博士前期課程修了生の声
博士前期課程修了生(2023年度)
秋山 勇
なぜ大学院で研究しようと思ったのでしょうか
私が大学院での研究に興味を持つようになったきっかけは、企業経営史を研究なさっている先生方との出会いです。社外勉強会でご一緒した先生方から企業の歴史を後世に伝えることの大事さを伺った時、目から鱗が落ちる思いがしました。この時から私は社会人生活の集大成として、企業の活動や自分自身の経験を記録に残し次世代に継承する仕事をしてみたい、そして出来る事なら学術的にも意義のある企業史に関する論考を書いてみたい、という夢を抱くようになりました。しかし人生の大半を会社員一筋で過ごした私にとって、論文執筆はもとより、歴史研究などのアカデミックな活動は全く無縁の世界です。そこで社会科学と研究活動の基本を学べる学校を探していたところ、埼玉大学大学院が論文作成を重視していることや、自分の興味分野において素晴らしい指導教員がいらっしゃることを知りました。更に平日夜間中心のカリキュラムや都心のサテライトキャンパスなど、社会人の受入れ環境も充実していることから、本学受験を決めました。
どのような研究テーマで研究をしましたか
自分が長年関わった商社の歴史研究が一番の興味分野ですが、対象が広範囲に亘ることから、博士前期課程では専門商社が戦後どのように成長したか、というテーマに焦点を絞りました。そこで日本の高度経済成長期に、ある民間企業が積極的に取り組んだ事業の顛末を眺め、そのビジネスが企業経営にどのような影響をもたらしたかを明らかにする研究をしました。
どのように研究を進めましたか
私は仕事の関係で新聞や雑誌向けに時事解説コラムなどを執筆した経験はありましたが、そもそも自分の考えを自由に綴るエッセイと、先人たちが積み重ねた知見との対話である学術論文執筆とは全く異なる作業です。入学後に改めてその事を痛感した私は、「まずは基本から」と、図書館通いから始めました。自分の関心のあるテーマに関連する書籍を探しては読み、そこに引用されている論文をまた探しては読み、その都度要点をメモに書き留める、というリサーチの基本を繰り返したのです。この地道な情報収集は頭の整理にもなり、また研究の基本姿勢を学ぶ上で大変役に立ちました。
しかしそれで論文が書ける訳ではありません。次の難題は論文テーマの絞り込みです。単に自分の興味の対象を調べるのは趣味の世界であり、学術的、社会的な貢献とは縁遠いものです(この点を理解したのも入学後ですが)。私は自分が何を明らかにしたいのか、それがどういった社会的な意味を持つのか、という課題設定と意義づけで堂々巡りをしました。指導教員の先生との面談を重ねる中で、霧が晴れるような気分になれた日もありましたが、博士前期課程1年生の大半は不安や葛藤と向き合いながら過ごしました。
論文の枠組み作りでも随分試行錯誤を重ねました。何回も構想を練り直したうえで臨んだ中間報告会(2年生の5月)でも主副両指導教員の先生方より多くの指摘を頂きました。しかしこの時のアドバイスが私の論文の結論を導くロジックを見直す大きなヒントになり、そこからは論文構成の再構築に集中できました。修士論文の骨格が固まったのは2年生の秋口です。ようやく纏まった最終案をゼミ勉強会で報告した時には、指導教員の先生のお声がけで参加してくださった他大学の先生方からも貴重なコメントを頂き、年末に仕上げの作業ができました。
思い返してみれば、自分一人で考えていると知らずに隘路に入り込み立往生していることが何度もありました。周囲から客観的なアドバイスを頂いたお陰で何とか2年間で論文を完成させることが出来ました。
実際にどうやって仕事と研究を両立させましたか
私は長年勤めた会社を辞めて大学院での研究に集中するという選択をしました。器用ではない自分の性格や当時の業務内容なども考えると、大学院での研究に夜間や週末のエネルギーを費やすことで会社の仕事に支障が出ることが心配だったからです。そこで、まだ気力・体力・根気がある内に思い切って第二の人生に向けたスタートを切ろうという決断をしました。お蔭様で、先生方や学友、そして家族の助けもあって、博士前期課程を無事に修了し、更に研究を進めるべく博士後期課程に進学することができました。仕事と学業の両立は人それぞれに色々な選択肢があると思います。現在の私は学生を本業としつつ、自分にできる範囲で、実務経験者としての知見を役立てられるような社会貢献活動に参加しています。
研究をしてみて、どのようなことが得られたと感じていますか
会社員時代の私は、アカデミックな世界は大変に遠いものと感じていました。例えば課題への対応をとっても、アカデミックなアプローチは迂遠過ぎて、解決に向けた優先順位の決め方や時間軸の違いなど、ビジネスの世界とはギャップがあると勝手に思い込んでいたのです。そんな私ですが2年間の大学院生活を経験したことでアカデミックな世界が大分身近なものに感じられるようなりました。元々、実践の場であるビジネスと、それを論理的に支えるアカデミックな研究は、互いに補完し合える関係にあるのですが、現実の世界では両者の間に見えない壁があるように思います。「ビジネスマインドを持った研究者」、あるいは「学術研究経験のあるビジネスマン」のように、これからの社会ではアカデミックな世界とビジネスの世界を自由に行き来して活躍する「実業分野と学術分野の二刀流」が益々求められるのではないでしょうか。
博士前期課程修了生(2022年度)
増井 正幸
なぜ大学院で研究しようと思ったか
私は、過去に生保系のシンクタンクに出向していたことがあり、より専門性を高めようと以前から修士課程進学に関心がありました。そうした中で、保険の資本規制の検討が国際的に進められていることから、このような規制が保険会社に与える影響を分析しようという思いが強くなり、大学院でこの分野の研究をしようと思いました。
