埼玉大学

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在学生の皆さんへ-学長メッセージを掲載しました

2020/4/3

在学生へのメッセージ


埼玉大学長 坂井貴文

本年度より埼玉大学の学長に就任した坂井貴文です。新年度の始まりにあたって在学生へメッセージを伝えたいと思います。

連日報道されているように、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がアジアのみならず世界に拡散され、WHOは3月11日に世界各地で同時多発的に病気が流行しているパンデミックに相当すると宣言をしました。新型コロナウイルス感染症の特徴は、感染者の多くが軽症で回復するのに対して、高齢者では重篤な症状を呈することです。特に若者は不顕性感染が多く、自覚のないままに他人に感染を拡散する可能性があります。この状況を受けて、政府は三つの「密」、すなわち、「換気の悪い密閉空間」、「多数が集まる密集場所」、「間近で会話や発声をする密接場面」を避けることによるクラスターの発生防止を国民に呼びかけています。

本学では、国における指針、国内外の感染状況及び専門家の意見を踏まえて慎重に検討した結果、授業の開始を2週間延期すると同時に、講義形式の授業を全て遠隔授業にて行うことを決定しました。これは学生の皆さんの感染リスクを下げるとともに、埼玉大学を感染のホットスポットにしないための公衆衛生上の処置として、また、今後、感染状況が変化しても授業を継続するための対応としてご理解をいただきたいと思います。一方、日本でも、ヨーロッパで起きているような爆発的感染拡大の懸念が払拭されておらず事態は流動的と言わざるを得ません。今後の状況によってはさらなる対応が必要になるかもしれませんので、大学が発信する情報に常に注意してください。また、在学生のガイダンスも動画配信等により実施します。授業、ガイダンスだけでなく種々のイベントも中止または延期となり、前年度までと違う状況に戸惑われるかもしれません。ホームページを必ず読み、大学が出す指示に従ってください。なお、各学部、研究科の窓口は開いていますので、何か不明な点があれば、電話等でお問い合わせください。

加えて学生の皆さんへの要望です。新規感染者が出続けている日本の現状は、感染爆発が起こるかどうかの瀬戸際であるとされています。他国の例を見れば明らかなように、ひとたび感染爆発が起きれば、重篤な患者が医療機関の収容能力を上回って発生し、たちどころに医療崩壊を招きます。このことは、通常の医療体制が維持できていれば助かる多くの人々が亡くなってしまうことを意味します。この新型コロナウイルス感染症の特徴として、不顕性感染者となった若者が、感染拡大を引き起こすことが知られています。学生諸君は若者が持つこの危険性を自覚し、大人数が集まる場には行かない、不要不急の移動をしない等を厳守してください。皆さん自身が「感染しない」、「感染させない」ことを意識して、各々の行動を再確認することを強く要請します。

さて、歴史を振り返ると、何らかの事象の渦中にあるときには意識が及ばなくとも、後で、そのことが時代の大きな転換点であったことに気がつくことがあります。近くでは、東日本大震災が挙げられます。津波に伴って福島第一原子力発電所のメルトダウンが起き、一時は制御不能の状況に陥りました。現在でも廃炉までの見通しがはっきりせず、完全な収束までにはまだ数十年の時間が必要とされています。この事故をきっかけに、現代の科学技術の危うさやそれをマネージする行政の不備などが明らかにされ、それまでの科学技術政策に対する信頼が損なわれました。人間が技術を制御できる限界が認識されたことは、今から思うと人間と科学との関わり方を見直す転換点になりました。今回、新型コロナウイルスの感染拡大を制御するために行われている在宅勤務や、生活困窮者や国民全員を対象に一定額の経済的支援を現金支給で行う、いわゆる「ベーシックインカム」の検討は、将来我々の働き方や社会の成り立ちを変える可能性があります。また、極めて短時間に世界的なパンデミックが起きていることから、グローバル化についても多くの議論が行われるに違いありません。おそらく、将来、新型コロナウイルス感染症のパンデミック前と後として、今が歴史の転換点として語られることになると思います。学生の皆さんは、今回の様々な事象を表面的に捉えるのではなく、それぞれの立場から、今起きていることの本質を考えてみてください。そのことが皆さんの学問を鍛えることにもなります。

当時、多くの死者を出した、同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)も今では大きな問題でなくなっています。現在、猖獗を極めている新型コロナウイルス感染症も人類の英知と協力により必ず鎮静化します。しばらくは不自由な時を忍ばねばなりませんが、希望を持って、前を向いて進んで行こうではありませんか。

2020年4月3日           .