2020/08/30
キャリアサポート室 石阪督規教授に聞く、埼大のキャリア教育
埼大でキャリア設計の第一歩を
2020/08/30
埼大でキャリア設計の第一歩を
2000年、広島大学院社会科学研究科国際社会論専攻博士後期単位取得満期退学。その後、三重大学人文学部准教授、東京未来大学モチベーション行動科学部教授を経て、2016年に埼玉大学基盤教育研究センター教授に就任。2020年より現職
埼玉大学の「キャリア教育」の概要について、今年度新設されたばかりのキャリアサポート室の石阪督規教授に話を聞きました。
——まずは今年度新設されたキャリアサポート室の役割について教えてください。
これまで本学では、「キャリア教育」と「就職支援」とが別々に行われてきました。キャリアサポート室は、それらを統合して進めていく役割を担います。
——そもそも「就職支援」と「キャリア教育」はどう異なるのでしょうか?
「就職支援」とは、就職するためのノウハウやスキルを提供することが目的。文部科学省が「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義している「キャリア教育」は、いわば「人生において働く意義を自ら考え、キャリアビジョンを明確にし、それを実現するためのサポート」を行うもの。もしキャリアビジョンが明確になっていなければ、希望する就職先を知名度や規模を基準に判断してしまいがちです。しかし、そうやって選んだ企業が、必ずしもその学生に適しているとは限りません。例えば、規模は小さくても世界に誇る技術を持つ中小企業は少なくありませんが、大学で身に付けた専門性を生かすならそのような企業に入社した方がよいケースもあるでしょう。そこで「就職支援」と「キャリア教育」を統合し、学生が自分自身で進路を決定するための素材を提供する体制を整えているのです。
——かつて大学は就職支援を充実させてきましたが、なぜ「キャリア教育」がこれほどまで重視されるのでしょうか?
1つは、就活ルールが2021年度の卒業生以降廃止されることが関係しています。これにより就職活動が今よりも早まる可能性がある。そうなると従来のような3年生からの就職支援では不十分な訳です。そこで、「キャリア教育」を通じて、早い時期から自分のキャリア設計を考えることが重視されるようになったと言えます。ですから「キャリア教育」は、1、2年生も対象になります。もう1つの要因は、企業が求める人材がこれまでとは変わってきたということ。これまでは、コミュニケーション能力や協調性が高く、組織でうまく立ち振る舞える人材が求められてきました。しかし、社会構造の変化により、世の中はますます混迷を深め、先が見通しにくくなっています。その結果、企業は社会やユーザーの課題解決につながる製品やサービスで、新たな価値を提供していかないと生き残れなくなっているのです。それを実現するために必要な主体的に行動し、課題を発見・解決できる人材を育成する上でも「キャリア教育」が必要不可欠です。実際に、本学では「キャリア教育」の一環として、そのような人材を育成するためのプログラムも充実させています。
——具体的にはどのようなプログラムがあるのでしょうか?
例えば「課題解決型プログラム」です。これは半年もしくは1年をかけて、地域の企業と一緒に学生が地域課題を発見し、解決策を考察していく実践型の講義。これにより課題を発見して、それを解決するスキルを身に付けることができるのです。また、毎回、埼玉県内の異なる企業から卒業生を招き、その企業が抱える課題などを話してもらって、学生が解決策を考えるという連続講義も開講しています。このような取り組みは、課題解決能力を向上させる効果があるのはもちろん、社会や仕事、自分の将来への関心を高めたり、これまで存在に気づけなかった優良企業を発見する機会にもなるでしょう。例えば、埼玉県内のBtoB企業の中にも世界的に有名な企業がありますが、学生は接点がないので知る由がありません。そこで、そのような企業から講師を招けば、それまではあまり目が向くことがなかった埼玉県内に素晴らしい企業が数多く存在することに気付くきっかけになるかもしれません。
——その他にも「キャリア教育」に関して取り組みがあれば教えてください。
埼玉大学独自の取り組みとして「長所発見テスト」を1年生から実施しています。就職対策のアセスメントとして、よく利用されている「適職診断」とは異なり、各学生の長所を「見える化」する点がユニークです。学生たちには、ここで把握した強みに向き合うことで、自分の強みを生かせる職業が何かということや強みを伸ばしていくには大学で何を学ぶべきかを考えるきっかけにしてもらいます。つまりこのテストの結果は、自分の将来のことをきちんと考えて、そのために必要なことを学ぶための羅針盤となるものだと言えるでしょうか。
——最後に受験生にメッセージをお願いします。
就職活動というと大学3年生からスタートするイメージがあると思いますが、いまは1 年生のうちにある程度準備していくことが必要です。それ故、本学では「自分の長所を客観的に把握するためのアセスメント」や「企業や社会と密接にかかわることで将来に対する何らかの気づきを与える講義」など、「キャリア教育」に関するプログラムを充実させています。「課題解決プログラム」など、教育的な効果の高いものについては、単位認定もされるので受講しやすいと思います。埼玉大学に入学したらできるだけ早い段階から活用して欲しいですね。
普段の埼玉大学統合キャリアセンターSU 就職支援担当の様子。
石阪教授と埼玉大学統合キャリアセンターSU 就職支援担当スタッフ。個別相談はキャリアコンサルタントの資格を持つスタッフが対応するので安心です。