2024/05/30
表彰で次世代を担う若手研究者を後押し!「梶田隆章賞」受賞者にインタビュー
表彰式は令和5年度卒業式内で実施
2024/05/30
表彰式は令和5年度卒業式内で実施
令和5年度 理学部数学科卒業 菊地優汰さん
(埼玉県立蕨高等学校出身)
令和5年度 工学部情報工学科卒業 本間さくらさん
(東京都立小石川中等教育学校出身)
埼玉大学には、若手研究者の育成推進を目的とした「梶田隆章賞」という表彰制度があります。この制度は、埼玉大学の卒業生で、2015年にノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生(東京大学宇宙線研究所・教授)の寄附により創設されたもの。毎年、卒業生の中から研究者への高い志を有する学生が表彰されてきました。ここでは令和5年度の受賞者2名の喜びの声をお届けします。
――「梶田隆章賞」受賞おめでとうございます。まずは受賞の感想を聞かせてください。
菊地さん はじめは驚きましたが、いまは嬉しい気持ちで一杯です。自分が取り組んできたこと、そしてこれから取り組もうとしていることが大学に認められた結果でもあるので、今後の研究活動に対する自信にもつながっています。
本間さん 大学入学以来、お世話になった先生方、一緒に勉強してきた友人たち、そして家族の支えがあったからこそ受賞できたと考えています。ですので、そんな皆さんへの感謝の気持ちが強いです。また、受賞に恥じないよう、今後しっかりと研究に励んでいかなければならないと感じています。
――それぞれ大学時代に取り組んできた研究テーマについてご説明いただけますか?
菊地さん 「解析学」の手法を用いて整数の性質を研究する「解析的整数論」というテーマに取り組んできました。このテーマは「数論」という研究領域の一分野ですが、そもそも「数論」に興味をもったのは中学時代のこと。「数論」の難問とされていた「フェルマーの最終定理」の証明に「谷山-志村予想」という日本人の数学者が提起した予想が役立ったことを知ったのをきっかけに、のめり込んでいったのです。大学院では、大学時代と同様に、ジャン・ステファン・コスキヴィルタ准教授の研究室に所属し、この「谷山-志村予想」で扱われる「楕円曲線」に関する研究に取り組んでいくつもりです。
本間さん 松永康佑准教授の研究室で、タンパク質のシミュレーションを行う研究に取り組んできました。大学4年次に注力した研究対象は「天然変性タンパク質」です。ヒトのタンパク質の半数以上を占めるという、このタンパク質のふるまいをコンピュータ上で再現するための物理モデルのパラメータの推定や、構造の推定に携わってきました。なお、この研究を行おうと考えたのは、生物の教科書に掲載されていた「オートファジー」という細胞の仕組みに天然変性タンパク質が関係していることを知ったのがきっかけです。教科書を読んでもイメージできなかったその動きを見てみたいと思いました。私も大学院では、大学時代と同じ、松永康佑准教授の研究室に所属する予定です。
――研究の醍醐味について教えてください。
菊地さん これは数学全般にいえることだと思いますが、シンプルな問いから壮大な物語が生まれるところが、自分が考える研究の醍醐味です。
本間さん 私は、教科書などには載っていない未知の事象を自分の手で解明できることに大きな魅力を感じています。
――4年間を自身で振り返ると、どのような大学生活だと思いますか?
菊地さん 大学では、できる限りたくさんの授業をとるように心がけました。中には、数学に直接関係する分野だけではなく、化学など他分野の授業もありましたが、それは数学の研究を進める上で幅広い知識や考え方が求められると考えたからです。また、コロナ禍で活動範囲が限られていた中で参加した数学サークルは精神的な支えにもなりました。いずれにせよ、大学生活はすべて大好きな数学のために費やした印象で、とても充実した毎日を送れたと思います。
本間さん マイペースに過ごすことを大切にした4年間だったと思います。興味の赴くまま様々な経験をして、それを突き詰めてきた印象です。また、高校時代の勉強では「分かったつもり」で進めてきた部分がありましたが、大学では、勉強も研究も、自分が心の底から「分かった」と納得できるまで取り組むようにしました。
――大学院に進学し、研究者の道に進むにあたっての抱負・目標を教えてください。
菊地さん まずは研究に取り組むための専門的な知識を身につけることが求められますので、しっかりとそこに取り組んでいきたいと考えています。そして、数学の最先端に到達し、いずれ独自の研究課題を見出すことを目指していきたいです。
本間さん 私にとって研究とは、自分が知りたいことを直接自分の手で見つけられる手段に他なりません。それ故、自分の興味・関心を大切にしながら、研究に取り組んでいきたいと思います。具体的には、生命現象の根底にある現象を明らかにし、新たな可能性を見出すような研究を行うつもりです。そのためには、分野にとらわれず、柔軟な姿勢で幅広い視野をもつことが求められると考えています。