大学院の候補として専門性を深掘りできる社会人向けの国立の大学院を考えていましたが、本学が金融分野の研究が盛んであることが自分の専門性向上につながるので非常に魅力に感じました。
どのような研究テーマで研究をしたか
保険会社の国際的な資本規制に関して、現在、保険監督当局の国際機関であるIAIS(保険監督者国際機構)では、銀行のバーゼル規制の保険版であるICS(保険の資本基準)の開発に向けた検討が進められています。このような規制が導入されると保険会社の経営行動にどのような影響があるかを分析することを研究テーマとして取り上げました。具体的には、規制対象に該当する各保険会社は、日本での導入に備えて諸対応を進めていると考えられ、こうした行動を確認するために、保険会社の決算データを用いて費用関数を推定し、実証分析を行い、経費面における規制の影響を明らかにしようと考えました。
どのように研究が進んだか
将来的に博士後期課程への進学を目指していたので、1年目に論文を執筆するスケジュール感で実証分析を進めました。そのため授業科目の単位取得は2年計画で進めていきました。具体的には、授業科目は、1年次において1週間あたり極力2科目程度に絞って、残りを自分の実証分析を行う時間に充てるようにしました。
自身の研究については1年次の6月頃に一旦の実証分析ができたので7月に主指導の長田先生が主催されている埼玉大学金融研究会で分析結果の概要を報告し、その際に、諸先生方や本学の先輩方から多くの有益なコメントを頂戴することができました。これら頂戴したコメントを踏まえて修正を行い、9月に再度、埼玉大学金融研究会で報告いたしました。この際に頂戴したコメントを踏まえて論文の形に仕上げて、主指導の長田先生の薦めで12月に著名な学会の学会誌に投稿しました。この学会誌には最終的に掲載に至りませんでしたが、査読者からは論文の分析内容に好意的なコメントもあったことから自信が深まりました。その後、この論文を経済科学論究に投稿し、掲載していただけることになりました。そして、この論文を基礎として修士論文を書き上げました。なお、この修士論文については、本学の優秀論文賞をいただくことができました。
実際にどうやって仕事と両立したか
私は、保険会社で、資本規制や国際会計基準等の調査分析に携わっている関係から、研究分野と仕事との親和性はありました。しかしながら、授業の準備や課題は時間がかかるため、休日に集中的に対応しました。そのため授業科目を1週間で極力2科目程度に絞って、自分の研究を行う時間に充てるよう時間配分に注意しながら取り組みました。
1年次は、新型コロナウイルス感染症の拡大から授業はオンライン授業となり、仕事も在宅勤務が可能であったので、通勤時間分を授業の準備や自身の研究に充てつつ、仕事との両立を図りました。
研究をしてみて、どのようなことが得られたか
本学で金融分野の研究をして得られたこととして、まず挙げられるのは、埼玉大学金融研究会を通じた人的つながりです。この研究会では、金融分野を研究されている先生方や本学OBの方々が参加されておられるので、幅広い知見に基づいて、様々な視点から助言を頂くことができ、多くのヒントが得られ大きな収穫があります。修士論文が優秀論文を受賞できたのも、長田先生をはじめ、この研究会参加者の皆さまの助言のおかげと考えています。この研究会における人的つながりは、自分にとっては将来にわたって大きな財産になると考えています。
研究をして得られたこととして次に挙げられるのは、著名な学会の学会誌に初めて投稿した経験です。最終的にはこの学会誌には掲載されませんでしたが、今後に向けて良い経験になったと思います。
博士前期課程修了生(2021年度)
修了生(匿名希望)
なぜ大学院で研究しようと思ったか
大学院に入学する10年程前、私は企業の経理・財務部門でマネジャーとして職務に邁進していました。ちょうどその頃、会社はある意味過渡期で、会社組織が非常に混乱しており、何とか自分なりに頑張ってはみたものの、体調を崩してしまい、一ヶ月の休職を余儀なくされたのです。幸い体調は回復し、職場に復帰したものの、組織運営の難しさを痛感するとともに、それまで長時間労働等のハードワークを何とも思っていなかった自分に「なぜ、こんな辛い思いまでして働かなければならないのだろうか」という思いが残ったのです。そして、その数年後、その答えを大学院に求めたのか、現実逃避先として大学院進学を決めたのか、今となっては定かではありませんが、大学院の受験を決めたのです。
どのようなテーマで研究をしたか
正直、大学院の受験を決めた当時は明確な研究テーマはありませんでした。漠然と「組織論」とか「マネジメント」をキーワードとした、なんとなく「モヤモヤ」とした問題意識はあったものの、受験するには2年間で論文を書く前提で研究計画書を作成しなければなりません。何とか、その分野の書籍と自らの社会人経験を交えて作成しましたが、今から考えればそれは研究計画書とよべるレベルではなかった気がします。面接の際の試験官の方からの言葉が忘れられません。「研究計画書にある参考文献は自己啓発、教科書レベルのものです」。要は2年間で論文を書けるだけの深堀りされたテーマではなかったということです。
その「モヤモヤ」からテーマが明確になったのは、課題研究プログラムで合格して最初に受講した、金房先生の生産システム論と、課題研究プログラムでの指導教員であった結城先生の政治経済学に触れてからでした。生産システム論で読んだ『熟練・分業と生産システムの進化』(坂本清2017)という400頁以上の骨太の研究書と、政治経済学で読んだ、マルクス経済学による経済原論の教科書である『経済原論』(小幡道昭2009)に影響を受け、「労働」をテーマに「『労働の人間化』から『ディーセント・ワーク』へ‐『人間らしい労働』は進化しているか‐」という題目で課題研究レポートを書きました。さらに資本主義における「労働」をテーマに研究し、論文を書きたいと思い、再度、受験し直し、修士論文作成プログラムへ再入学しました。
