2020/08/29
【理学部】透明な熱帯魚の神経細胞から小脳の神経ネットワークの仕組みをひも解く
理学部 生体制御学科 / 津田研究室
2020/08/29
理学部 生体制御学科 / 津田研究室
2004年 東京大学理学部生物科学科卒業
2006年 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻修士課程修了
2009年 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻博士課程単位取得退学
2009年 Duke-NUS Graduate Medical School 博士研究員
2014年 埼玉大学研究機構助教
2019年より現職
ゼブラフィッシュという小型の熱帯魚を使って、小脳の神経ネットワークがどのように作られ、制御されているか?そのメカニズムの解明を目的とした、神経科学の研究に取り組んでいます。
この研究にゼブラフィッシュを使うメリットは、身体が透明で、生きたまま、細胞一つ一つの動きを把握でき、脳全体の活動が観察しやすい点。神経細胞の観察には、神経活動を光で捉える膜電位イメージングやカルシウムイメージングといった光技術と、行動実験などを用いています。その際、神経細胞が蛍光を発する様子は美しいものです。また、まだ誰も見たことのない現象を目にできることも、この研究の魅力。そして、その現象に隠されている原理を解き明かしていくことは大きな喜びです。
現在、注力している研究内容は、小脳の行動制御と学習のしくみを、眼の動きから見ていくというもの。私達ヒトと同様にゼブラフィッシュも、周囲の景色が動くとその動きにあわせて眼が動くのですが、その際に、個々の神経細胞がどのようにコミュニケーションをしてネットワークを作るのか、またこれが学習によってどう変わるのか、解析を進めています。
脳は多数の神経細胞からなり、多様な行動を制御しています。その一つである小脳は、さまざまな情報を統合することで、運動の制御や学習などを司っていることが知られています。例えば、自転車の運転や楽器の演奏などには、小脳での学習が強く関わっています。また近年では、認知機能といった脳の高次機能も担うことが明らかになってきています。そのような小脳に異常が生じると、脊髄小脳変性症などまだ治療法が確立されていない神経難病を引き起こすほか、発達障害にも関わることが知られています。
この研究で小脳の謎に迫ることで、脳の情報処理のしくみを理解するとともに、このような疾患の治療法の開発が期待されます。