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名前:山口 秀樹 日時:2005年02月01日 23時46分45秒

はじめまして

私は,ワイヤー放電加工機という機械で金属を自在に切断していますが,困っていることがあります.
真鍮のワイヤ線をイオン交換樹脂ろ過水の水中で放電し加工しているのですが,1ヶ月ぐらいで水色の粒子が出てきて,やがて結合し,ステンレスの水槽の縁にペンキを塗ったかのように付着します.機械メーカーに問い合わせても,原因がわかりません.真鍮の中の銅と水が反応してなると推測できますが,メカニズムと予防策を教えて頂きたいのですが,よろしくお願いいたします.

名前:芦田 実 日時:2005年02月08日 14時00分00秒

山口 秀樹 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問198 私は,ワイヤー放電加工機という機械で金属を自在に切断していますが,困っていることがあります.黄銅のワイヤ線をイオン交換樹脂ろ過水の水中で放電し加工しているのですが,1ヶ月ぐらいで水色の粒子が出てきて,やがて結合し,ステンレスの水槽の縁にペンキを塗ったかのように付着します.機械メーカーに問い合わせても,原因がわかりません.黄銅の中の銅と水が反応してなると推測できますが,メカニズムと予防策を教えて頂きたいのですが,よろしくお願いいたします.

回答 ワイヤ放電加工とは,高電圧パルスによる放電で発生した数千度の高温により,被加工物(とワイヤ)の微少部分を融解・除去することを繰り返して加工する方法だそうです.このとき瞬間的に数千度の高温になりますから,銅Cuの一部と水H2Oが反応している可能性があります.生成物としては,酸化銅CuO,水酸化銅Cu(OH)2,銅イオンと水酸化物イオンが1:1で結合したものCuOH+,銅イオンCu2+等が考えられます.同様に,亜鉛の化合物も生じるでしょうし,被加工物による鉄等の化合物も生じると思います.さらに,融解で生じた種々の金属微粒子の表面も酸化物や水酸化物になっていると思います.これら全部の物質には大なり小なりイオン性(荷電)があると思いますので,微粒子となって集合したり,壁に付着したりすることもあり得ると思います.
 ステンレスの水槽の縁に付着するそうですが,水槽のアース(接地)は完全でしょうか.ワイヤ線と水槽はマイナス側(GND)だと思います.しかし,高電圧パルスに伴って微弱な電流が流れていて(漏電),イオン性の微粒子がステンレスの水槽にメッキされる様な効果も考えられます.オシロスコープで調べてみると良いと思います.この様なメッキ効果を除くには普通は,1V前後の直流電圧(例えば乾電池)を逆向きにかけると思います.しかし,放電加工機では高電圧を使用していますので,それが可能かどうか良く分かりません.
 金属の水酸化物や酸化物は酸に溶けると思います.お酢(酢酸の薄い水溶液)や希塩酸を布に付けて,拭いてみたら取れるかもしれません.また,水槽の内壁に絶縁性のグリス等を薄く塗ったら,付着し難くなるかもしれません.
 銅の付着問題を軽減するには,ワイヤを適切なものに変更する方法もあると思います.例えば,黄銅には組成の異なる6-4黄銅と7-3黄銅があったと思います.また,下記のホームページに放電加工や銅の付着対策用のワイヤも数種類載っていますので,一度ご覧下さい.

http://www.oberon.co.jp/Wire%20HP1/index%20wire.htm

その他,ワイヤ放電加工の原理については,必要ないかもしれませんが,例えば下記のホームページをご覧下さい.

http://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/2001/mech/1020149.pdf
http://tech.engg.nagoya-u.ac.jp/gijutsu/gihou/v3/16.pdf

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実

名前:山口 秀樹 日時:2005年02月08日 22時02分07秒

ご多忙中のところ,質問にお答えいただきありがとうございます.参考にさせていただきます.