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2023/04/12

令和4年度の「梶田隆章賞」は日本人学生と中国からの留学生の2名が受賞

次世代を担う若手研究者を後押し!

Profile

(左から)

令和4年度 理学部数学科卒業 簗取智紀さん
(埼玉県立川越高等学校出身)
令和4年度 工学部電気電子物理工学科卒業 范 文博さん
(中華人民共和国からの留学生)

埼玉大学には、研究者への高い志を有する卒業生を表彰する「梶田隆章賞」という制度があります。例年、表彰は卒業式で行われますが、令和4年度も卒業式(令和5年3月24日に大宮ソニックシティ大ホールで開催)内で表彰を実施。今回は理学部と工学部に所属する学生2名が受賞することになりました。ここでは卒業式での2人の写真とともに、卒業式前に行った受賞者インタビューの模様を紹介します。

梶田隆章賞とは?

「梶田隆章賞」は、1981年の埼玉大学理学部卒業生で、2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章先生(東京大学宇宙線研究所・教授)の栄誉を称えて設けられたものです。賞の創設には、梶田先生の寄附金が充てられています。2017年度の創設以来、次世代の若手研究者の育成を推進することを目的として、学業において優秀な成績を収め、高い研究者への志を有する大学院進学予定の卒業生を表彰しています。

憧れの梶田先生に縁ある賞の受賞は喜びもひとしお

――「梶田隆章賞」受賞、おめでとうございます。まずは受賞の感想を聞かせてください。

簗取さん&范さん ありがとうございます。

簗取さん 高校も大学も梶田先生の出身校という理由で進学を志望したほど、僕にとっては梶田先生は憧れの存在。そんな先生に縁ある賞をいただいたことは本当にうれしいです。それと同時に、まさか自分が受賞できるとは考えていなかったので驚いています。

范さん このような素晴らしい賞を受賞できて光栄です。中国で暮らす両親も、受賞したことを伝えるととても喜んでくれました。僕も埼玉大学入学したのは、梶田先生の出身校だったことが理由の1つ。梶田先生は、研究者としてての功績はもちろん、人柄も素晴らしく本当に尊敬できる人物です。この賞に恥じないよう、さらに頑張って研究に取り組んでいきたいと考えています。

――これまで取り組んできた研究内容を説明していただけますか?

簗取さん 大学時代は、本格的な研究を行ったわけではありませんが、主に数論という分野に取り組んできました。数論は数――特に整数の体系の性質を研究する分野で、例えば、解決までに300年以上かかったことで知られる「フェルマーの最終定理」も数論で扱われた問題です。数論――ひいては数学は、直接私たちの生活にどのように役立っているのかわかり難い印象があるかもしれません。しかし、その理論は意外と身近なところに利用されています。例えば、データの暗号化は、数論の理論を用いた技術として幅広く使用されているものの1つです。

――数論研究の醍醐味はどのようなところですか?

簗取さん 数学のほかの分野に比べると、数論で扱う結論は非常にシンプルです。しかし、それを証明するプロセスは複雑で難しい。そんな“単純なのに奥深い”ところに興味を惹かれています。だからこそ、数論の研究に携わるには、多様な知識を身につけなければならず、現在はそのために学んでいる最中です。恐らく、本格的な研究に取り組むのは、大学院に入って1年が過ぎたころになると思いますが、それまでより高度な知識を身につけることも楽しみですね。

――范さんは、どのような研究をしてきましたかか?

范さん 大学では、遷移金属ダイカルコゲナイドという半導体材料の研究に取り組みました。この材料は、原子層レベルで薄膜化が可能で、半導体素子の微細化、高性能化が期待されるものですが、それに適した金属電極の選別や電子物性の制御手法の検討を行いました。

――2人とも進学先は埼玉大学大学院の理工学研究科ですね。

簗取さん&范さん はい。

――簗取さんは大学時代と同じジャン・ステファン・コスキヴィルタ准教授の研究室に所属して、数論の研究に取り組む予定ですが、范さんは研究室も研究テーマもかわるようですね。

范さん 大学院では矢口裕之教授と八木修平准教授、藤川紗千恵助教の研究室で、高効率かつ低コストな次世代太陽電池の開発に携わる予定です。元々、研究をするなら、直接、社会貢献につながる領域で活動したいという思いをもっていて、半導体の研究に取り組んだのも、そのような気持ちがあったからこそでした。そして、現在はエネルギー環境問題に大きな関心があるので、この問題の解決に役立つ太陽電池の研究をするために大学院への進学を決心したのです。

「梶田隆章賞」受賞が大きな自信につながった?

――大学時代を振りかえるとどのような4年間でしたか?

范さん コロナ禍で活動が制限された部分はありましたが、充実した大学生活が送れたと思います。勉強や研究はもちろん、日本の学生や他の国からの留学生との交流も積極的に行うように心がけてきましたが、そのおかげでたくさんの友達ができて楽しい毎日を過ごせました。自分とは異なる考えに触れて、視野を広げられることは留学するメリットの1つです。その点では目的は十分に果たせました。

簗取さん 大学の勉強のほかに、数学サークルにも所属して、大好きな数学にどっぷりと浸かった4年間でした。コロナ禍で他の学生との交流機会が制限される中、そのような活動で同級生や先輩、後輩との仲を深められたのはよかったです。

――大学院進学に対する抱負を聞かせてください。

簗取さん 「梶田隆章賞」の受賞は、自信を与えてくれると同時に「より一層、気を引き締めて勉強や研究に取り組まなければならない」という気持ちにさせてくれました。第一線で研究をするには、まだまだ知識が足りないので、まずはそこを補うための勉強に真剣に取り組みたいと思います。

范さん より高いレベルで学びながら、性能のよい太陽電池の開発に貢献したいですね。太陽電池が思うように普及しないのは、コストがかかるからだと考えられています。そこで、低コスト化を実現し、普及の足掛かりになるような成果を出したいです。「梶田隆章賞」の受賞は、僕にとっても大きな自信になりました。これまで以上に勇気をもって新しいことに挑戦していけそうです。

――目指している研究者像について教えてください。

簗取さん 数学には、「代数学」や「幾何学」「解析学」という分野がありますが、現代の数学は、1分野の知識や理論だけでは解決できない問題が多いと思います。だからこそ、幅広い知識や視野をもって、新たな可能性を切りひらく――そんな研究者になりたいです。幅広い視野を保つためには多様な分野の専門家との交流が重要ですが、大学院ではそのような機会が増えることも期待しています。

范さん 社会の役に立つことを第一に考えて、成果を出せるような研究者になりたいです。そのためにも失敗を恐れず、地道に頑張っていきたいですね。

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