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名前:石井 龍 日時:2004年09月01日 21時48分49秒

高校生です.宿題が分かりません.お願いします.

1 銀指輪を温泉につけたら黒くなった.
家でもとに戻すには,アルミの鍋で食塩水でにると良い.
この現象をイオン反応式を用いて説明しなさい.

2 05M硫酸鉄(V)aq10mlに108gの銀片を入れておいたら,
銀片の重さが半分になった.
このことから鉄と銀のイオン化傾向についてどのようなことがいえるか.

ぶしつけな質問,御容赦ください.

名前:石井 龍 日時:2004年09月01日 21時54分20秒

本当にすいません,下の2の05Mは0.5Mの間違いです.


名前:芦田 実 日時:2004年09月02日 17時00分00秒

石井 龍 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問141 1 銀指輪を温泉につけたら黒くなった.家でもとに戻すには,アルミの鍋で食塩水でにると良い.この現象をイオン反応式を用いて説明しなさい.
2 0.5M硫酸鉄(V)水溶液10mlに108gの銀片を入れておいたら,銀片の重さが半分になった.このことから鉄と銀のイオン化傾向についてどのようなことがいえるか.

回答 ホームページに書いてあるように,急ぎの質問は原則としてお断りしています.多忙であるためです.また,私が満足するような丁寧な回答を作成するためには,時間が丸一日かかるためです.
 これらの質問は高度な内容を含んでおり,イオン化傾向などの高校化学の教科書の範囲では回答できないと思います.したがって,高校の先生が宿題としてどのレベルまでの回答を要求しているのか疑問です.
 イオン化傾向よりも理論的な標準電極電位の値を以下に示します.2つの半反応を組み合わせたとき,標準電極電位の値がよりマイナスで小さい半反応(下表でより上側)が左に進行し,よりプラスで大きい半反応(下表でより下側)が右に進行します.さらに,2つの標準電極電位の差が大きいほど反応が起こりやすく,速度が大きくなります.ただし,標準状態の定義が気体では1気圧,固体では純粋なもの,溶液では濃度1Mと定義されています.実際には,これらの圧力や濃度等で実験するわけではありません.条件によっては実際の電極電位がかなり変わって反応しなかったり,反応の方向が逆になったりすることもあると思います.

表 標準電極電位
  Al3+ + 3e- → Al  -1.676V  (1)
  Ag2S + 2e- → 2Ag + S2-  -0.691V  (2)
  S + 2e- → S2-  -0.447V  (3)
  Fe2+ + 2e- → Fe  -0.44V  (4)
  S + 2H+ + 2e- → H2S(g)  +0.174V  (5)
  Ag2SO4 + 2e- → 2Ag + SO42-  +0.654V  (6)
  Fe3+ + e- → Fe2+  +0.771V  (7)
  Ag+ + e- → Ag  +0.7991V  (8)


 1つ目の質問は,温泉につけると硫化銀ができて黒くなると思います.温泉が酸性なら式(2)が左に進み,式(5)が右に進むと起こると思います.単純な式(8)では反応しないと思います.
 2Ag + S2- + S + 2H+ → Ag2S + H2S(g)
 ∴ 2Ag + S → Ag2S

温泉が塩基性なら式(2)が左に進み,式(3)が右に進むと起こると思います.単純な式(8)では反応しないと思います.
 2Ag + S2- + S → Ag2S + S2-
 ∴ 2Ag + S → Ag2S

次に,アルミの鍋で食塩水でにると,アルミニウムイオンができ,金属の銀が析出して元に戻ると思います.食塩の役割はよく分かりません.電子を運ぶ手助けをして,反応を加速している(触媒)ことが想像できます.式(1)が左に進み,式(2)が右に進むと起こると思います.
 2Al + 3Ag2S → 2Al3+ + 6Ag + 3S2-


 2つ目の質問の反応は式(6)が左に進み,式(7)が右に進むと起こると思います.式(4)や式(8)では反応しないと思います.硫酸イオンの役割(触媒?)はよく分かりませんが,無いと反応が起こらない可能性があります.
 2Ag + SO42- + 2Fe3+ → Ag2SO4 + 2Fe2+

ただし,この現象から鉄と銀のイオン化傾向については何もいえないように思います.次の2つの回答が考えられます.
 0.5M硫酸鉄(V)水溶液10mlには鉄(V)イオンが0.005mol含まれています.ところが,銀片は108g=1molありますから,銀の物質量のほうが圧倒的に多く存在します.銀片が溶けて質量が半分になることは絶対にあり得ません.したがって,このような現象が起こるはずがないので,それに基づいて考えてはいけないように思います.
 銀片の質量が1.08g=0.01molの間違いだとしたら,確かに上式にしたがって反応が起こると思います.ただし,イオン化傾向とは式(4)と式(8)のような反応だと思います.しかし,これらの式で反応しているわけではありません.前述のように硫酸イオンの役割はよく分かりませんが,式(6)で硫酸イオンを無視したら式(8)と同一になるはずです.ゆえに,無視したらいけないように思います.また,式(7)でイオン化傾向を議論して良いのか疑問に思います.したがって,この現象を鉄と銀のイオン化傾向だけで考えてはいけないように思います.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実

名前:石井 龍 日時:2004年09月02日 22時23分53秒

ありがとうございます.
ところで携帯のメールなので添付ファイルが削除されてしまいました.
あとニ三日はインターネットを見れない状況なのですが,ホームページ上にも解答が掲載されているでしょうか?

名前:芦田 実 日時:2004年09月03日 09時11分54秒

ホームページのほうがメインですので,ずっと回答を掲載しています.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実

名前:石井 龍 日時:2004年09月03日 12時29分32秒

ありがとうございます

名前:石井 龍 日時:2004年09月04日 22時02分43秒

お忙しい中この上ないほど丁寧な解答ありがとうございました.大変参考になりました.
僕の高校では化学に特に力をいれているようで,先生に聞いてみると理系の選択科目では大学1,2年レベルのことをやっているそうです.