前に戻る

名前:河野由佳 日時:2004年08月16日 17時27分27秒

沈殿滴定の終点検出方法がFajans法とMohr法とVolhard法がありますがそれぞれの利点と欠点を教えてほしいです.

名前:芦田 実 日時:2004年08月21日 17時00分00秒

河野 由佳 様

 必ずしも専門家ではありませんし,実験して確かめた訳でもありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問136 沈殿滴定の終点検出方法がFajans法とMohr法とVolhard法がありますがそれぞれの利点と欠点を教えてほしいです.

回答 詳細については分析化学の本(例えば,裳華房の「基礎化学選書2 分析化学」など)をご覧下さい.
 Mohr法では,ビュレットにグリースをつけてはいけない.指示薬にクロム酸カリウムを使うので実験廃液を捨ててはいけない.クロム酸銀の沈殿が目に見える程度に生成するまでに硝酸銀を余分に消費するので,空試験(白試験,ブランクテスト)を行って補正する必要がある.酸性ではクロム酸銀の沈殿が溶解し,強塩基性では酸化銀が沈殿して妨害するので,中性付近で実験する必要がある.臭素イオンの定量もできる.ヨウ素イオンとチオシアンイオンではこれらの銀塩(沈殿)がクロム酸銀の沈殿を強く吸着するので終点が分かり難い.
 Fajans法では,臭素イオン,ヨウ素イオン,シアンイオン,チオシアンイオンも定量できる.強塩基性では酸化銀が沈殿するし,中性付近(pH7〜10)でないと陰イオン性色素のフルオレッセインが働かない.
 Volhard法では,使用する薬品の種類が多く準備が大変であり,逆滴定法を使うので実験操作も複雑になる.温度が高いと鉄チオシアン錯体が退色するので,夏期には氷冷しながら滴定する必要がある.終点近くで,実験液を激しく振ってやらないと,終点が早めにでる.酸性溶液中でもハロゲンイオンを定量できる.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実