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名前:上原沙耶 日時:2005年02月09日 23時16分19秒

(1) Na2SO3 + H2SO4 → Na2SO4 + H2O + SO2
(2) Na2SO3 + 2H2SO4 → 2NaHSO4 + H2O + SO2
資料集などでSO2の実験的製法で(1)が書かれているんですが,
希硫酸は電離したらHSO4-がとても多く存在し,SO42-ちょっとしかできませんよね.
なのにどうして(2)よりも(1)が起こりやすいんですか?
すいません教えて下さい,変な質問でスイマセン…

H2SO4 → H+ + HSO4- K=きわめて大
H2SO3 → H+ + HSO3- K=1.7×10−2
HSO4- → H+ + SO42- K=1.3×10−2
HSO3 → H+ + SO32- K=6.2×10−8

名前:芦田 実 日時:2005年02月12日 14時55分00秒

上原沙耶 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問200 (1) Na2SO3 + H2SO4 → Na2SO4 + H2O + SO2
(2) Na2SO3 + 2H2SO4 → 2NaHSO4 + H2O + SO2
資料集などでSO2の実験的製法で式(1)が書かれているんですが,希硫酸は電離したらHSO4-がとても多く存在し,SO42-はちょっとしかできませんよね.なのにどうして式(2)よりも式(1)が起こりやすいんですか?すいません教えて下さい,変な質問でスイマセン.
 H2SO4 → H+ + HSO4- K=きわめて大  HSO4- → H+ + SO42- K=1.3×10−2
 H2SO3 → H+ + HSO3- K=1.7×10−2  HSO3 → H+ + SO32- K=6.2×10−8

回答 上の式(1)と式(2)は両方とも,反応物と生成物の量的関係(化学量論)を表しただけものであり,それぞれの化学種がどのような状態(イオン性の固体や結晶,分子,水和したイオン,水溶液等)で存在するかまでを表したものではありません.
 二酸化イオウSO2は水H2Oに良く溶けて亜硫酸H2SO3になります.この溶解を防いで,二酸化イオウを効率よく発生させるために,過剰の濃硫酸(または過剰のかなり濃い硫酸)H2SO4に亜硫酸ナトリウムNa2SO3の固体や亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3の固体を加えると思います.この場合,生成した水は水和水や結晶水として奪われていまい,フリーな水はほとんど存在しません.式(2)の硫酸水素ナトリウムNaHSO4には脱水される可能性がまだ残っています.したがって,濃硫酸を用いたなら,式(1)の方が起こると思います.生じた硫酸ナトリウムNa2SO4は固体であり,残った硫酸H2SO4はほとんど電離していないと思います.
 希薄な水溶液でしたら,式(2)の方が起こると思いますが,二酸化イオウSO2の発生量が少なく,反応物も生成物もイオンは全て電離していると思います.したがって,式(2)をもう少し正確に書くならば,次式になると思います.

(3) 2Na+ + SO32- + 2H+ + HSO4- → 2Na+ + 2HSO4- + H2O + SO2

ナトリウムイオンNa+や硫酸水素イオンHSO4-は反応に関与していませんので,式の中に書く意味が無くなります.亜硫酸イオンSO32-は,少し加水分解していると思いますが,それについては省略します.なお,硫酸は水中で電離平衡の状態になります.濃硫酸ではH2SO4分子の存在率が多く,希硫酸ではHSO4-イオンの存在率が多く,非常に薄い硫酸ではSO42-イオンの存在率が多いと思います.これについても,式(3)では省略しています.さらに,イオンの水和に関しても式(3)では省略しています.
 結論として,化学式や化学反応式をどこまで正確に書くかの問題だと思います.正確に書けば書くほど,式が複雑になると思います.式(1)や式(2)を見ただけでは,各化学種の存在状態や濃度のことまでは分かりません.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実