どのように研究が進んだか
「労働における自律性」を研究テーマとして、当初は裁量労働制や自発的な長時間労働を具体的な例として、まずは先行研究を収集し、それらを丹念に読み込んでいきました。やはり研究の基本は、先行研究を丹念に読み込み、整理することであると思います。そこから問題点を指摘するだけでも十分にオリジナリティのある研究になるのではないでしょうか。
また、経済原論での労働に関する理論の論文も授業と並行して読み込んでいきました。特に理論の論文は非常に難解で苦労しましたが、何回も読み、また期間をあけて読むことで何とか自分なりに理解することはできましたが、やはり理解できないものもありました。しかし、それはそれで今の自分に、何の知識が足りないのかが明確になり、意味のある事でしたが、その足りない知識を完璧に補っていくかは別です。修士課程の目標は2年間(実質的にはもっと短い)という期間で論文を書き上げるというものです。その期間で論文を書き上げるには、書くべきテーマや導かれる結論に集中し、割り切りや、諦めも必要かと思います。(小幡道昭2009)に影響を受け、「労働」をテーマに「『労働の人間化』から『ディーセント・ワーク』へ‐『人間らしい労働』は進化しているか‐」という題目で課題研究レポートを書きました。さらに資本主義における「労働」をテーマに研究し、論文を書きたいと思い、再度、受験し直し、修士論文作成プログラムへ再入学しました。
実際にどうやって仕事と両立したか
社会人大学院生にとって、集中して研究する時間や論文を書く時間を確保するのが一番の問題です。それらの時間は基本、朝、夜、休日ですが、それに加えて授業を受け、その予習等にも時間を割かなければなりません。従って、効率的に、計画的に研究を進める必要があります。定期的に締め切りを設けて、部分的にでも指導教員に論文を見てもらう、毎日、数行でもいいから論文を書く等、動機付けや地道な工夫が必要です。1週間に3頁論文を書き進めれば、半年で70頁以上枚の論文が書けます。また、ここ2年間はコロナの影響により図書館等で集中してやれる状況ではなかったので、休日に会社の会議室に籠ったこともありました。
また、課題研究プログラムでも修士論文研究プログラムでも、どちらも「書く」作業の結果が最終的な成果物となるので、論文作成の方法・ルール・作法は独自に書籍等にて習得する必要があるでしょう。これは論文を書くだけでなく、文献を読むときにも参考になります。論文や課題研究レポートを書き始める前に必ずやっておくべきです。(小幡道昭2009)に影響を受け、「労働」をテーマに「『労働の人間化』から『ディーセント・ワーク』へ‐『人間らしい労働』は進化しているか‐」という題目で課題研究レポートを書きました。さらに資本主義における「労働」をテーマに研究し、論文を書きたいと思い、再度、受験し直し、修士論文作成プログラムへ再入学しました。
また、通常の授業でも、毎回予習の段階で簡単でもレジュメを作成し、日頃から書く(文章の内容を要約し、感想、疑問等自分の考えを言葉にする)ことに慣れておくことです。要約は重要な個所の丸写しでも構いません。それによって、論文特有の言い回しや言葉使いなどが身に付きます。とにかく、書くことに慣れることが重要かと思います。
研究をしてみて、どのようなことが得られたか
研究の目的のひとつとして社会への貢献がありますが、社会人が大学院で研究する場合、2つのパターンがあるかと思います。ひとつは今まで自分が行ってきた仕事・業務分野において、他の研究者も知り得ない希少な知識や経験を持ち、それを活かして研究を行う場合。もうひとつは、特段、そのような仕事や業務分野ではなく、希少な知識や経験もない場合です。
前者はすでにテーマが明確であり、その分野における貢献度も高いと思いますが、だからといって、後者は何ら、貢献はないと思うのは違うと思います。私は今、企業で執行役員、子会社の取締役の立場でいますが、明らかに後者の方であり、今までの業務分野での知識や経験に特段、自慢できるものや、研究を通して直接的に社会的貢献ができるものはありません。しかし、社会人として働いてきた経験は各々、固有なものであり、それはユニークなものです。そのような経験と大学院で学び、研究したことと何らかの形でつながったとき、それは単なる知識や経験だけではなく、人格として蓄積され、将来、何らかの形で他への影響におよぶ行動として現れるのではないでしょうか。これもひとつの社会への貢献であり、大学院で学んだ社会人の使命とも思えるのです。そして修了後も大学院は過去のものではなく、常に「研究者」という目線で物事を見る。そういう意識を、大学院での研究はもたらしたと思っています。
博士前期課程修了生(2020年度)
角三 美穂
なぜ大学院で研究しようと思ったか
私は高齢者福祉に携わり、介護施設に勤務しています。社会福祉領域の専門職大学院を修了し、そこでは当事者本人の意思を尊重した支援について実践研究をまとめました。相談援助職としては納得のいく結果を得られましたが、施設を運営する立場として、専門職育成と組織運営について考えてみたいという思いは残っていました。その思いは次第に、もう一度大学院に、そして行くのであれば研究科大学院で研究に取り組んでみたいと大きく膨らんでいきました。大学院に行くには、職場や家族の理解をはじめ時間の捻出はもちろん、相当な勇気も必要でした。それでも本学のアドミッション・ポリシーにある「社会において抱いた問題意識等を、大学の知との融合によって発展させ、理論的且つ実践的に解決することを目指す」ことに背中を押されました。この先、研究職を目指すわけでもない者が堂々と「知見を社会に還元する」ために入学を志すことが出来ました。
どのようなテーマで研究をしたか
