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名前:健康優良児 日時:2004年01月23日 22時26分43秒

大学受験勉強中のものです.pHについて教えて頂きたいのですが.下記の問題が解けません.

「0.1mol/の塩化アンモニウム水溶液のphを,連続する整数値の範囲で示せ.ただし,アンモニア水溶液の電離定数はKb=1.79x10-5(←1.79掛ける10のマイナス5乗です)とする.(解答例1<pH<2)」

pHは水素イオン濃度,あるいは水酸化物イオン濃度が分かれば出せることは理解しているのですが,塩化アンモニウムは
NH4Cl → NH4+ + Cl-
と,水素イオン,水酸化物イオンのどちらの濃度も分かりません.問題中にアンモニア水溶液の電離定数が記述されているので
NH3 + H2O → NH4+ + OH-
が関係するのであろうとまでは分かるのですが.

小さい文字が書けず,読み苦しくて申し訳ございませんが,ご解答頂けましたら助かります.

名前:芦田 実 日時:2004年01月28日 00時45分

健康優良児 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問75 pHについて教えて頂きたいのです.下記の問題が解けません.
「0.1 mol/の塩化アンモニウム水溶液のpHを,連続する整数値の範囲で示せ.ただし,アンモニア水溶液の電離定数はK=1.79×10−5とする.解答例 1<pH<2」
pHは水素イオン濃度,あるいは水酸化物イオン濃度が分かれば出せることは理解しているのですが,塩化アンモニウムは

  NHCl → NH + Cl

と,水素イオン,水酸化物イオンのどちらの濃度も分かりません.問題中にアンモニア水溶液の電離定数が記述されているので

  NH + HO ⇔ NH + OH

が関係するのであろうとまでは分かるのですが.

回答 塩素イオンが水中で安定なので,塩化アンモニウム(初濃度をCとします)は水中で完全に電離すると仮定します.

  NHCl → NH + Cl

生じた塩素イオンは水中で安定なので,ずっとイオンのままで存在します.アンモニウムイオンは水中で不安定なので,その一部(反応した割合をαとします)が水と反応(加水分解)し,水中でより安定なアンモニア分子に変化します.

  NH + HO ⇔ NH + HO

または

  NH ⇔ NH + H  (1)
  C(1−α) Cα  Cα

ヒドロニウムイオン(水素イオン)が生じ,それが再びアンモニア分子と結合しますので,上の反応はごく少ししか起こらず,極端に左に偏った化学平衡(平衡定数をKとします)になります.

  K = [NH][H]/[NH]

 水はごく一部が電離しています.イオン積をKとすると

  HO ⇔ H + OH  (2)

  K = [H][OH] = 1.0×10−14 (mol/

 水中にアンモニア分子,アンモニウムイオン,水酸化物イオンが同時に存在すれば,これらの濃度の間に希薄水溶液中では,常に次の電離平衡が成り立ちます.

  NH + HO ⇔ NH + OH  (3)

  K = [NH][OH]/[NH] = K(1−α)/Cα = 1.79×10−5  (4)

 上の式をαについて解き,水素イオン濃度を求めると

  α = {(K+4KC)1/2−K}/(2KC)

  [H] = Cα ={(K+4KC)1/2−K}/(2K) = 7.47×10−6 mol/

  ∴ pH = 5.13   解答 5<pH<6

 結論として,塩化アンモニウムが水に完全に溶解した後は,温度が一定なら上の式(1),(2),(3)の電離平衡が同時に常に成り立ちます.これが化学平衡(電離平衡)の本質です.例えば,式(3)を考えます.外から酸を添加すると,水酸化物イオンが中和されますので,水酸化物イオンの濃度が減少します.この影響で,アンモニア分子の濃度が減少し,アンモニウムイオンの濃度が増加します.ゆえに,式(3)は右方向へ移動し,新しい電離平衡になります.このように,各濃度は変化しますが,それらの濃度の変化量の大小関係がうまい具合になっていて,式(4)の電離定数Kは変化しません.言い換えると,アンモニア分子,アンモニウムイオン,水酸化物イオンの間の化学的関係(性質)がそのようになっているからです.自然現象(化学的現象)が先にあるわけです.後から人間がその現象に気がついて,希薄溶液中の電離平衡という法則にまとめ,電離定数の式に表したにすぎないわけです.化学物質ごとに電離定数の値が違うのは,その基になる化学的性質が違うからです.アンモニアにはアンモニア特有の化学的性質があり,それによってアンモニア特有の化学反応を起こし,アンモニア特有の化学平衡に到達する,すなわちアンモニア特有の電離定数に必ずなるわけです.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実

名前:健康優良児 日時:2004年01月29日 21時20分36秒

ご回答どうもありがとうございました.
とても助かります.
これからゆっくり考えてみます.