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大学院理工学研究科 斎藤 雅一 教授が『日本化学会学術賞』を受賞

2015/01/08

 この度、「日本化学会学術賞」に本学大学院理工学研究科の斎藤雅一教授が受賞されました。
 この賞は、化学の基礎または応用のそれぞれの分野において先導的・開拓的な研究業績をあげた者で、優れた業績をあげた日本化学会会員に授与されるものです。
 19世紀にベンゼンが発見され、その特異な性質-芳香族性-が明らかになって以来、芳香族性の概念は化学において重要な基礎概念の一つとなっており、そのような性質をもつ芳香族化合物は、今日、化学の枠を超えた重要な化合物群ですが、このような芳香族化合物の骨格を構成する元素は、一部の例外を除くと第2周期元素に限られていました。一方、最近、芳香族化合物の骨格炭素の一部をケイ素やゲルマニウムに置き換えても、芳香族性が発現することが明らかになったものの、さらに高周期のスズや鉛を骨格に組み込んでも芳香族性が発現するかは明らかになっていませんでした。
 今回、斎藤教授は研究題目「重元素導入による特異なπ電子系の創製と芳香族性の概念の拡張」において、上記疑問を解消するべく、スズや鉛を炭素π電子系骨格に含む化合物を合成し、スズや鉛の系にも芳香族性が発現することを世界で初めて明らかにしました。これは教科書を書き換える、基礎化学的に非常に意義深い成果であり、また、この独自のスズを骨格に含む芳香族化合物を利用して様々な遷移金属錯体を合成し、従来の化合物にはみられなかった新しい性質を発見しました。さらに、関連する研究として、遷移金属触媒を用いない独特な手法で研究例の少なかったジベンゾペンタレンの合成に成功し、その新しい化学を創出しました。これらの研究は、独創性が極めて高く、その業績は国際的にも高く評価されており、優れた研究業績であると認められました。
 なお、日本化学会の賞制度は昭和23年度から始まり、本学からの受賞は平成2年度に化学教育賞を受賞された下沢隆教授(現本学名誉教授)以来2例目で、学術分野の受賞としては今回が初めての快挙となりました。

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