高齢者介護施設に勤務する介護職員が管理職になりたがらない傾向にあるのは、従来「介護が好きだから」といった個人要因で語られてきました。しかし、本当にそれだけだろうかという疑問を抱えていました。介護の専門職として「介護が好き」という感情を持つのは自然なことであり、たとえそれがマネジメントを回避する理由であったとしても、介護職員の意識がそのような傾向にあることと、管理職配置の関係性についてこれまで明らかにはされてきませんでした。そのため、介護職員の意識と行動を、個人要因ではなく介護職のキャリアという視点で職務と職務配置、組織構造要因から明らかにすることを課題設定としました。
どのように研究が進んだか
入学して間もないころ、副指導の禹先生から「研究に必要なのはデータである」「しかし、もっと大切なのは諦めないことである」という教えをいただきました。研究に関しては、主指導の金井先生から、文字通り一から手ほどきしていただきました。データについては力不足もあり、せっかくの聞き取り調査の機会を得ながら十分なデータを集められなかった不甲斐無さは残りましたが、諦めない気持ちというのは研究調査途上と修論執筆中に自分に言い聞かせながら進めることが出来ました。
2年間の在学中、1年目は卒業に必要な単位数を確実に取得すること、関心のある科目は積極的に受講して知見を得ることに集中しました。この間は先行研究調査を中心にしていましたが、授業を受け課題を提出する(もしくは輪読の準備をする)ことで精いっぱいでした。仕事を終え、まっしぐらに教室に向かうのは時に厳しいと思うこともありましたが、それでも大学院らしい活発な意見交換があり、たくさんの刺激と新しい発見の連続でした。
2年目は演習以外の受講はせず、研究に集中する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大で、高齢者介護施設への聞き取り調査はおろか自職場の感染対策に追われた時期がありました。それでもようやく、5カ所の施設の了承が得られ聞き取り調査を実施することができました。実態を確認するために現場の生の声を聴くというのは非常に貴重な機会であり、ましてやあのような状況下で協力いただけたからこそ、研究も大きく進みました。初めての聞き取り調査で拙いやり取りでしたが、金井先生からは「分析軸がたくさんある」と励まされ何とか執筆に取り組むことが出来ました。
実際にどうやって仕事と両立したか
時間のやりくりが一番苦労しました。6限開始に間に合わせるために、授業のある日は1時間早く仕事を切り上げるような調整が続きました。授業の準備や課題は、往復の電車の中で文献や資料を読んだり、休日を利用して集中的に取り組みました。それでもまとまった時間はなかなか取りにくく、仕事も多忙を極めると時間を取ることすら難しいときがありましたが、隙間時間を無駄にせず「出来ることを出来るときにやる」ことを大切に両立させました。
研究をしてみて、どのようなことが得られたか
「データが重要である」。この言葉を本当に理解し噛みしめることが出来たのは、実は修論を修めてからです。しかしだからこそ、研究が面白いと思える入口には確かに案内していただけたと思っております。介護職員の昇進意欲が低い傾向にあるのは、マネジメントに関わるような機会を与えられることが他の職種に比べて少ないといった組織構造にも要因があることがわかりました。そしてそれは介護職員のキャリア形成にも影響を与えるということが自身の研究では明らかになりました。修了生として、「問題意識を大学の知と融合させ、理論的かつ実践的解決する」ためのヒントが得られたことが一番大きな成果物であり、現場に還元していくことがこれからの私の課題です。社会人だからこその面白さ、醍醐味はここにあるのだろうと思います。
博士前期課程修了生(2019年度)
修了生(匿名希望)
なぜ大学院で研究しようと思ったか
きっかけは、入学の前年に埼玉大学大学院の入試説明会・学術講演会に参加したことにあります。
私は、埼玉大学大学院博士前期課程への入学の約10年前に、社会人を対象とする夜間開講の金融戦略・経営財務に特化した専門職(修士課程)を修了しており、社会人向け大学院の経験がありました。
ただし、専門職大学院では、専門的職業人として必要な知識、理論及びそれらの活用法の習得を目指すのに対し、学術的な研究能力の育成を目指す大学院では、研究を通じ、新たな知見を見出すための知識や能力の習得を目指しており、両者には大きな違いがあります。前者は、既に見出された知見を利活用する美食家(gourmet)の育成を目指し、後者は新たな知見を見出すシェフ(chef)の要請を目指すものであると考えると、両者の違いを理解しやすいかもしれません。
私は、自分自身が新たな学術的知見を見出すことは難しいと考えておりました。しかし、前述の埼玉大学大学院の入試説明会・学術講演会において、社会人が自らの経験・知見基づいた 「小さく絞って、そこのところであれば誰にも負けない」 といったテーマを持ち込み、適切な方向性で研究に取り組むことで学術的な成果を出すことは不可能ではないとご説明いただきました。もし、私自身が、何らかの形で学術的知見を見出せるようになるのであれば、大変やりがいがあり、また、有意義なことであると考えました。
そして、このようなスタンスで、学術的知見を見出せる社会人の育成を目指し、東京都内で平日夜間及び土曜日に開講している埼玉大学大学院に関心を持ち、同大学院で研究しようと思いました。
どのようなテーマで研究をしたか
私は、勤務先で、上場の不動産投資信託(J-REIT)や私募の不動産ファンドの関連業務に従事しています。この実務から生じた問題意識に基づき、従来から存在した実物不動産市場に加え、より情報効率性が高いJ-REIT市場が登場したことの影響・意義や、実物不動産市場とJ-REIT市場の融合関係についての研究を行いました。
どのように研究が進んだか
