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研究トピックス一覧

カーボンニュートラルを駆動する新電力機器の開発-ヒューズ・半導体・メカトロ制御で実現した新方式の高速電力遮断-(大学院理工学研究科 稲田優貴准教授)

2024/10/2

  • プレスリリース全文はこちらからご覧ください。

概要

再生可能エネルギー(再エネ)2の大量導入や電力化率3の向上によりカーボンニュートラルを実現するためには、新しい電力システムや電化機器が必要となります(図1)。
埼玉大学大学院理工学研究科 稲田優貴 准教授、名古屋大学大学院工学研究科 兒玉直人 助教、東京工業大学工学院 全俊豪 助教(研究当時、現:青山学院大学 理工学部電気電子工学科 准教授)、東京大学大学院工学系研究科 大西亘 准教授、金沢大学理工研究域電子情報通信学系 中野裕介 助教(研究当時、現:准教授)らの研究チームは、これらの実現に直結する全く新しい電力機器「限流4遮断器」を開発し、これまで大型の重機器でないと遮断が難しかった直流kV・kAの電力5を、コンパクトかつ軽量な機器で高速遮断することに成功しました。
これはビッグデータや量子コンピュータを内包した大規模データセンターの構築にも資する基盤技術であるため、本成果はカーボンニュートラルだけでなく、IoT、Beyond 5G/6Gといった未来社会の実現にも大きく貢献すると考えられます。
本成果は2024年6月1日0時に国内論文誌『電気学会論文誌D(産業応用部門誌)』に公開されました。

図1 カーボンニュートラルの実現に必須となる電力システムや電化機器

ポイント

  • サイズ・重量においてメリットを有する新電力機器「限流遮断器」を開発。
  • この限流遮断器により、直流kV・kAの電力を高速で切る(=遮断する)ことに成功。
  • 本研究により、太陽光や風力を大量導入した新しい電力システムの実現が期待される。
  • 電気を動力源とした電気自動車や電動航空機、電動船舶の普及拡大に大きく貢献する。
  • ビッグデータや量子コンピュータを内包した大規模データセンターの実現に繋がる。

論文情報

掲載誌 電気学会論文誌D(産業応用部門誌)
論文名 ヒューズと半導体を併用した限流遮断器による低電圧システムの事故・負荷電流遮断
著者名 稲田 優貴, 全 俊豪, 大西 亘, 兒玉 直人, 中野 裕介, 高田 康宏, 佐々木 怜音, 宮岡 優太, 塚本 幸佑, 山田 圭矢, 山納 康
DOI 10.1541/ieejias.144.502
URL https://doi.org/10.1541/ieejias.144.502

用語解説

1 遮断: 
電力(電流)を切ること。

2 再生可能エネルギー:
太陽光や風力、水力、地熱といった自然界に常に存在するエネルギーのこと。石炭や石油、天然ガスなどは特定の場所にしか存在しない限りあるエネルギーでCO2を排出する一方、再生可能エネルギーは、「どこにでも存在する」「枯渇しない」「CO2を排出しない(増加させない)」といった特徴がある。

3 電力化率:
石炭・石油・天然ガス・水力・原子力などの1次エネルギー総供給量のうち発電に用いられるエネルギーの比率。

4 限流: 
通常運用時の数十倍以上にも達する大電力(大電流)を抑制すること。

5 直流・交流の電力:
直流の電力は、流れる向きと大きさが変化しない一方、交流の電力は流れる向きと大きさが周期的に変化する(東日本では1秒間に50回、西日本では1秒間に60回)。よって、交流には電力が0となる時刻が存在するため、電力はその時刻で遮断される。他方、直流には電力が0となる時刻が存在しないため、遮断は困難となる。

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