MIF: Mass-independent fractionation of sulfur isotopes (non-mass-dependent fractionationとも)

質量非依存の硫黄同位体分別について、私の理解が全く不十分でした。

岩石の硫酸塩(や硫化物)で見られる硫黄同位体比について、33Sは、単に33Sの分別でなく、34Sと33Sの分別の違いを表しています。

33S=33S-0.515×34S  

   (ただし、個々の同位体の分別値は、以下のように定義される

   3XS (‰) = 1000 · [3XS/32S) / (3XS/32S)CDT − 1]

   ここで、分母のCDTは(これらの測定で世界共通に使われている)標準試料での値を表す。また、Xは3または4である。

   [このような同位体分別 の算出方法は、炭素同位体でも同様です。]

   [まれには、36Sを測定することもある。この場合は36S=36S-2×34Sというような式となる]

   つまり、最も多い同位体32Sと比べた33S, 34Sの含量を標準試料と比較し、その差が質量数の違いに比例するかどうかを調べている。)

この値がゼロである場合は(上式の定数0.515は多分経験的な値だと思いますが)、34Sと33Sとの質量の違いに依存した分別だけで説明できるのに対し、ゼロから外れるということは、それ以外の質量に比例しない分別が起こっているということを表します。

このページ一番下の解説によると、酸素のない大気中のSO2は、紫外線(170-220 nm)で不均化して、正の値を持つ(33Sが相対的に多い)硫酸イオンと負の値を持つ(34Sが相対的に多い)元素硫黄S8 (S0) になるとのこと。(これがMIFについて初めて発表したFarquharらの主張のポイントであるようです。)

つまり、25億年前以前は、紫外線を遮るようなオゾンが全くなかったので、大気中のSO2から、紫外線によって、33Sの値が異なる硫酸イオンと 元素硫黄が作られ、ある場合にはそれぞれが別々の岩石を作った。すなわち33Sの値が正負の広い範囲にまたがっていることは、大気中の酸素濃度が非常に低かったことを表していると解釈されています。

そして、25億年以降この値のばらつきがなくなったのは、酸素が大気に満ちあふれて、SO2をすぐに硫酸イオンにまで酸化するようになったからということになります。

以上のようなことが、かろうじてうかがえる日本語での解説が以下にあります。

http://coe21.geo.titech.ac.jp/results/COE04-05_repo.HP/package4.pdf

ここでは、講義で示した図とほぼ同様なデータを示していますが、特に25-28億年の間でデータのバラツキが大きいことを強調しています。それ以前の時期は、海水組成に対する熱水活動の寄与(直接硫化物[33S=0]を供給する?)が大きかった(からバラツキが小さくなっている)と説明しています。

また、2番目の論文では、25億年以降は、酸素の蓄積と共に、微生物による硫酸還元(元素硫黄あるいはH2Sを作る)が広く起こるようになり、質量依存の分別(生物活性=酵素反応は重い原子・分子をいやがる)が広く見られるようになったと言っています。

なるほど、ですね。

 

上で引用した、もう少し詳しく書かれた論文(もし、ご希望であればpdfを送ります。)は、以下のようです。

大元ら:Sulphur isotope evidence for an oxic Archaean atmosphere. Nature 2006

http://www.nature.com/nature/journal/v442/n7105/full/nature05044.html

Farquharら:Isotopic evidence for Mesoarchaean anoxia and changing atmospheric sulphur chemistry Nature 2007

http://www.nature.com/nature/journal/v449/n7163/full/nature06202.html

Atmospheric chemistry: Her dark materials. Nature 2008

http://www.nature.com/nature/journal/v454/n7200/full/454041a.html