私は、専門職大学院の修士課程を既に修了していたため、博士後期課程への出願資格もありましたが、修士課程修了から既に約10年以上経過していました。そのため、「修士論文作成プログラム」、「課題研究プログラム」、「インテンシブプログラム」のいずれであれ早期に学術研究を本格的に行える環境に入りたいと考えていたこともあり、博士前期課程に出願しました。
入試の結果、インテンシブプログラム学生となりましたので、後期課程と直結する3名の指導教員(主指導教員:長田健先生、副指導教員:伊藤修先生及び丸茂幸平先生)による教育・研究指導をベースとして研究が進みました。
指導教員による個別指導に加え、ゼミや研究会での議論や各種講義を踏まえ、研究方針等を明確にしていきました。また、別途履修した各科目も研究に活かすことができました。
さらに、インテンシブプログラムの修了要件の1つである査読付き論文の完成に向けて経済科学論究に論文を投稿した際には、匿名の査読者より、私自身が全く認識していなかった複数のポイントをご指摘いただきました。
実際にどうやって仕事と両立したか
社会人大学院生にとって、仕事との両立は大変重要です。仕事との両立のため、時間の有効活用と取組み事項の優先付けに心がけました。また、若かった時と比較して、体力が落ちていることから、体調管理にも留意しました。
研究をしてみて、どのようなことが得られたか
社会人が学術研究を行う上では、やはり、実務経験に基づく独自の知見や問題意識が重要であり、そして「小さく絞って、そこのところであれば誰にも負けない」といったテーマを持ち込むことが最初のステップであろうと、あらためて認識いたしました。
埼玉大学大学院では、社会人が持ち込む様々なテーマについて、それが十分検討され、また十分に絞り込まれた内容あれば、極力受け入れていただける方針であるように思います。入試説明会・学術講演会をきっかけとして、埼玉大学大学院における学術研究の機会を得られたことは、大変幸運であったと考えます。
また、私自身、自分のテーマに関する学術研究を進める過程で、主要なテキスト等の学習を進めるだけでは、学術研究には、いつまでも結びつかないと強く感じました。この点について気づかせていただき、学術研究を進めるうえでの具体的道筋を示していただいたことにも、大変感謝しております。
博士前期課程修了生(2018年度)
橋本 武敏
とにかく一度やってみたかった
なぜ大学院で研究しようと思ったか
私が本学で学ぶ大きな動機としては、学術的な研究やその結果を論文にまとめて発表するといった活動に以前から興味があり、"とにかく一度やってみたかった"ということが何といっても大きいと思います。もとより齢五十を過ぎての学生生活ですから、先々これが大学教官や研究職のキャリアに繋がって行けばよいなといった思いもありましたが、そうした利害得失の計算だけで忙しい日常業務の傍ら講義や論文の作成に取り組むモチベーションを維持するのは、自分には難しかったと思います。
どのようなテーマで研究をしたか
私は、公的機関で、政策的な立場から経済動向や金融システムの健全性確保、企業再生といった問題に関与してきました。特に金融機関の経営ガバナンス、リスク管理、内部統制・内部監査の評価に長く携わってきました。
この分野は、明確で定量的な基準のない中での議論が多くなるため、論者の立場、価値観等が反映しやすく、一旦意見が対立すると、不毛な論争に陥りやすいことが問題だと常々考えていました。
この問題に対する一つの解決策として、客観的・定量的な視点を重視して議論してはどうかと考えたのが、本学で論文作成を志した端緒です。
具体的には、「企業不正」をテーマに取り上げ、その原因を統計的に分析する(例えば、社外取締役の存在は企業不正の防止に有意な効果があるかなど)という内容で研究計画書を作りました。
「企業不正」をテーマにしたのは、「良い会社」の判断基準や、コスト等とのバランスの中でどこまで内部統制・内部監査に経営資源を投入すべきか等についての意見には色々な立場があるが、「企業不正」が容認できないことでは一致していると考えたためです。
どのように研究が進んだか
いざ研究に取り組んでみると、「企業不正」の発生統計に、既存のもので私の研究に使えそうなものは見当たらないことがわかり、結局「企業不正」事例を集めたデータベースを自作することになりました。予想以上に膨大な作業が発生しましたが、データベースを自作する過程で、個別の不正事例には、事故のように発生後直ちに発覚するものもあれば、談合のように何年も発覚しない場合が多いものもあることに改めて気付きました。
更にこうした潜在期間(不正発生から発覚するまでの期間)に着目した先行研究は、国内・海外共に殆どないことが分かったため、指導教官とも相談し、この部分に着目する形で論文を纏め、経済科学論究に投稿するとともに、修士論文としました。
「企業不正」事例収集のためには、公共図書館にある報道記事の情報端末を長時間借りる必要があり、週末・休日のほか、私の夏休み期間中等の開館日に、図書館に通って少しずつ作業しました。
その後のデータベース構築のための「企業不正」事例整理・検証作業等は、仕事の傍ら平日夜間・週末に自宅で行いました。何とか年末までにデータベースの原案を作り、年末年始の纏まった休みを利用してデータベースの分析を行い、その後の論文(初稿)作成に進みました。講義のある時期にも多くの時間を研究論文に充てていましたが、これは、インテンシィブ・プログラムということで、講義の必要単位数が少なくて済んだためでもあったと思います。
作成した論文は、経済科学論究に投稿したのですが、「掲載」と決まるまでの間に、レフェリーからは「読み難い」等のご指摘があり、何度も書き直しました。
書き直しの過程では、考えが整理し切れていない部分、足りない部分等が初稿に多く残っていたことを思い知らされ、大いに反省しました。もっともこの過程では、自分が気付かなかった分析の視点が学べましたし、論文を書く際の"作法"のようなものに馴染む機会も得られました。
研究をしてみて、どのようなことが得られたか
