教科書に書いてあることでも、そのまま受け止めず、なぜそうなるのかを納得するまで調べなければ気が済まない性格でした。高校時代、そのような勉強への姿勢は、受験勉強では非効率だと言われることもありましたが、このような賞をいただいて、これまで自分がやってきたことが報われた気がします。これからの研究者人生では、これまで貫いてきた、理屈を突き詰めていく姿勢を大切に、より真摯に研究に向き合っていきたいです。

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