• 埼玉大学公式YouTubeチャンネル
  • 埼玉大学公式X(旧:Twitter)
  • 埼玉大学公式Facebook
  • 埼玉大学公式Instagram

研究トピックス一覧

新しい反応速度解析技術で高薬理活性DNAを創出 ~動的キャピラリー電気泳動法によるDNAアプタマー -タンパク質三元錯体の精密解析と応用~(大学院理工学研究科 齋藤伸吾教授、鈴木陽太助教)

2025/6/6

  • プレスリリース全文はこちらからご覧ください。

ポイント

  • 結合部位の判別と反応速度の精密測定を可能とする電気泳動技術を開発。
  • 反応速度を基にタンパク質と同時に強く結合する二つのDNAアプタマーの組み合わせを発見。
  • 二つのDNAアプタマーを繋ぎ合わせて最高性能の薬理活性を持つ二価DNAアプタマーを開発。
  • 本研究により、高い薬理活性を持つ核酸医薬品の開発に期待。

概要

埼玉大学大学院理工学研究科の齋藤伸吾教授、鈴木陽太助教の研究グループは、東京大学大学院総合文化研究科の吉本敬太郎准教授らとの共同研究で、タンパク質と二つのDNAとの複合体(三元錯体)の結合能を精確に測定する方法を開発し、最も性能の高い薬理活性を有するDNA分子を開発することに成功しました。

DNAアプタマーとは特定のタンパク質に結合する短い一本鎖DNA分子です。一つのタンパク質に二種類のアプタマーが同時に結合して三元錯体を形成することも有ります(図1)。本研究グループは、動的キャピラリー電気泳動法(CE)を使って、三元錯体の結合部位の判別や反応速度測定を可能とする新規技術を初めて開発しました。これにより、片方のアプタマーが結合するともう片方のアプタマーの結合性が変化する効果(アロステリック効果)を示す組み合わせを精確に特定できるようになりました。高いアロステリック効果を示す二つアプタマーを化学的に結合することで、従来の80倍以上高い薬理効果を持つ二価アプタマー分子の開発に成功しました。

この手法は、反応速度という化学の基礎的データに基づいて、今まで知られていなかった最適なアプタマーの組み合わせを効率的に発見できる枠組みを提供し、DNAアプタマー研究に新たな可能性を切り拓きます。また、未知の生体分子複合体のアロステリック効果の由来を解明する方法論を与えるものと期待できます。

本成果は、2025年5月5日付でアメリカ化学会が発行する分析化学分野の国際誌『Analytical Chemistry』でオンライン公開され、Supplementary Coverに選ばれました。

Reprinted with permission from Anal. Chem. 2025, 97, 21, 10978–10987. Copyright 2025 American Chemical Society.

論文情報

雑誌名 Analytical Chemistry
論文タイトル Reliable Post-SELEX Design of Promising Bivalent Aptamers through the Systematic Capillary Electrophoresis Exploration of Ternary DNA−Protein Complexes
著者 鈴木 陽太(埼玉大学)、常原 佑睦(埼玉大学)、宮内 さおり(埼玉大学)、宮川 雅都(東京大学)、杉山 開(埼玉大学)、石光 真彦(埼玉大学)、半田 友衣子(埼玉大学)、吉本 敬太郎(東京大学)、齋藤 伸吾(埼玉大学)
DOI 10.1021/acs.analchem.4c04825
URL https://doi.org/10.1021/acs.analchem.4c04825

用語解説

キャピラリー電気泳動法:溶融シリカ細管中で行う電気泳動法。高電場を与えることで、自由溶液中での高速かつ高分離な分析が可能である。
DNAアプタマー:特定の化学物質と強く結合する短い配列の一本鎖のDNA。センサーや薬剤への応用が盛んに行われている。
アロステリック効果:ある分子がタンパク質などの特定の部位に結合することで、別の部位の働きや性質が変わる現象であり,その本質は複雑で不明なことが多い。
三元錯体:三つの異なる分子が結合してできる複合体(錯体)。

ページ上部に戻る