私の修士論文は、最終的に入学時に提出した研究計画書とは異なる内容のものになりました。もっとも、研究内容が変遷して行く過程では、当初自分が予想していなかったような新しい発見がありましたし、博士後期課程で取り組む次の論文のヒントも得られ、大きな収穫がありました。
更に、研究の過程で多くの文献に当たり、統計的な分析手法等を検討する中で、それまでの自分の知識を整理し、不足していた部分を学ぶ機会も得られ、自分の知的財産を増やす意味でも、将来のキャリアを考える上でも大変有益であったと思います。
博士前期課程修了生(2018年度)
椙江 亮介
なぜ大学院で研究しようと思ったか
大学院に入学時は、コンサルティング会社に勤めており、テクノロジー分野のコンサルティング業務を推進していました。業務を推進する中で、経営戦略分野とテクノロジー分野を緻密に結びつかせることでクライアント企業に付加価値をもたらすのではないかと問題意識を持ち始めました。
また、実際にITのシステムを構築する現場を通して、経営戦略部分とテクノロジー部分の統合が取れていないと感じる多くの経験をしたのですが、それがわかっていながらも会社として利益を生むために提案・システム構築を遂行せざるを得ない状況があり、その結果、経営層とシステムを構築・運営する現場の両方にとって不幸な結果を生み出してしまうところを見てきました。
その経験を通して自分に経営戦略分野の知識が足りていないことを悟り、経営戦略分野の目線に立った時に問題や課題に対してどのように向き合い解決していく必要があるのかを論理的、体系的に学ぶことが必要だと感じました。そのため、大学院の研究や先生、社会人の生徒とのディスカッションを通じて実務レベルで活かせる考え方を身に付けて、現場で実践できることに期待して社会人大学院で研究しようと思いました。
どのようなテーマで研究をしたか
実務で活かすために経営戦略分野とテクノロジー分野の両方に関連するテーマを選定する必要がありました。そのため、M&Aによる組織学習をテーマにしました。
日本企業も今後は、M&Aの件数が増えて来ることが予想され、それと同時にシステム統合の案件も増加していきます。M&Aの成功率が非常に低いとされている中で、企業がM&Aによって獲得した形式知・暗黙知を含む知識をどのように組織内で認識させ共有することができたかについて、プロセスを明確化し、それによって企業のパフォーマンスにどのように影響を与えるかについて研究しました。
どのように研究が進んだか
主指導の朴先生、副指導の宇田川先生、石先生の授業や演習がある度に現在の論文の進捗状況等を報告し、悩んでいる点や進めた方についてアドバイスをいただき、そのアドバイスに基づき進めることが出来ました。特に中間報告会では、3人の指導教員と集まる(※)ことで充実したディスカッションから明確なアドバイスをいただけることが出来て、そこから急速に修士論文作成までのゴールの道筋が見えるようになったと思います。(※修士論文作成プログラムでは2名の指導教員が、インテンシブプログラムでは3名の指導教員が修士論文作成を指導します。)
私の場合、一年目の時に先行研究の読み方、また、それに関する論文の探し方やケース・スタディの方法論について学ぶことを勧められたため、それに従い準備しました。自分の研究したい内容をそれと同時に整理し、ケース・スタディを行う企業をどこにするか検討しました。
私がケース・スタディを行う企業選定のこだわりとして、自分が現在の仕事で関わっていない業種にしようと思いました。仕事で関わっている企業である場合、客観的な視点を持つことが難しくなることを懸念しました。そこで、私が事務局を行っている研究会に参加していただいている企業の事業部長の方に研究したい内容を説明し、アンケート調査とインタビュー調査を実施することで修士論文を作成しました。
実際にどうやって仕事と両立したか
主に授業への参加(単位取得)と論文作成の二つのミッションがあると思います。 授業は18時30分から開始するため、20代後半でコンサルティング会社に勤めて、クライアント企業に常駐しながら、週にいくつか授業のある日を18時に帰宅することの難易度は非常に高くて苦労しました。2ヶ月程継続させてみましたが、授業の無い日に負荷が掛かりすぎることやプロジェクトに迷惑を掛けてしまうことから、会社を辞めて独立する選択をしました。それにより授業に参加しやすくなり、仕事との両立を可能にしました。
一方で論文作成については、スケジュールを細かく管理することで両立できたと思います。 システムを構築する際にプロジェクトが遅延無く進めることができるようにプロジェクト管理という仕事を担当する機会が多くありました。そのため、博士課程前期の論文作成期間である2年間を一つのプロジェクトとして定義し、全体スケジュールからマイルストン(中間報告、学会発表、ジャーナルへの投稿)を置き、WBS(Work Breakdown Structure)を作成するようにしました。基本的にWBSに沿って進めていければ問題ないのですが、仕事の都合などで遅延が発生してしまう場合などは、朝方まで作業することでカバーしてきました。遅延を取り戻すために辛い期間も経験しましたが、仕事でも同じような経験を乗り越えてきたため、追い込み期間についても何とか乗り切ることができました。
論文作成に向けて一つ一つのタスクを可視化することで、長い期間がある中でどこまで終わらせれば良いのかなど暗闇を歩くのではなく、これから歩いていくゴールまでの道のりを可視化することで仕事の調整等を行い、両立が可能になったと思います。
研究をしてみて、どのようなことが得られたか
これまでの仕事生活で如何に視野が狭く仕事をしていたのかを痛感しました。 現場に配属されていながらも、経営層が考える問題・課題を先行研究のどのような事象であるのかを比喩して考えるようになり、そこで述べられている解決策であてはまるのか、またあてはまらない場合どのような事象であるのかを理論的、体系的に考えるようになりました。
