10.後藤 和子 財政学 + 文化経済学
社会、経済、経営、行政、団体、グローバル、産業、文化
  PROFILE 研究者総覧
後藤 和子

		経済学部 経済学科
		教授

経 歴
京都大学理学部卒業
京都大学大学院経済学研究科博士課程修了、博士(経済学)
1998年 埼玉大学経済学部助教授
2004年 埼玉大学経済学部教授
2004〜2005年 オランダ・エラスムス大学ロッテルダム客員教授
国際交流基金派遣フェローシップ
2006〜2012年 Association for cultural economics international
(国際文化経済学会)理事、現在は協力メンバーとして理事会に参加
1998年〜現在迄 学会誌『文化経済学』編集主幹や編集長、編集委員として編集業務に携わる
2006年〜現在迄 日本地域経済学会理事
2010〜2012年 文化経済学会<日本>会長、
2008〜2010年 同副会長、現在は文化経済学会<日本>国際担当理事
2012年6月国際文化経済学会(ACEI)大会を、国際学会理事及び日本の学会長として京都にて開催

財政学をベースに文化、産業、都市政策、そしてクリエイティブ産業の可能性を探る。


 財政学をベースに、あまり研究されていない文化などの対人直接サービス領域の財政研究(経費論)からはじまり、都市政策やクリエイティブ産業へと研究領域を広げてきました。2004〜2005年にオランダ・エラスムス大学ロッテルダムに研究滞在(国際交流基金から派遣フェローシップをいただきました)したのを契機に、海外の研究者との共同研究が始まりました。
 エラスムス大学教授のS.Hemels教授とは、一緒に非営利組織と寄付に関するタックス・インセンティブ(税制のインセンティブ)の国際比較研究を行いました。彼女には、その後も、オランダの税制改革(2001年ボックス課税導入を中心に)や、クリエイティブ産業への税制のインセンティブ等の研究にあたって、オランダ国内の議論や研究について、いつも教えていただいています。
 R.Towse教授(文化経済学)は、クリエイティブ産業と著作権に関する研究の
		
先駆者ですが、Towse教授にも、彼女がエラスムス大学におられる時から現在まで、様々なアドバイスをいただいています。また「著作権の創造的破壊」という大変刺激的でインスピレーションに富む博士論文を書いたエラスムス大学C.Handke講師にも、色々なことを教えていただいています。
 2004〜2005年にかけてのオランダ研究滞在時のA.Klamer教授にも、オランダの経済や社会について、研究動向も含め、いつも教えていただいていることはいうまでもありません。
 こうした海外との研究交流を踏まえて、多くの論文や共著を執筆してきました。そうした成果を踏まえて、この春刊行するのが、『クリエイティブ産業の経済学:契約・著作権・税制のインセンティブ設計』(有斐閣)です。

■  『クリエイティブ産業の経済学: 契約・著作権・税制のインセンティブ設計』

■ その他の著書

『クリエイティブ産業の経済学: 契約・著作権・税制のインセンティブ設計』有斐閣、2013年


目 次
はじめに
序 章:クリエイティブ産業をめぐる課題と理論的展開
第1章:クリエイティブ産業と都市 - 東京都におけるクリエイティブ産業の集積
第2章:創造性と都市政策 - 文化政策と産業政策の融合
第3章:著作権制度におけるインセンティブと公共基盤 - 契約と産業組織の視点から
第4章:政策課税としての文化税制 - その理論的根拠とインパクト
第5章:創造性とイノベーションを促進する税制 - オランダにおけるボックス課税導入の背景とその評価
第6章:グローバル時代のNPO・寄付税制 - 国境を越える寄付とグローバル・タックスの視点から
第7章:寄付税制の国際比較
第8章:工芸産業の新たな展開 - 伝統とイノベーション
終 章:農村と地方都市におけるクリエイティブ産業発展の可能性
おわりに


『文化と都市の公共政策:創造的産業と新しい都市政策の構想』有斐閣、2005年
『芸術文化の公共政策』勁草書房、1998年
New Economic spaces in Asian cities, From industrial restructuring to the cultural turn,Routledge, 2012年(共著)
Handbook on economics of cultural heritage,Edward Elgar, 2013年近刊(共著)
『経済学は会話である:科学哲学・レトリック・ポストモダン』監訳書/A.クラマー著 日本経済評論社、2010年
『創造的都市:都市再生のための道具箱』監訳書/C.ランドリー著 日本評論社、2003年
『Basic 現代財政学 第3版』(有斐閣)や、『Basic 地方財政論』(有斐閣)も執筆する(共著)。
他にも、20冊を超える著書や共著、翻訳書がある。

