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名前:ゆう 日時:2003年08月23日 18時24分55秒

はじめまして.
早速質問します.
エタノール50mと水50mをたすと100mにならないのはなぜですか??

名前:芦田 実 日時:2003年08月31日 15時50分

ゆう 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問52 エタノール50mと水50mをたすと100mにならないのはなぜですか??

回答 エタノール50m(=0.86mol)と水50m(=2.8mol)を混合する(分子数による混合比=1:3.2)と,その体積は約97m(44質量%,25℃における比重0.923)になります.なお,混合熱で温度が5℃前後上がります.混合後の体積をはかる場合には,冷めてからのほうがよいと思います.体積が減少する理由の1つは水素結合だと思います.電気陰性度(電子を引きつける力)の大きい原子(F,O,N,Cl,Sなど)に化学結合した水素は,その化学結合に使われている電子を引っ張られてプラス気味になります.逆に電気陰性度の大きい原子のほうはマイナス気味になります.このプラスとマイナスにより他の分子との間に弱い水素結合が起こります.
 純粋な液体の水は,温度にもよりますが水素結合で数個の分子がつながって,集団で動いています.水素結合が完全に切れるのは,水蒸気になったときです.水素結合には方向性があり,O−H…Oが直線上になっています.1つの水分子内の酸素原子をみると,酸素原子の2つの非共有電子対に他の2つの水分子の水素原子が水素結合できます.さらに,最初の水分子内に2個の水素原子が化学結合していますので,それらの先に他の水分子中の酸素原子が水素結合できます.したがって,1つの水分子は最大4つの水素結合をすることができます.電子軌道同士の静電的反発でこれらがなるべく離れた方向(正四面体の頂点方向)を向きます.このようにして多数の水分子が水素結合すると氷の結晶構造ができあがります.いいかえると,液体の水にも氷の構造が少し残っています.水素結合に方向性がありますので,隙間だらけの構造になります.
 純粋なエタノールも水素結合しています.このとき,エチル基の水素原子はプラス気味になっていませんので,水素結合はできません.したがって,水素結合できる数やその立体的な構造および水素結合している割合(1つの集団内の平均的な分子数)が,水の場合とは異なっていると思います.
 エタノールと水を混合すると,純粋な水や純粋なエタノールであったときの水素結合による隙間だらけの構造が壊れます.異なる分子が混ざりますので,もう少し隙間の詰まった構造になるのだと思います.すなわち,同種の分子間による水素結合だけでなく,異種の分子間の水素結合もできるので,水素結合による立体的な構造(分子の詰まり方)が変わると思います.さらに,水素結合している割合(1つの集団内の平均的な分子数)も変わると思います.増えるか減るかは,分かりませんが,同じ温度なら減ったほうが詰まりやすいかと思います.
 体積が減少する別の理由として,分子の大きさの違いが考えられます.同じ大きさですと,なるべく体積が小さくなるように詰め込む方法はだいたい決まってしまいます.大きさが極端に違うと,大きい分子を詰めた隙間に小さい分子を入れることができます.水とエタノールでは分子の大きさが少し異なりますので,そのような充填効果も少しは考えられるかもしれません.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実