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名前: 日時:2004年12月01日 00時19分38秒

炭酸塩と硫酸塩の溶解度がわかりません.教えてください.

名前:芦田 実 日時:2004年12月11日 18時45分00秒

遥 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問172 炭酸塩と硫酸塩の溶解度がわかりません.教えてください.

回答 この質問は漠然とし過ぎていて,溶解度について何を聞きたいのか全く理解できません.
 溶解度は濃度の一種ですから,その定義は質量%,モル濃度など多数あります.自分が好きなものを選べば良いと思います.高校化学の教科書では,水100 gに溶ける溶質(無水物)の質量(g)の数値で表すことが多いと思います.
 炭酸塩や硫酸塩の溶解度では,溶解度曲線が途中で折れ曲がることがあります.これは,溶解平衡にある固体(溶質)の結晶水の数がその折れ曲がり点の上下の温度で変わるためです.結晶水の数が変わるのは,その温度において安定な方の結晶ができるためです.
 例えば,硫酸ナトリウムの固体には無水塩と10水塩等があります.温度60℃では硫酸ナトリウムは無水塩の方が安定です.60℃の水100 gに溶ける硫酸ナトリウム無水塩の質量は45.1 gです.これ以上,無水塩を添加すると,溶解せずにそのまま沈殿します.
 温度20℃では硫酸ナトリウムは10水塩の方が安定です.20℃の水100 gに溶ける硫酸ナトリウム無水塩の質量は19.0 gです.硫酸ナトリウム無水塩の式量は142です.硫酸ナトリウム10水塩の式量は322で,この中の結晶水の分は180です.したがって,20℃の水75.9 gに硫酸ナトリウム10水塩43.1 gを溶解しても,ちょうど溶解度になります.すなわち,不足分の水24.1 gは結晶水から供給され,水の合計量は100 gになります.これ以上,10水塩を添加しても,溶解せずにそのまま沈殿します.なお,20℃の飽和水溶液に無水塩を添加した場合には,それが10水塩に変化して沈殿しますので,水が奪われます.ゆえに,無水塩として添加した以上の量が沈殿します.結果として,水溶液の濃度(溶解度)は変わりませんが,液量が減少します.さらに,無水塩の添加を続ければ,最後には硫酸ナトリウム10水塩の固体だけになります.
 温度とともに溶解度が増加する場合には溶解熱が吸熱,温度が上昇すると溶解度が逆に減少する場合には溶解熱が発熱なのだろうと思います.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実