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名前:James Spader 日時:2002年11月23日 18時07分

とても単純な疑問です.溶けるというのはどういうことでしょうか?例えば水に砂糖を溶かすと砂糖は見えなくなるのですが,どういう変化がおきているのでしょうか?また,砂糖はお湯には溶けやすいのに,水には溶けにくいというのはどうしてでしょうか?ヨーグルトについてくる砂糖はどうしてすぐ溶けるのでしょうか?何かに何かを溶かすと別の何かができたり,できなかったりするのですが,この違いはなんでしょうか?わかりません.教えてください.

名前:芦田 実 日時:2002年12月01日 13時32分

James Spader 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問21 溶けるというのはどういうことでしょうか?例えば水に砂糖を溶かすと砂糖は見えなくなるのですが,どういう変化がおきているのでしょうか?

回答 水中に分子のレベルで砂糖が均一に分散しています.分子は非常に小さいので目には見えなくなります.砂糖の分子内には水酸化物基(OH基)が多数存在します.水分子内の水酸化物基(OH基)と物理的性質や化学的性質が似たところがあります.両方とも極性を持っています(似たもの同士)ので,砂糖は水に良く溶けます.すなわち,水の分子が砂糖の分子を取り囲んだ水和現象や水素結合(分子間の水素原子と酸素原子の間の弱い結合)が起こって安定化していると思います.
 白色粉末の砂糖が水に溶けると無色透明になるのは,白色はもともと色ではないからです.氷砂糖は無色透明です.粉砂糖も顕微鏡で拡大すれば,無色透明の粒が見えます(詳細は以前の質問4の回答をご覧下さい).

質問22 砂糖はお湯には溶けやすいのに,水には溶けにくいというのはどうしてでしょうか?

回答 温度が上がるということは,分子の持つエネルギーが増えるということです.分子運動などが激しくなり,拡散・分散しやすくなりますので,お湯のほうが溶解速度が大きくなります.また,分子運動などが激しくなるほど固体が析出しにくくなりますので,砂糖の水に対する飽和溶解度が大きくなります.実際の濃度が飽和溶解度よりも小さければ小さいほど,溶解速度が大きくなります.これら2つの効果でお湯のほうが溶かしやすくなります.

質問23 ヨーグルトについてくる砂糖はどうしてすぐ溶けるのでしょうか?

回答 想像ですが,グラニュー糖(高純度の粒状の砂糖)を砕いて粉末にしたもの,またはその粉末をさらに顆粒状に固めたもの(顆粒状糖?)と思います.一般に砂糖といっても,原料や製法により多種類に分かれるようです.これらの分類や製造方法の詳細は専門外なのでよく分かりません.インターネット等で調べてみて下さい.
 顆粒状糖は多孔質(粉末の微粒子と微粒子をくっつけた形なので1つの粒を拡大して見ると,小さい孔や隙間がいっぱいある)なので孔や隙間に水が浸み込み易くなっています.少し溶けると,顆粒がバラバラに分かれ再び微粒子になりますので,さらに溶けやすくなるものと思います.
 溶解現象は固体の表面で起こりますので,固体を砕いて表面積を増加させれば,溶解速度が大きくなります.また,かき混ぜたほうが速く溶けます.かき混ぜないと,表面付近の砂糖の局部的な濃度が大きくなり,一度溶けた分子が表面に再び析出する現象も少し起こると思います.ゆえに,かき混ぜることによって,溶解した砂糖分子が表面付近から離れる拡散現象を促進させてやれば,さらに溶解速度が大きくなります.

質問24 何かに何かを溶かすと別の何かができたり,できなかったりするのですが,この違いはなんでしょうか?

回答 溶解現象には2種類あります.化学反応を伴う場合と伴わない場合です.例えば,塩化ナトリウム(イオン性の結晶)を水に溶かす場合には,化学反応を伴いません.イオンの周りを水分子が取り囲む水和現象が起こり,水和したイオンが安定なため塩化ナトリウムの固体が水に溶けます.したがって,水を蒸発させれば再び塩化ナトリウムの固体が析出します.鉄粉を水に入れても,溶けません(化学反応が起こりません).ろ過などで水を取り除けば,鉄粉が回収できます.鉄粉を希塩酸に入れると,溶けて塩化鉄ができ,水素が発生します.この場合には化学反応が起こって,別の物質に変化しています.したがって,希塩酸(水と塩化水素)を蒸発させても,金属の鉄は得られません.塩化鉄が残るか,またはそれがさらに加水分解した水酸化鉄や酸化鉄が残ると思います.
 化学反応が自発的に起こるか起こらないかは,反応物と反応中間体(活性体)の間のエネルギー差および反応中間体(活性体)と生成物の間のエネルギー差の大小の問題と思います.エネルギー差が2つとも大きい場合には反応が起こり難くなります.2つのエネルギー差に大小がある場合には,生成物のエネルギー差の方が大きい場合に反応が進みます.反応熱や自由エネルギー準位図など難しい話になりますので,詳しいことは省略します.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実