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研究トピックス一覧

理工学研究科 前田公憲准教授、長嶋宏樹助教が研究者として参加する研究領域「量子キラル変換」が戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)に採択

2025/10/7

9月26日、大学院理工学研究科 前田公憲准教授、長嶋宏樹助教が研究者として参加する研究領域「量子キラル変換」が、令和7年度戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)に採択されました。

「量子キラル変換」の研究総括は、山本 浩史 自然科学研究機構 分子科学研究所 協奏分子システム研究センター教授となります。
本研究はキラリティ注1)(掌性)という自然界の根源的な対称性が破れた物質の中を通過した電子のスピンが偏極する現象、CISS効果注2)の根源的な原理を解明し、それを通じて、電子スピン、フォノン、光などにおけるキラル情報のやり取りの解明を目指します。
詳細はJSTウェブサイト:戦略的創造研究推進事業における2025年度新規研究総括および研究領域の決定についてJSTプレスリリースを参照してください。

前田准教授と長嶋助教は、参加する分子キラルグループにおいて、光誘起電子移動反応等においてCISS効果により引き起こされる電子スピン注3)のコヒーレンス注4)やエンタングルメント注5)への影響と、再結合反応に伴う磁場効果のメカニズムとの関係に着目し、様々かつユニークな磁気共鳴法あるいは過渡分光法によってこれらの解明を目指します。グループ内を横断的に活動し、人工的な合成材料、スピントロニクス材料等から、タンパク質、DNAなどの生体分子における電子移動も対象とします。特に小さな磁場による磁場効果に着目することにより、微小磁場の高感度磁気センシング技術や生体物質における磁気センシングとキラリティとの関連の解明を目指します。

注1)キラリティ:分子構造や結晶構造には、右手・左手と同じように鏡像の関係にあり、互いに重ね合わせることができない構造が存在することがある。このような構造を持つ分子や結晶をキラル分子、キラル結晶といい、このような左右の区別があることをキラリティという。 

注2)CISS 効果(Chirality-Induced Spin Selectivity、キラル誘起スピン選択性):キラル分子の中を電子が通過すると、そのスピンが電子の進行方向に対して平行(同方向)あるいは反平行(逆向き)に高効率にそろう効果を指す。平行になるか反平行になるかはキラリティの左右によって決まる。

注3)電子スピン:電子スピンとは電子が持つ量子力学的な性質であり月や地球の自転運動に例えられる。これにより個々の電子は磁石としての性質を持つ。

注4)コヒーレンス:ここでは、複数の電子の持つスピンの状態が、量子重ね合わせ状態を維持できる能力を指す。

注5)エンタングルメント:ここではラジカル対を構成する、離れた2つの電子スピンがもつれ合った状態を指す。距離によらない相関を持つことから、いわゆる「局所実在性」に反する、古典力学では理解できない量子力学特有の相関。

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