PROCESS

《クリエイティブ産業の経済学》についての調査と研究

  • 財政学 → 文化領域の財政、経費論としての文化支出の分析から出発し、クリエイティブ産業のインセンティブとしての税制の分析
  • クリエイティブ・シティの調査と研究
  • クリエイティブ産業の空間集積の調査(東京都)
  • オランダでの研究滞在(2004年〜2005年)
  • 
エラスムス大学ロッテルダムに客員教授として滞在。その後も毎年夏にアムステルダムで開催されるサマースクールの講師を務める。
イタリア・カターニャ大学の大学院でもゲスト講師を務めた。文化経済学等のテキストを海外研究者と一緒に執筆する。
  • エラスムス大学のS.Hemels教授を学術振興会の制度で招聘し、税制に関する共同研究を実施(2006年)
  • 文化庁の調査で、海外の文化税制や美術品の国家補償制度の調査(オランダ・イギリス・フランス)
  • 著作権と契約に関する研究(著作権の「法と経済」、組織の経済学と契約理論)

■ クリエイティブ産業振興の果たす役割とは 「クリエイティブ産業の経済学」から


 クリエイティブ産業は、文化産業や著作権産業と呼ばれることもある。今日、財政赤字と不安定な世界経済情勢の中で求められているのは、創造とイノベーションに基づく新しい産業システムへの転換、それによる雇用の創出や、新たな社会的連帯を形成していくことにあるといえる。そうした中で、クリエイティブ産業といえば、他の主要産業のかたわらで日本の魅力を発信する小さな産業というイメージ、あるいは今後の経済成長を牽引する産業という期待もあるかもしれない。しかし、クリエイティブ産業の最も大きなインパクトは、経済成長や輸出の促進、雇用の創出といった量的インパクトより、他の産業システムに影響を与え、新たな経済システムへの転換を促進する点にある。

 「クリエイティブ産業の経済学」では、「芸術文化の公共政策」や「文化と都市の公共政策:創造的産業と新しい都市政策の構想」といった著書をより発展させるとともに、新たなテーマに挑戦したものである。創造の質と多様性を促進し、創造の基盤が豊かになるような流通


創造の質と多様性を促進し、創造の基盤が豊かになるような流通システムや経済社会システムへの転換が必要ではないかという問題意識の下、創造性のみでなく、文化的財やサービスがグローバル情報経済の中で流通する側面に光をあて、創造と流通との関係を契約と組織の視点から探求する。クリエイティブ産業の振興政策をデザインする前に、クリエイティブ産業の性質や、それが、なぜそのように組織されているのか、都市空間との関係はどのようなものかなどについて理解することは、より的を射た政策の立案にも役立つはずである。
 また、多くの国において、クリエイティブ産業振興は、文化政策と産業政策の両面から行われている。創造を支援する政策が文化政策だとすれば、その製品化と流通に光をあてるのが産業政策である。ただし、それらが相乗効果を発揮するのは難しく、どの国においても今後の重要な政策課題になっている。本書が、文化政策と産業政策、都市空間政策の政策統合にもヒントを与えることができれば、大変に嬉しく思う。

《クリエイティブ産業》とは?

● UKの定義(1998年):個人の創造性やスキル、才能を基礎とし、知的財産権の生成と開発を通して、富と雇用のポテンシャルを有する産業

《13分野の産業を定義》

1.広告、2.建築、3.アートと骨董、4.工芸、5.デザイン、6.デザイナーファッション、7.フィルムとビデオ、8.インタラクティブ・レジャーソフトウェア(ゲーム)、9.音楽、10.舞台芸術、11.出版、12.ソフトウェア、13.テレビとラジオ

『クリエイティブ産業の経済学』に関連する科学研究費補助金

1.応用経済学分野2005年―2007年(研究代表者:後藤和子)「文化政策と産業政策の政策統合による都市経済の再生に関する国際比較研究」


2.2006年度学術振興会・研究者招聘事業(短期)により、オランダ・ライデン大学よりS.Hemels講師(現在は、エラスムス大学法学部・税法及び税法と経済学主任教授)を招請し、「寄付税制のタックス・インセンティブと創造的産業の発展に関する国際比較研究」をテーマに3週間の共同研究を行った。その成果は、2007年10月刊行のTax Note Internationalに掲載された。

3.応用経済学分野2008年-2010年(研究代表者:後藤和子)「文化領域へのタックス・インセンティブの国際比較―創造性と都市経済へのインパクト」

4.応用経済学分野2011年-2013年(研究代表者:後藤和子)
「クリエイティブ産業と著作権に関する研究―産業組織と契約に着目して」

これまでの主な社会との関わり

 文化庁文化審議会文化政策部会委員などを務める。

経済産業省クリエイティブ産業課の委員を務める。

経済産業研究所の研究プロジェクトに参加する。

東京都産業労働局のクリエイティブ産業調査にアドバイザーとして参画する。

東京都芸術文化評議会委員を務める。

東京都豊島区には、文化政策懇話会委員や基本計画関係の委員として、また、区制80周年記念シンポジウム等の企画で10年以上にわたり継続的に関わっている。

内閣府沖縄総合事務局、長崎県、三重県等にも様々な形で関わってきた。

出身大学のある京都府では景観アドバイザーを務める。

研究者一覧