埼玉大学大学院人文社会科学研究科「ダイバーシティ科学専攻」キックオフイベントを開催
2025/10/16
9月30日、本学は令和8年4月に大学院人文社会科学研究科に開設する「ダイバーシティ科学専攻」のキックオフイベントを開催しました。本専攻は、日本初の「ダイバーシティ科学」を学問領域とする修士課程であり、当日は、同専攻に関心を寄せる学生や社会人、設置に向けてご支援いただいた企業関係者など学内外から約130名が参加しました。
開会挨拶では、坂井貴文学長より、専攻設置に関わった来賓者・関係者へ謝辞が述べられるとともに、「多様性を排除の根拠とするのではなく、社会を豊かにする力として捉え直すことが重要である」との発言があり、専攻設置の意義を力強く語りました。
続く来賓挨拶では、国立女性教育会館理事長 萩原なつ子氏、文部科学省高等教育局国立大学法人支援課課長補佐 西尾和幸氏、埼玉県知事 大野元裕氏(代読:人権・男女共同参画課課長 鵜澤浩美氏)、さいたま市長 清水勇人氏(メッセージ紹介)より祝意が述べられ、各機関からの期待の高さがうかがえました。
田代美江子副学長(ダイバーシティ推進担当)による専攻概要説明では、ダイバーシティ科学とは何か、多様な差異が社会や組織に与える影響を探求し、差別や格差の仕組みを解明する上でインターセクショナリティ(交差性)の視点が重要であることなどが説明されました。さらに、SDGs目標であるジェンダー平等に関して、日本の現状が国際的に遅れていることに触れ、高度専門職業人、研究人材の育成を目指す本専攻の必要性が共有されました。
続いて、上智大学法学部 三浦まり教授による基調講演「ジェンダー平等で多様性のある社会の構築に向けて」が行われました。講演では、同質的な社会を強みとしてきた日本が急速な人口減少と高齢化に直面する中、多様性への本格的な取り組みが不可欠であること、特に地方都市における若年女性の減少という課題に対し、固定的なジェンダー規範を見直すことが必要であると指摘されました。
また、女性の政治参画を促す制度改革の実例として2018年に成立した「候補者男女均等法」の経緯が紹介され、「女性リーダーを増やすことは通過点であり、目的ではない」と述べ、その先にある組織の目的を共有することの重要性を訴えました。さらに、マジョリティ中心の評価基準を見直すことの重要性にも触れ、豊富な研究と実践経験に基づく講演は、参加者に深い示唆を与える内容となりました。
三浦教授と田代副学長による対談では、両者が、ダイバーシティを単なる競争に勝ち抜く手段とするのではなく、人権課題として社会正義の視点から捉えることが、日本の持続可能な社会の構築につながるとの見解を示しました。
最後に、水村典弘人文社会科学研究科長より「ダイバーシティ科学専攻が社会実装の拠点となるよう、皆様のご協力をお願いしたい」との挨拶がありました。
本イベントは、埼玉大学が地域と連携しながら、持続可能な社会の実現に向けて新たな一歩を踏み出すとともに、ダイバーシティ環境推進拠点として、さらに機能を強化していくことへの期待が高まる機会となりました。
文部科学省 西尾和幸国立大学法人支援課課長補佐
埼玉県 鵜澤浩美 人権・男女共同参画課課長