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研究・産学官連携

国民の健康増進に寄与する保健体育の新たな学びの姿とは

~"体育"と"保健"を関連させた教育プログラムの開発と効果検証~

Frontiers of SU Research

教育学部 森田 哲史

3 すべての人に健康と福祉を

4 質の高い教育をみんなに

運動が健康によいことはよく知られているものの、その習慣を継続できる人は必ずしも多くない。本学教育学部の森田哲史准教授が取り組むのは、このギャップを埋める可能性を秘めた研究である。学校教育における"体育"と"保健"を関連させた教育プログラムが、子どもたちの健康意識や健康行動にどのような影響をもたらすかを明らかにするものだ。知識と実感を結び付けた学びが、子どもたち、そして人々の行動をどう変えるのか。森田准教授に聞いた。

別々の学問として発展してきた"体育"と"保健"を結びつける意義

"体育"と"保健"を、どう連携させれば、子どもたちの学びが深まり、一生涯にわたる健康の維持・増進につながるのかを研究している。

運動不足や生活習慣の乱れ、メンタルヘルスの問題は、子どもから高齢者まで、あらゆる世代に共通する課題である。そして、それらに関わる運動習慣や健康意識は、子ども時代の運動経験や健康に関する学びが大きく影響すると考えられている。

健康に関する学びの効果を高めるには、知識と実感を結び付けながら理解することが重要だ。つまり、学校教育においては"保健"で学ぶ健康・安全に関する知識と、"体育"で得られる体験や実感を結び付けながら学ぶことが大切なのである。

しかし"体育"と"保健"は、「保健体育」という同じ教科でありながら、必ずしも十分に結び付いて教えられているとは言い難い。その背景には、"体育"と"保健"は、研究や実践がそれぞれ独立して発展してきたという歴史が関係している。"体育"と"保健"を関連させて学ぶ効果を学術的に実証した研究が少ないのだ。

その結果、例えば"保健"の授業では「健康のために、適切な運動をしましょう」と学ぶが、その「適切な運動」が、具体的にどのような運動を指すのかを、"体育"の授業で実感を伴って理解する機会がほとんどないという状況になっているのだ。

そこで、"体育"と"保健"の学習内容を関連付けた授業づくりと、その教育効果の検証を進めている。

例えば小学6年生では、保健領域の「病気の予防」と体育領域の「体つくり運動」を組み合わせた教育プログラムの開発に取り組んでいる。体育で心拍数や体の変化を実感すると同時に、なぜ運動が病気の予防につながるのかを保健で学ぶのである。

社会や企業の健康課題解消にも役立つ実践的な学び

研究では、授業の前後に、健康に対する意識をテーマとしたアンケートを子どもたちに実施している。記述内容を質的・量的の両面から分析し、子どもたちの理解や認識がどのように変化するのかを検証している。その結果、"体育"と"保健"を関連させた授業を受けた子どもたちに意識変容が起こっていることを確認している。

学習前から「運動は健康によい」という知識を持っている子どもは少なくない。しかし学習後には、「どのような運動がよいのか」「どの程度の強度なら無理なく続けられるのか」といった具体的な理解を得て、自分自身の言葉で説明できるようになるのだ。

国民の運動習慣の形成や生活習慣病の予防は医療費の抑制にも直結する社会課題である。この研究は、その課題の解決に向けた「最初の一歩」を学校教育の中に位置付けようとするものなのだ。

さらに、本研究の成果は学校教育にとどまらず、健康増進や人材育成に関わるさまざまな分野への応用が期待される。

例えば、子どもの体力・健康データを活用した健康増進施策や教育施策の立案、さらには授業改善に取り組む自治体や教育委員会との協業では、現場が抱える課題やデータを共有することで、健康増進と学校教育を有機的に結び付ける新たなモデルの創出につながることが期待される。

また、研究成果を教材やデジタルコンテンツに反映することで、教材メーカーや出版社、EdTech企業の製品・サービス開発にも貢献できる。さらに、スポーツクラブやヘルスケア関連企業においては、子どもを起点とした全世代向けの運動プログラムやサービスの開発への応用が見込まれる。加えて、保険会社や健康経営を推進する企業に対しても、「子ども時代の運動経験と将来の健康行動」という長期的な視点から、新たなプログラムの開発や効果検証にも寄与できる。

自治体や企業が持つ現場での"実践知"と"研究知"を掛け合わせることで、一人ひとりの健康行動を支える新たな仕組みが生まれる。その積み重ねが、将来の国民の健康づくりと健康行動の定着につながるのだ。

今後も、子どもや市民、従業員の健康に関する課題を抱える自治体や企業と連携しながら、健康づくりを支える教育のあり方について探究を続けていきたい。

本研究との産学官連携にご関心のある方は、こちらのフォームへお問合せください。
森田哲史(モリタサトシ)研究者総覧

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