大学院生活の中で論文を書く際に重要なのは、「貢献である」という言葉を何回かアドバイスいただきました。自分でこの論文にはどの「貢献」ポイントがあるのかを明確にして、自信満々に「貢献」ポイントを語れるようにしなくてはいけないということを教えていただきました。実務でもクライアント企業へ提案する際に如何に「貢献」ポイントがあるのかを明確にすることで自分しかない付加価値を生み出すことに繋がると感じました。
私は、実務的な考えに偏っている場合がありますが、学術的な考えを社会人として学び、研究することで両方の知識や考え方を得ることが出来たと思います。
博士前期課程修了生(2015年度)
平岡 憲道(エネルギー関連企業勤務)
大学院進学の動機
日頃から関心のあった会計学の分野で社会人として経験した実務(排出量取引)に関する学術論文を作成したいと思い大学院進学を志望しました。埼玉大学大学院ならしっかりとした論文指導をしていただけると考え、また自身のレベルアップにもつながると考えたのが進学の動機です。
仕事と大学院の両立について(経験談等)
社会人は仕事が生活の中心なので当然仕事をおろそかにはできません。私の場合は入学直前に兄が病気で入院、ほどなくして母までも病気で入院したことで、その後、仕事をしながら母と兄を介護するという緊急事態となりました。
介護は初めての経験で、この青天の霹靂にしばらくは心身ともに疲労困憊。また当時は川越市内勤務の遠距離通勤で時間的余裕もなく、「仕事と介護でもう精いっぱい。大学院で学ぶことは無理ではないか。」と自問しました。しかし、「大学院の勉強は自分ができる範囲のことをやろう。もしそれが無理なら諦めよう。」と開き直ることにより少しずつ生活のペースも軌道に乗り始め、平日の夜と休日になんとか勉強時間を確保できるようになりました。このように私でも両立できたので、仕事と大学院の両立は、工夫とやる気次第で十分可能だと思います。
研究テーマについて
『排出量取引にかかる会計基準の考察』が私の修士論文の研究テーマです。現在、世界各国で実施されている排出量取引ですが、国際的に合意された統一的な会計基準は未だ存在しません。そこで国際財務報告解釈指針委員会が公表し、後に撤回された、排出量取引にかかる解釈指針について考察することにより、将来の国際的な会計基準導入に向けた手がかりを得ることを意図して論文を作成しました。
会計学の近田典行教授を主指導に仰ぎ、親身にご指導いただきました。作成過程でとかく総花的となりがちな私の論文でしたが、筋の通った、的を絞った内容へと導いていただきました。ほんとうに近田先生にはお世話になりました。心から感謝申し上げます。
大学院での研究活動の意義
博士前期課程は修士論文の作成が研究の大きな柱となります。自分の思い定めた研究テーマを深く掘り下げるため必要な文献をできる限り集め、じっくりと読み込んで、論理展開の明確な論文に仕上げていくことは研究の醍醐味です。とりわけ社会人は実務経験のバックボーンがありますのでこれを有効に使わない手はありません。社会人の貴重な経験を論文作成に十分活かしていただきたいと思います。
大学院での学びと将来展望(仕事ほか)
埼玉大学大学院にはさまざまな科目が用意されています。自分の論文の研究テーマのほか、他分野の興味ある科目も学ぶことにより研究に広がりを持たせることができます。また学びの仲間との交流もあります。私は異業種や留学生の方々との議論や交流を通して大いに刺激を受けることができました。将来は大学院で学んだことを礎に、実務の世界でよりいっそう貢献できるよう研鑽を積んでいきたいと思います。
これから志願者に伝えたいメッセージ
修士論文の作成を義務づけない大学院もありますが、埼玉大学大学院はしっかりとした修士論文の作成を求めます。これは大変なことですが、苦労して論文を書き上げた後の充実感、達成感は何ものにも代えがたいものがあります。皆さんにもぜひ論文作成の醍醐味を実感していただきたいと思います。
埼玉大学大学院経済経営専攻を選んだ理由
一言でいえば、充実した教授陣、多彩な履修科目、学びやすい環境でしょうか。私にはどれも魅力的に映りました。埼玉大学大学院は実務に直結した履修内容を用意しているので社会人の学びの場としては最適だと思います。
授業や論文制作過程における経験談など
授業は漫然と講義を聴くのでなく積極的に議論することを心がけました。先生方も院生に対して積極的な発言、授業への貢献を期待しています。また私は一年次のゼミから近田先生のご指導を得て、論文の論点抽出と絞り込みを図ることができました。
なお論文作成に必要な文献は一年次からできるだけ早く集めておくことをお勧めします。二年次になり執筆が楽になってきます。私は仕事と介護で精いっぱいの毎日だったのですが、普段からこつこつと論文に必要な文献収集に心がけました。
その他
波乱万丈、紆余曲折ありながらの二年間でした。最後にこの紙面をお借りして、主指導の近田先生、副指導の吉田先生をはじめお世話になった諸先生方、経済学部学務の皆さま方に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
※修了生の所属先は、原稿作成時のものです。
博士前期課程修了生(2015年度)
八藤後 聡
私の経験から
仕事と両立して論文を書き上げるという困難なミッションに挑戦する皆さんの参考に少しでもなればと考え、私が修士論文を作成するにあたっての経験、特に苦労したことを列挙させていただければと思います。
東京駅に隣接する東京ステーションカレッジは、仕事と論文作成を両立させようとする社会人にとって申し分の無い環境であります。終業後、2コマの講義を受講することも可能です。このため、実は所定の単位を取得することは、それほど難しいことではありません。 一方で、論文作成という面では、いくつか注意しなければいけないことがあると思います。
