⼈と共存するロボットの使い⽅と動かし⽅を科学する
~ロボットの安全技術と現場導⼊のあり⽅を考察~
Frontiers of SU Research
理工学研究科 琴坂 信哉




本学理工学研究科の琴坂信哉准教授は、ロボットを安全に利用するための定量評価や現場に応じた活用方法に着目し、20年にわたり研究を重ねてきた。近年のロボット技術の進化には目を見張るものがある。しかし、その導入は現場で思うように進んでいない。そのような状況を変える可能性を秘めた研究の内容について聞いた。
安全なロボットの「動かし方」を科学する
私はこれまで20年にわたり、ロボットの活用や動作に関する研究に取り組んできた。そのテーマの一つが、人と共存するロボットを安全に動かすための技術である。
例えば、稼働中のロボットが人と接触した場合でも、相手に加わる衝撃をできるだけ小さく抑えることが重要だ。近年のロボットは多くの関節を持ち、複雑な動作が可能になっている。こうした関節を接触時に適切に制御することで、加わる力を最小化するロボットの動かし方の研究を進めている。
さらに、ロボットが人に与えるリスクを定量的に評価する仕組みの構築にも取り組んでいる。
機械安全の分野では、リスクを「危害が発生する頻度」と「被害の大きさ」の組み合わせで評価する。例えば、頭部や眼への接触は重大なリスクとして扱われるため、その点を考慮してロボットの動作を制御する必要がある。さらに、人の動きを予測して衝突した場合の被害の大きさや発生頻度の観点からリスクを評価して、人間を回避する動作を生成する手法の研究も進めている。例えば、人はドアに向かって勢いよく移動することはあっても、壁に向かって同じように移動することは考えにくい。こうした人の行動特性を考慮しながら、人が向きを変えやすい場所や動線に応じてロボットの動作を制御するのである。ロボットアームが人の近くで動作する際に、どの程度まで接近できるのかを定量的に評価することもできる。
こうしたリスク評価技術は、人とロボットが同じ空間で活動するための基盤技術となる。作業内容や環境に応じて、どの程度の重量や速度、どのような安全性能を備えたロボットが適切なのかが客観的に判断できるようになる。その結果、安全性を担保しながら、現場に適したロボットの活用を実現することが可能になるわけだ。
以上のような研究に加え、ロボット技術の社会実装を見据えた活動も進めている。その一環として4年に1回開催しているのが、World Robot Summitモノづくりロボット競技という産業用ロボットの国際競技大会。私はこの大会の競技委員長として競技設計や大会の運営を行っている。

ロボット導入を阻む壁を乗り越えるために必要なこと
ロボットの性能は、すでに多くの作業に対応できる水準に達している。しかし、中小企業の現場に目を向けると、別の課題が見えてくる。
多くの企業では、ロボット導入を主導できる人材が限られていることに加え、自動化の投資を回収できる企業となると、ある程度の規模が必要になる。
また、実際に現場へ導入するには、システムインテグレーションが欠かせない。しかし、段取り替えの多い現場の生産ラインでは、柔軟に運用するためのシステムをいかに実現させるかが重要だが、そこには深い知見が欠かせない。実際の現場では、ロボット一つひとつの性能よりも、変化や環境に対応できるシステム設計が導入の成否を左右するのである。
また、ロボット導入を検討する際、多くの企業は現在の人手作業をそのままロボットに置き換えようとする。しかし、人間を前提に構築された工程をそのまま自動化することは容易ではない。本来は、ロボットの活用を前提として生産システム全体を設計し直す必要がある。
私はこれまで50を超える現場を訪問し、最適なロボットシステムの導入や運用方法について助言を行ってきた。研究室だけでは見えない課題が、現場には数多く存在するからだ。現場にこちらの知見を提供するとともに、現場でくみ上げたニーズや課題を研究に還元するのである。
さらに、ロボットによる自動化を進める人材不足という課題に対する活動も行っている。厚生労働省や民間企業と連携したプロジェクトにも参画し、人材育成の仕組みづくりを進めてきた。
ロボット化や自動化を実現するには、一社だけで課題を解決しようとするのではなく、多様な専門家や企業と連携することが重要である。ロボットメーカー同士の協力はもちろん、異業種とのコラボレーションから新たな価値が生まれることもあるだろう。
私自身の研究もまた、研究室だけで完結するものではない。現場の課題があって初めて研究テーマが生まれ、研究成果が再び現場へ還元される。その循環から、ロボット技術の社会実装の推進力が生まれると考えている。
ロボット化や自動化に課題を抱える企業や自治体、現場の改善に取り組む方と共に、新たな解決策を生み出していきたい。
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琴坂信哉(コトサカシンヤ)研究者総覧
