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研究トピックス一覧

大学研究者×メダカ愛好家の“コラボ”で、ワイドフィンの謎解明―同じ遺伝情報でありながら、ヒレの形が異なる理由― (大学院理工学研究科 川村哲規准教授 共同研究)

2025/10/15

プレスリリース全文はこちらからご覧ください。

ポイント

  • 大学研究者とメダカ愛好家がコラボし、「ワイドフィン・メダカ」の形態の違いを解析。
  • 同じ遺伝情報をもつにもかかわらず、背ヒレや尻ヒレの形が異なる原因を特定。
  • ヒレの後方を決めるHox遺伝子に、巨大トランスポゾン「Teratorn」が挿入されていることを発見し、これが周辺遺伝子に影響して、ヒレ形態の多様性を生み出していることを明らかにしました。
図1. 改良メダカの飼育場にて記念撮影
右から、この研究を担当した小井田理奈さん、埼玉大学の川村哲規准教授、宇都宮大学の松田勝教授、そして一番左が、今回の研究の出発点となったワイドフィン・メダカを作出した山本健二さん。地面に並ぶ青い容器には、改良メダカが多数飼育されている。

概要

日本各地で生み出される「改良メダカ」は、愛好家による創意工夫と研究者の科学的分析が結びつくことで、発生や進化の新たな理解へと貢献しつつあります。埼玉大学大学院理工学研究科・生体制御学プログラムの川村哲規 准教授、同大学大学院生の小井田理奈さん(2024年度博士前期課程修了)、宇都宮大学・バイオサイエンス教育研究センターの松田 勝 教授を中心とした研究グループは、国立遺伝学研究所の前野哲輝 技術専門職員、そしてメダカ愛好家の山本健二さんが“コラボ”して(図1)、背ヒレと尻ヒレが大きく広がる「ワイドフィン・メダカ」にみられる、同じ遺伝子を有していながら体の形が異なる原因を解明しました。

本研究成果は2025年10月7日に遺伝学分野で最も歴史ある専門誌『Genetics』(米国遺伝学会発刊)にオンラインで掲載されました。

論文情報

掲載誌 GENETICS
論文名 The phenotypic variation of widefins medaka is due to the insertion of a giant transposon containing a viral genome within hoxca cluster
著者名

 

Rina Koita, Shunsuke Otake, Natsuki Fukaya, Kenji Yamamoto, Akiteru Maeno, Haruna Kanno, Masaru Matsuda, Akinori Kawamura
小井田理奈1,2、大竹俊資2、深谷菜月2、山本健二3、前野哲輝4、菅野晴奈1、松田勝2、川村哲規1
1 埼玉大学大学院理工学研究科
2 宇都宮大学 バイオサイエンス教育研究センター
3 北辻メダカ
4 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所
DOI 10.1093/genetics/iyaf218
URL https://doi.org/10.1093/genetics/iyaf218

用語解説

改良メダカ(かいりょうめだか)
観賞用に品種改良されたメダカの総称。日本各地の愛好家によって体色や形態が多様化しており、現在では1,000品種近くが存在するといわれる。その形態多様性は、見た目の美しさだけでなく、発生や進化の研究においても重要な手がかりを与えてくれる。

ワイドフィン・メダカ(widefins medaka)
背ヒレと尻ヒレが通常よりも大きく広がる独特の形態を示す改良メダカ。埼玉県の愛好家・山本健二氏が作出・発見した系統。

Hox遺伝子(ホックス遺伝子)
動物の体を前後方向に区切り、各部分にどのような構造(頭・胴・尾など)が形成されるかを決める遺伝子群。すべての動物に共通して存在する。ヒレや手足の位置を決める際にも重要な働きをもつ。

トランスポゾン(transposon)
ゲノムの中を「動き回る」ことができるDNA。ある遺伝子の間に入り込むことで、周囲の遺伝子の働きを変えることがある。今回発見された「Teratorn」は、その中でも特に巨大で、ウイルス由来の配列を含む特殊なタイプ。

Teratorn(テラトーン)
ヘルペスウイルスのDNAとトランスポゾンが融合した、全長約18万塩基対に及ぶ“巨大トランスポゾン”。もともとメダカで発見されたもので、遺伝子の働きを大きく変える可能性がある。今回、ワイドフィン・メダカのHox遺伝子領域に挿入されていることが判明した。

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