2026/06/10
【工学部】画像処理技術で描く「少し先の未来」
工学部 情報工学科/小室研究室
2026/06/10
工学部 情報工学科/小室研究室
キーボードやコントローラーを使わず、仮想空間内のモノをつかんだり、指をさしたり――。本学工学部情報工学科の小室 孝教授は、そのような体験を、画像処理技術によって実現する研究に取り組んでいます。「画像処理技術分野の研究は、結果が目に見えるからこその楽しさがあります」と語る小室教授に、研究の内容や魅力についてお話しいただきました。
私たちの研究室では、画像処理技術を中核として、基礎から応用まで幅広い研究に取り組んでいます。
例えば、実世界の情報を画像として取得する画像センシング、画像を解析して高度な意味理解を行うコンピュータビジョン、それらを応用した直感的なユーザーインターフェース、そして現実空間と仮想空間を融合するVR/ARなど、多様な分野を横断した新しいシステムの提案等々――。
大学の研究というと基礎研究のイメージを持たれがちですが、私たちの研究室は応用志向なのが特徴です。
現在、私たちが注力している研究テーマの1つに、AIを駆使して仮想空間上の物体を、本物の金属のような質感で表現するものがあります。
表面が滑らかに磨かれた金属には、周囲の風景が映り込み、見る角度や光の当たり方によって、その見え方は変化します。こうした金属特有の見え方をデジタル空間で忠実に再現することは、これまで困難でした。

この研究では、AIを用いて物体表面に映り込む周囲の景色を生成し、それを反射表現として反映するアルゴリズムを構築。その結果、角度や視点の移動に応じて映り込みや光の反射が変化し、まるで本物の金属を見ているかのようなリアルな質感表現が可能になります。
この技術を応用すれば、ネットショッピングにおける商品画像などで、これまで伝えにくかった素材の質感を、より正確に消費者へ伝えることができます。宝石や装飾品を実際に手に取って眺めているような体験を、デジタル上で提供することが可能になるのです。
もう1つ紹介したいのが「遠隔空中インタラクション」に関する研究です。
この研究で用いているのが高速に撮影方向を切り替えられる「超高速パンチルトカメラ」です。このカメラによってユーザーの手指の姿勢や視線の方向を高精度に計測し、取得した情報をもとに、離れた位置からでも画面操作ができるシステムを開発しました。
この技術を活用すれば、キーボードやコントローラーなどの入力デバイスを使わずに、手の動きだけで仮想空間上の操作が可能になります。人の自然な動作をそのまま操作に活かすことで、これまでにない直感的で没入感の高いインタラクションを実現することを目指しています。

研究成果が目に見えること――それが、この研究の特徴であり、醍醐味でもあります。
情報工学の領域では、成果が数値として示されることが少なくありません。しかし、いくら数字やグラフで「性能が向上しました」と示されても、その良さを実感するのは難しいもの。その点、この研究では成果が画像や映像で示されるので、見た瞬間に「うまくいった!」と直感的に感じることができるのです。逆に、うまくいかなかった場合も一目瞭然なので、次はどう改善すべきかという意欲も自然と湧いてきます。

先ほど、私たちの研究が応用寄りであることが特徴だとお話ししました。ただし、同じ応用研究であっても、短期間で成果を求められる民間企業の研究とは、目指している時間のスケールが少し異なります。
私たちが取り組んでいるのは、あくまで「少し先の未来」を見据えた研究です。そのため、成果がすぐに経済的な価値として現れないテーマにも積極的に挑戦しています。
特定の技術に縛られることなく、「こんなことができたら面白い」というアイデアから研究をスタートさせる姿勢を大切にしています。長期的な視点をもちながら、新しい技術を柔軟に取り入れていく――そのスタンスこそが、私たちの研究室の最大の強みです。
