光の“力”でタンパク質を積み上げる―秩序的に動くタンパク質ネットワークを作製するための新技術―(大学院理工学研究科 川村隆三准教授)
2026/5/18
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ポイント
- レーザーの力学的作用によりタンパク質を集合・配列させることで、秩序的に動くタンパク質の繊維状ネットワーク(細胞骨格※1の生体外モデル)を作製することに成功。
- これまではタンパク質分子任せの作製手法が主流であり、繊維状ネットワークが形成する場所や時間、またネットワークの構造を制御することが困難であった。
- 本技術を用いることで、細胞の運動や増殖など、細胞骨格が関わる様々な生命現象のメカニズム解明や、タンパク質を用いたナノロボット等の作製に期待。

概要
大阪大学大学院工学研究科の吉川洋史教授、埼玉大学大学院理工学研究科の川村隆三准教授らの研究グループは、レーザーの力学的作用により、狙った場所・時間にタンパク質を集合・配列させ、細胞内に存在するようなタンパク質の動的な繊維状ネットワークを人為的に作製することに成功しました。
細胞内ではタンパク質が繊維状ネットワーク(細胞骨格)を形成し、それが集団的に動くことで、細胞の運動や増殖などに重要な役割を果たしています。これまでも、生体外でタンパク質の繊維状ネットワークを作製し、その構造と機能との相関を詳細に調べる研究が盛んに行われてきました。しかし従来の方法は、タンパク質分子任せで繊維状ネットワークを形成させることが主流であり、ネットワーク形成の時間や場所、またネットワークの構造を厳密に制御することが困難でした。
今回、研究グループは、集光レーザービームの力や熱の作用を活用し、狙った場所・時間にタンパク質を集合・配列させることで、タンパク質の繊維状ネットワークを人為的に作製できることを明らかにしました。また本手法により様々な構造のネットワークを作製することに成功し、それらが細胞内の繊維状ネットワークが示すような秩序的な運動(並進運動、回転運動など)を示すことも見出しました。これにより細胞骨格の構造と機能の相関を生体外で詳細に調べることが可能になり、細胞の運動や増殖など、細胞骨格が関わる様々な生命現象のメカニズム解明や制御が期待されます。
本研究成果は、科学誌「Advanced Science」に、5月18日(月)14時(日本時間)に公開されました。また同誌のInside Back Coverに選出されることが決定しました。
論文情報
| 雑誌名 | Advanced Science |
|---|---|
| 論文名 | Spatiotemporal Control of Formation of Dynamic Protein Fiber Assemblies via Photophysical Effects of a Focused Laser Beam |
| 著者 | Hiroshi Y. Yoshikawa*, Ren Shirata, Takuya Takeshige, Riki Yoshida, Fumika Kiryu, Kei Takano, Shuma Matsumoto, Reiji Kawanami, Natsumi Sawada, Chi-Shiun Wu, Yang-Hsin Shih, Hiromasa Niinomi, Takahisa Matsuzaki, Seiichiro Nakabayashi, Tomoaki Matsuura, Teruki Sugiyama, Ryuzo Kawamura* |
| DOI | 10.1002/advs.75531 |
| URL | https://doi.org/10.1002/advs.75531 |
用語説明
細胞内に張り巡らされたタンパク質の繊維状ネットワークのこと。細胞の形を保ち、内部構造を支える役割を有するともに、動的にネットワークが組み変わることで、細胞運動や物質輸送、細胞分裂などにも関与する。本研究では細胞骨格の一つとして、チューブリンとよばれるタンパク質が形成する微小管(中空の管状構造を有する)を対象としている。
