| 名前:井上貞行 | 日時:2004年12月11日 17時05分42秒 |
はじめまして.既出でしたら申し訳ありませんが,原子半径について質問があります.もしよろしけば,コメントのほどお願いいたします. 同じ周期において原子半径は,一般的に周期表の右側に行くほど小さくなると記憶しています.その主な原因は,半径が同じで,電化(q1*q2)の積が大きくなるため,クーロン力が増大し,結果,電化が原子核に強く引き寄せられるため,半径が小さくなるのだと習った記憶があります. だとすると,希ガスがもっとも原子半径が小さくなるきするのですが,手元の教科書を見ると,半径がもっとも大きくなっています. これはなぜでしょうか? どうか,ご説明よろしくお願いします. | |
| 名前:芦田 実 | 日時:2004年12月17日 23時10分00秒 |
井上貞行 様 このホームページは無機化学系(または物理化学系)の研究室で作っています.必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.もっと正確なことや詳しいことが知りたければ,量子化学や量子物理学などの専門家に質問して下さい.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います. 質問176 原子半径について質問があります.同じ周期において原子半径は,一般的に周期表の右側に行くほど小さくなると記憶しています.その主な原因は,半径が同じで,電荷(q1*q2)の積が大きくなるため,クーロン力が増大し,結果,電荷が原子核に強く引き寄せられるため,半径が小さくなるのだと習った記憶があります.だとすると,希ガスがもっとも原子半径が小さくなる気がするのですが,手元の教科書を見ると,半径がもっとも大きくなっています.これはなぜでしょうか? 回答 原子やイオン等の半径には,その定義や測定方法の違いから,共有結合半径,金属結合半径,ファンデルワールス半径,イオン半径等があります.それらの定義や測定方法ごとに値が違いますので,同一の定義や測定方法で比較する必要があると思います.単原子分子である希ガスの原子半径を他の原子と比較するなら,当然ながらファンデルワールス半径を用いるべきだと思います.文献によって数値が多少異なりますが,例えば改訂4版 化学便覧 基礎編U(丸善,平成5年)には,希ガスNeの前後のファンデルワールス半径の値(単位Å=0.1nm)がC 1.70,N 1.55,O 1.52,F 1.47,Ne 1.54,Na 2.27,Mg 1.73と記載されています.確かに,CからFまでは右に行くほど小さくなっています.希ガスのNeのところで少しだけ大きくなっていますが,最大ではなく,NとOの間の大きさになっています. ![]() なぜ希ガスの原子半径がOやFより大きくなるのか考えてみます.これ以後は,想像を含めて回答します.原子の大きさ,すなわち最外殻電子の平均軌道半径を決定する因子には,正の原子核と負の電子間の静電的な引力だけでなく,電子間の静電的な斥力もあると思います.CからFの原子では,最外殻の電子軌道に空席があります(満員ではない)ので,各電子(軌道)が空間的な位置を少しずつ譲り合って,電子間の反発を和らげているのではないかと想像できます.ところが,Neでは最外殻が満員になり混み合って,各電子(軌道)が反発しあうことが想像できます.そのために,希ガスになるとファンデルワールス半径が少しだけ大きくなるのではないでしょうか.別の言い方をすると,Neの原子半径がFよりも小さいと仮定したら,原子核がL殻において電子を引きつける力にまだ余裕があることになります.そうすると,次のNaになっても,さらに電子がL殻に入ってもよさそうに思います.Naになったら,外側のM殻にしか電子が入れなくなる理由が説明できそうもありません. 結論として,1つの電子殻に入れる電子の数には限界があります.その限界(希ガス)では,電子が満員になって,電子同士の斥力が大きくなるため,原子半径が少し大きくなったのではないかと思います.そのため,次の1族では電子がさらに外側の電子殻に入らざるを得ないのだと思います. なお,参考として質問161,79,11の回答や下記のホームページ等もご覧下さい. http://kouen.s11.xrea.com/Merto/chemistry/r_of_atom.htm http://www.ipe.tsukuba.ac.jp/~s991608/genso.htm 埼玉大学教育学部理科教育講座 芦田 実 | |
| 名前:井上貞行 | 日時:2004年12月23日 15時24分41秒 |
芦田様(漢字が不適切でしたら申し訳ありません) このたびは,質問にお答えいただきありがとうございます. 大変参考になりました.先生の言われたことを参考に,さらにいろいろな本を調べていきたいと思います. 私は,今,バングラデシュという国で理数科教師としてこの国で理科の先生になる生徒たちに化学と物理を教えています(ボランティア活動ですが). そこで,生徒からああいった質問が出て,困っていたところでした. この国で,教育にかかわらせていただいているのですが,あいにく僕の専門が地質学なので化学にかんする系統だった知識は僕にはありません. ですので,なるべく自分で本を調べることにはしていますが,今後も,生徒から僕の手に余る質問があるたび,先生にはお世話になるかもしれません.そのときは,よろしくお願いします. では,今回はほんとうにありがとうございました. | |