saidaiseeds2016-17
90/126

埼玉大学研究シーズ集2016-17■ 研究概要■ 産業界へのアピールポイント■ 実用化例・応用事例・活用例魚類での発生研究から人間の体のつくりと疾患の理解へゼブラフィッシュ、個体発生、脳発生、神経形成、遺伝子制御、遺伝子導入、トランスジェニック動物、疾患モデル、ゲノム編集キーワード【最近の研究テーマ】●各種発生制御遺伝子(転写調節因子や成長因子の遺伝子)の転写制御機構。●iPS細胞作製に必要な山中ファクターの1つ、Oct4のゼブラフィッシュ相同遺伝子(Pou2)が個体発生で果たす役割の検討。●睡眠・覚醒に関わる神経系の遺伝子レベルでの発生・発達制御機構。●初期の脳原基において、脳形成と神経分化の協調的制御を可能にする遺伝子機構。  http://devbiol.seitai.saitama-u.ac.jp弥益 恭 教授大学院理工学研究科 生命科学部門 生体制御学領域小型熱帯魚ゼブラフィッシュをモデルとし、脳発生の遺伝子制御について、特に初期脳形成での脳部域化、その後の視床下部、脳幹の発生に焦点を当てて研究している。ゼブラフィッシュは、遺伝子導入、変異体作製、遺伝子破壊等の発生遺伝学的手法に適しており、脳形成機構を遺伝子レベルで明らかにすることができる。これまでに、神経板の前端に生じ、終脳(大脳)等の形成を誘導する前方神経境界(ANB)、中脳と小脳の境界(中脳後脳境界、MHB)に生じ、周辺脳領域の形成を誘導する峡部構造の発生について、制御に関わる転写因子、成長因子の役割を明らかにした。脊椎動物の間で脳の初期発生のしくみは非常に似ているため、魚で得られた研究成果はヒトの脳発生の理解にも重要である。また、脳の発生・発達の異常に起因する各種ヒト先天性脳疾患の病因の理解、治療法の開発等にも貢献しうると期待される。基本的には基礎研究であるが、応用可能性の例は以下の通りである。●ゲノム編集技術による特定疾患遺伝子の破壊と疾患モデル動物の作製。●作製した疾患モデル魚を用いた薬剤効果の検討、スクリーニングへの協力。●癌細胞など、特定細胞、組織の蛍光による標識と生体における追跡。●我々の研究室では現在応用研究を行っていないが、世界的には、ゼブラフィッシュは疾患モデルの作製、薬剤スクリーニング等で広く用いられており、協力が可能である。〈図1 脳の部域化・模式図〉終脳(大脳)を蛍光標識したゼブラフィッシュ胚(1日胚:スケールバー、50µm)初期脊椎動物胚における脳原基の部域化〈図2 蛍光像写真〉ライフ83

元のページ  ../index.html#90

このブックを見る