第一に、生活に余裕がなく論文への注力が難しいということです。仕事の後、2コマの講義から帰宅すると、12 時前後になってしまいます。翌日の業務を考えると、おいそれと夜更かしすることも叶いません。また、仕事後という時間の制約があるため、図書館等での資料集めに苦労する可能性もあります。この結果、単位取得ばかりが進んで、論文が進まず焦りが募ることとなります。
この解決策としては、各講義のレジュメやレポートを論文内容に寄せていくことが良いと思います。時間のない社会人にとって、3~5頁のレポートの作成時間といえども惜しい。ですから、そのレポートが論文に転用できるようにするべきです。論文の本体に利用できなくとも、注釈の一部にでも利用できれば、それだけ論文が進んだことになります。
第二に、大学の暦に左右されないことです。大学には、夏休みや冬休み、初年度なら春休みなど、論文作成の追い込みに使えそうな時期があります。しかし、それをあてにして計画を立てるととんでもないことになります。いわゆるあるあるネタになりますが、論文の追い込み時期ほど仕事が忙しくなります。冷静に考えてみれば、講義期間はそれが言い訳となり業務が免除されたりします。一方、講義がない期間になれば言い訳がないので業務が割り振られる。周囲から見ても、忙しそうには見えなかったりするものです。
そんなわけで、いわゆる学生さんのような追い込みができるという期待はしない方が良いでしょう。難しいこととは思いますが、コツコツと早めに書き上げていくことが必要だと思います。
両立という困難なミッションのため、無駄は極力排除した方が良い。このためには、早い段階のレポートなどから、論文用の書式に統一しておく必要もあります。
「全ての講義が論文に集約されていく。」先生方からは、常々このように指導をいただきました。結果として実行できなかった私から、これからミッションに挑む皆さんにも同じように「全ての講義が論文に集約されていく」ということをお伝えしたいと思います。
※修了生の所属先は、原稿作成時のものです。
博士前期課程修了生(2014年度)
市川 千尋(日本経済大学准教授)
教員になる前は、システム会社(日本ユニシス社)で金融部門のコンサルタント的な仕事が主でした。
その後、平成22年から平成25年までの 3年間、公財)金融情報システムセンターに出向し、金融機関の現場での仕事が主となりました。本センターではサイバー犯罪や東日本大震災など数多くの印象的な仕事を経験しましたが、同時に自分の金融基礎・専門知識の少なさも痛感し、埼玉大学大学院の門を叩いた次第です。
修士課程では眠い目を擦りながらも、人生でこれほど勉強した時期は無いくらい充実した素晴らしい時間でした。同じ院生との語り合いも楽しかったですが、伊藤ゼミでの討議などは今でも夢に出てくるぐらいに緊張し、都度先生・先輩より厳しい指摘を受け、次回の捲土重来を誓ったものです。
伊藤先生や伊藤ゼミの先輩方、また同期の院生と言うより経験も知識も豊富な大嶋先生等に親身なご指導を頂戴し、現在形だけではありますが九州の地で教職に身を投じる事ができております。
50台から大学院に通い、50台後半にして教職に就くことは不可能ではありません。ただ、常に自分に自信を持ち、チャンスを必ず生かすことはとても大切です。また、自分の専門分野を持つことも重要です。
埼玉大学大学院の伊藤ゼミでは、私のような社会人教員が多く巣立っておりますので、あらゆる機会を通じてそれらの先輩にアドバイス頂く事が可能です。
現在、教員になり仕事は忙しいですが、自分で自分のスケジュールを組み、関心のあるテーマをさらに深めていく楽しさや、論文を通じて地域社会に貢献できること、さらにビジネスプランコンテスト等の指導を兼ね地元の高校生たちとの触れ合い等、素晴らしい状況に身を置いていることに大変感謝しております。
これも埼玉大学大学院の門を叩いた時、全てが始まったと考えます。皆さんも共に素晴らしい未来を築きましょう!
※修了生の所属先は、原稿作成時のものです
博士前期課程修了生(2007年度)
小南 和雄(日本 SGI(株)常勤監査役)
これから大学院を志望しようとしておられる皆様へ、このホームページを借りて、本大学大学院 MC で学んだ体験をお話してみたいと思います。
私は、大学で、経営学・経済学を学んだ後、IT関連の会社に就職し、経理財務関係でほぼ 40年のキャリアを持っております。その間、ほぼ半分は海外で過ごしており、5年前海外から帰ってきて、現在、国内の会社で、常勤監査役に従事しております。
海外から帰って来たとき、私は自分の足元を見つめなおすことから始めたいと思いました。海外経験が長かった事から、政府の経済・財政政策の動き、企業の動向、みんなの意見の動向等幅広く、時系列的に捉え、今後の生き方を考えてゆきたいと思いました。又、自分の専門分野が学問として現在、どう発展しているのかを確認する必要もありました。
本校の広告を目にし、本校の経済科学研究科の内容は、かなり幅広く授業科目を持ち、私のニーズに合いそうな科目があることと、八重洲で受講できることを知り、志望してみる気になりました。そこで悩んだのは、夜間開講とはいえ、仕事が多忙なときに折り合いをつけられるかという点でした。悩んだ末、最後に、これはやってみるしかないと腹をくくり、受験したことを覚えています。多少休みながらも、先生の寛大さ?もあり、無事卒業までこぎつけました。
本校の、八重洲での科目は、実際のビジネスに役立つ講義科目が中心となっており、経済産業省・新聞社・証券会社等からの現職の方に講師になっていただいて、実際の政策・施策が生で聞けるのは、今も大変役立っております。 卒業に際し、これらの勉強が、自分の現在の仕事に役立っていることを実感し、今後も勉学を続ける決心をし、現在も幅広く学んでおります。
簡単ですが、大学院を目指そうと考えている皆様の参考になれば幸いです。
※修了生の所属先は、原稿作成時のものです