5ウクライナの 大学との 協働 授業 異 文化 理 解と 共 感力 育む「一時的滞 在型」から「 長期的な 地 域参画 型」への 方 向転換を開を進めています。これにより優秀な人材の獲得と国際的なプレゼンス向上を目指しています。 また、コロナ禍を契機に高等教育の DX が進み、オンライン科目を活用したダブルディグリーやジョイントディグリーなどの国際共同学位プログラムの構築が進んでいます。 国際共同学位プログラムは、短期的な学生交流にとどまらず、国際共同研究の枠組みの中で国際教育を展開することで継続的な学生交流と質の高い国際共修環境を実現します これら3 つの新しい国際協働教育モデルを包括的に展開するプラットフォームとして、日本発の国際オンライン教育コンソーシアム「JV-Campus」が 2021 年に開設されました。JV-Campusでは、COIL 型授業やマイクロクレデンシャル、学位取得につながる科目の履修が可能で、大学間で教育リソースを共有し、野中:国際的な協働が進んでいるようですね。本学でもCOILを活用した多文化共修を積極的に推進しています。趙先生、ウクライナ支援と関連した本学での COIL の実例をお話しいただけますか。趙:比較的長期にわたる取組の一つが、本学とウクライナのポルタワ国立教育大学、リヴィウ大学との間で行われている文学・文化研究の COIL 授業です。2020 年から 5 年間継続して実施されてきたこの講義では効果測定の研究も行われています。コロナ禍や 戦争といった困難な時代において、文学が異なる文化を持つ人々同士の心を通わせ、若者の傷ついた心趙 丹寧野中:とても意義深い取組ですね。他方、本学で学ぶ留学生が地域とどのようにかかわっていくかという課題もあります。中本先生、この点についてはいかがでしょうか。中本:外国人留学生の中でも正規生は、制度上、学位取得を目的として来日します。しかし、彼ら自身にとっては、学位はあくまでその後の人生を切り拓くための通過点であり、最終的な目的ではありません。卒業後の進路選択は母国帰国や第三国の選択肢を含め無限。それ故、留学生の地域定着とは UターンではなくIターンの促進を目指すことを意味すると思います。 本学の留学生の多くは東京都内での就職を希望し、卒業後に県外に流出する傾向にあります。言語の壁や文化的差異のため地域社会との交流は限定的で、残念ながら地域活動への柔軟で質の高い国際協働学習の環境が整備されています。JV-Campus の活用により、さらなる多文化共修キャンパスの実現と地球規模・地域の課題解決への取組が期待されます。越智 貴子を癒す力があることが示されました。両国の学生からは授業の教育的・心理的意義が広く認識されています。 こうした取組は、文学と心理学という自他の関係性に目を向ける二つの学問に沿って深化しました。2024 年からポルタワ国立教育大学のオリハ・ニコレンコ教授の協力を得て、ウクライナ各地にいる教員を対象に定期的に心理学セミナーを開催し、不安や□藤に直面する教員の心理的回復を支援しています。2025 年からは激しい被害を受けるザポリージャ市の教員を対象とした新たな心理支援も開始されました。 さらに 2025 年 5 月には本学の学生 120 名とポルタワ国立教育大学の学生 30 名が参加する COIL「人生における様々な感情:日本とウクライナを結ぶ詩的な架け橋」を開催しました。当日は文学と心理学の講義に続き、両国の学生による詩と歌が 披 露されました。感 情 測 定 の 結 果 から日 本 の 学 生 は「感動」、ウクライナの学生は「心の安らぎ」を最も多く感じたと報告され、「感情は世界共通」「日本人学生の真□な姿に感動した」といった声が寄せられました。 こうした実践例は、学生の異なる文化への理解力と共感力を育むとともに、国際的な連帯と人道的支援を目指す本学独自の「多文化共修」理念を体現する取組と言えます。参加機会は少ないですね。こうした現状を改善しようと埼玉県や 市町村による国際交流イベントや NPO による日本語支援・生活支援に加え、埼玉県国際交流協会による生活ガイドの提供、さらには協会内に設置された「グローバル人材育成センター埼玉」が主体となって、企業見学プログラム、留学生対象のホームステイプログラム等が実施されています。 人口減少社会において、地域の若年労働力確保が急務であるのは明白ですが、人材の獲得競争も地球規模で行われています。そのため、より包摂性の高い社会の実現を目指すことが重要です。留学生の地域定着に重要なのは、就職支援の強化であり、県内企業とのマッチングイベントの頻度や 継続性(インターンシップ制度等)がポイントとなるでしょう。
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