• 埼玉大学公式YouTubeチャンネル
  • 埼玉大学公式X(旧:Twitter)
  • 埼玉大学公式Facebook
  • 埼玉大学公式Instagram

研究トピックス一覧

神経細胞は、いつどのように「集団」になるのか-発達初期の神経系で、神経細胞の集団活動が生まれる過程を解明-(大学院理工学研究科 津田佐知子准教授)

2026/1/14

プレスリリース全文はこちらからご覧ください。

ポイント

  • 発達中の神経系で、神経細胞(ニューロン)がどのように協調し、「集団活動」を獲得するのかという根源的な問いについては、これまで十分に理解されていませんでした。
  • 神経細胞の活動状態を示す膜電位を、発達初期において長時間記録できるイメージング技術を新たに確立し、透明な小型魚類ゼブラフィッシュの脊髄において、神経細胞が微弱で不規則な活動から、徐々に規則的な集団活動を生み出すこと、さらにその成熟が形態形成と並行して進むことを明らかにしました。
  • 本成果により、神経回路ネットワークの構築機構の理解が大きく前進するとともに、その応用として、脳発達異常などの理解に向けた基盤的知見が得られることが期待されます。

概要

埼玉大学大学院理工学研究科の白石飛鳥大学院生(研究当時)、林彩音大学院生、津田佐知子准教授らの研究グループは、発生初期の細胞集団の活動状態(膜電位)を長時間記録する手法を確立し、発達中の神経細胞(ニューロン)が集団活動を生み出す過程を初めて明らかにしました。

神経系では、多数の神経細胞が協調的に活動することで、運動や感覚、認知などの多様な機能を発揮しています。この神経細胞の「集団活動」がどのように形成されるのかは、神経発達における重要な未解明課題です。
本研究グループは、体が透明で光技術に適するゼブラフィッシュ胚を用い、タンパク質型の膜電位センサー(Genetically encoded voltage indicator)(注1)による新たな膜電位イメージング法(注2)を確立しました。これにより、多数の神経細胞において、「同時に」「非侵襲に」「長時間」の「詳細な」膜電位記録を世界で初めて実現しました。その結果、脊髄の運動ニューロン集団(ヒトにおける胎動を担う、注3)において、個々の神経細胞が、微弱で互いに不規則な活動を示す段階を経て、徐々に規則的な集団活動を獲得していくこと、さらにその成熟が形態形成と並行して進むことが明らかになりました。

本研究成果は、国際学術誌「eLife」に2025年12月19日付で掲載されました。

論文情報

雑誌名 eLife
題名 Voltage imaging reveals the emergence of population activity in the spinal cord
著者名

Asuka Shiraishi, Ayane Hayashi, Narumi Fukuda, Mari Hishinuma, Hiroaki Miyazawa, Sachiko Tsuda

DOI 10.7554/eLife.109641.1
URL https://doi.org/10.7554/eLife.109641.1

用語解説

注1:Genetically encoded voltage indicator (GEVI) 膜電位センサー 
遺伝子によってコードされるタンパク質型の膜電位センサーの総称。細胞に発現させることで、特定の細胞種における膜電位変動を選択的に記録することができる。近年、感度や応答速度が向上した改良型GEVIの開発が進んでおり、世界的な注目を集めている。

注2:膜電位イメージング
神経活動(膜電位)の変化を、明るさや波長の変化として光学的に検出する手法。微小電極を用いた電気生理学的記録に比べ、複数の細胞からの同時かつ時空間的な記録が可能、非侵襲である点などで優れており、今後、神経細胞活動の中心的な記録法となることが期待されている。

注3:脊髄運動ニューロン 
筋収縮などの運動制御に重要な神経細胞。発生過程の最初期に活動を開始する細胞集団の一つであり、その集団活動により、哺乳類における胎動に相当する胚の自発的な運動(コイリング運動)が誘発される。


ページ上部に戻る