2026/02/05
【理学部】自然界の秩序を数学で解き明かす
理学部 数学科/高橋研究室
2026/02/05
理学部 数学科/高橋研究室
雪の結晶や葉っぱの形、海岸線の複雑な曲線――自然界に現れる模様には、数学的な秩序が潜んでいます。本学理学部数学科の高橋悠樹助教は、そのような模様や形を数学で理解しようとする研究者。そんな高橋助教に研究の内容や意義、そして研究室の魅力について語っていただきました。
私の研究分野は、「代数」「幾何」「解析」という純粋数学の3分野のうち、関数や微積分を扱う「解析」に属します。中でも注力しているのは「力学系」と「フラクタル幾何学」に関する研究。
力学系とは、ある規則に従って点が移り変わる仕組みを扱う分野です。例えば「毎回2倍する」という単純な規則なら、1から始めると2、4、8、16……と増えていきます。しかし規則を少し複雑にすると、点の動きは複雑になります。そんな複雑な挙動を解き明かすのです。

一方、フラクタル幾何学は、ある形の1部分が全体に似た性質をもつ「フラクタル構造」を研究する分野です。例えば、葉っぱや雪の結晶、海岸線などは、遠くから見ても近くから見ても同じような複雑さをもっています。これがフラクタル構造です。こうした形に関して、数式を用いて理解していくのがフラクタル幾何学です。
現在、私が取り組んでいる研究の1つが「ランダムな行列の積」に関するもの。いくつかの行列を用意し、それをランダムに掛け合わせると点は移動します。この動きを繰り返していくと、点はやがてフラクタル的な集合に近づいていきます。その集合の形や次元を導き出すことを目指した研究です。
この研究は力学系とフラクタル幾何学の両方に関わるテーマですが、このような研究を通じて自然界の複雑な形を理解することは、物理学や情報科学にもつながる可能性を秘めています。

日々の研究は、大きな目標だけを見据えて取り組んでいるわけではありません。
例えば、解決したい大きな問題の1つに、一次元のフラクタルである「カントール集合」に関する問題の解決があります。これは2つのカントール集合を足すとどのような図形になるのかを明らかにする非常に難しい問題です。
これまでの研究において、部分的な成果を出すことに成功していますが、完全な解決にはまだ長い時間が必要になるでしょう。

また、原子の配列に結晶のような規則性をもちながらも、周期性をもたない「準結晶」を数学的に解明する研究も進めています。20世紀後半に発見されるまで、理論上存在しないはずだった準結晶の構造を理解することは、社会的にも大きな意義がある挑戦です。しかし、こちらも一朝一夕に解決できるものではありません。
“People are doing what they can do.”
――これは私が米国で研究をしていた際の指導教官の言葉です。研究は「自分にできることを積み重ねていくこと」であり、小さな成果がやがて大きな成果につながります。まずは目の前にある問題の解決に地道に取り組むことが大切だと考えています。
研究を進める中で困難に直面することは少なくありません。それでも続けていけるのは、問題が解けた瞬間の格別な喜びをまた味わいたい気持ちと、数学こそ最も面白い学問だという思いがあるからです。