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名前:宍戸 亮 日時:2005年01月31日 21時00分24秒

イオン化傾向を定量的に論じる方法にはどのようなものがありますか?

名前:芦田 実 日時:2005年02月01日 12時30分00秒

宍戸 亮 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問197 イオン化傾向を定量的に論じる方法にはどのようなものがありますか?

回答 イオン化傾向や標準電極電位については質問189179175(追加)15514157,45の回答もご覧下さい.イオン化傾向は,水中で金属が電子を放出して陽イオンになる性質であり,原子のイオン化エネルギー,単体の金属から原子を引き離すときに必要なエネルギー,陽イオンの水溶液中での安定性(温度,pH,共存イオン等)などによって決まります.また,水中における金属の陽イオンになりやすさの順序(イオン化傾向の大きなものから並べたの)をイオン化列と言います.
 イオン化傾向とイオン化列をもう少し理論的に扱って,具体的な根拠を与えたものとして,標準電極電位と電気化学系列があると思います.標準電極電位は,標準状態(電池反応に関与する物質の活量が1)における半電池の起電力(標準水素電極を基準とした値)であり,イオン化傾向がこれに相当すると思います.標準電極電位を,負の値の大きいものから順に並べたものを電気化学系列と言い,イオン化列がこれに相当すると思います.標準電極電位は,あくまでも標準状態における値であり,酸化・還元反応の方向や反応が起こるかどうかを考えるときに,イオン化傾向と同様に定性的に利用します.実際の電池の電極電位は,濃度が活量1になるとは限りませんので,標準電極電位と異なることが多いと思います.イオン化傾向が近かったり,濃度が極端に偏った場合には,逆反応も起こって化学平衡に到達すると思います.したがって,イオン化傾向に定量性を求めるのは本質的におかしいと思います.
 金属の酸化・還元反応を定量的に扱うには,各化学種の標準電極電位と活量(≒モル濃度)およびネルンストの式を用いて,実際の電極電位を求める必要があると思います.しかし,電極電位の値は反応に伴って,濃度とともに変化します.逆反応が起こって,化学平衡(電極電位=0V)に到達することもあります.さらに,水溶液中に共存する化学種の影響とその濃度,pH,温度や分極等によって複雑に変化し,反応メカニズムも変わると思います.定量的に扱うのは,かなり大変だと思います.この質問箱の回答でも,定性的に扱ったことしかありません.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実

名前:宍戸 亮 日時:2005年02月02日 09時00分25秒

先日イオン化傾向について質問した宍戸です.とても丁寧な回答ありがとうございました.これからも勉学に励みます.