研究紹介 環境共生学科

多孔質テフロンチューブと超音波ミストを用いた気相有機汚染ガスの高効率処理手法の開発

環境共生学科 S・T 

 現代社会において最も大きな問題の一つである環境問題ですが、一口に環境問題と言っても大気汚染や酸性雨、近年では局地的な豪雨や平均気温の上昇など、非常に多くの分野、専門に分かれます。その中で私たちの研究室では、大気中の粒子状汚染物質いわゆるPM2.5の成分分析や、大気、水を対象とした汚染物質の浄化技術に関する研究を行っています。どちらも私たちの身の回りの問題であり、馴染みやすい研究テーマと言えます。その中で私は卒業研究のテーマとして、有機汚染ガスを高効率で分解する空気浄化技術に関する研究を行いました。建物を建てる際に用いられる建築材料や塗装などには化学物質が多量に含まれています。それらを発生源として揮発性の有機化合物 (VOCsと呼ばれます) が室内の空気中に飛散し、その結果、VOCsの暴露によるシックハウス症候群などの健康影響が発生してしまいます。こういったVOCsガスを効果的に分解するために、私の研究では紫外線を発するUVランプによる促進酸化法と超音波霧化という技術を組み合わせることで新たな分解反応器の構築を試みました。

sym2 促進酸化法はその名の通り、酸化することで分解を行います。UVランプなどを用いることでOHラジカルという非常に酸化力の強い活性種を生成し、有機汚染物質を分解します。また、超音波霧化技術は、超音波を用いて液体をミストとして発生させる技術です。これらの技術を併用することで、VOCsガスを酸化分解し、さらに完全分解できずに生成してくる分解生成物をこのミストで捕集します。また、分解途中には二次生成粒子やオゾンといったヒトに有害なものも発生します。そこで、私の研究では、多孔質テフロンチューブというミクロな孔がたくさん開いたチューブをガスの流路として用いることで、気体は自由に通しつつも、反応器内のミストや二次生成粒子は透過させない手法についても検討しました。その結果、VOCsガスを高効率で除去できるだけでなく、反応器後段への流出はオゾンで60%程度、粒子に至っては1000分の1以下にまで抑えることができました。 その後、私は埼玉大学の大学院へと進学し、現在では本手法の反応場の特定やVOCsの完全分解効率の調査など、より詳細かつ発展的にこの研究を突き詰めるとともに、より積極的な分解が行えるような反応条件を探しています。これからますます重要になると考えられる環境浄化技術を扱う一人として、実用化まで至ることができれば、それはとても幸せなことだな、という想いを持って日々研究に取り組んでいます。