名前:kana | 日時:2003年11月11日 19時57分42秒 |
こんにちは.高校1年生です.この間,化学の実験で中和滴定をしました.私は化学がすごく苦手でレポートも完成できていません.1週間教科書を見たり,インターネットで調べたりしているのですが全然分からないので教えてください. 実験の内容は,市販の食酢の酢酸の濃度を中和滴定によって求める.酢酸の濃度を水酸化ナトリウム水溶液によってもとめ,水酸化ナトリウム水溶液の濃度はシュウ酸で標準溶液を作りこれにより求めるというものです.水酸化ナトリウム水溶液の平均値は9.95mしになり,酢酸の平均値は7.56mしになりました.水酸化ナトリウムのmol濃度と10倍に薄めた市販の食酢のmol濃度はどのようにして求めればよいのでしょうか?? 薄めた食酢の濃度は何mol/しか? また,食酢の密度を1.04g/cm3として,食酢中の酢酸の 質量パーセント濃度[%]を求めよ. この問題も教えてください.よろしくお願いします. |
名前:芦田 実 | 日時:2003年11月12日 20時30分 |
kana 様 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います. 質問66 実験の内容は,市販の食酢の酢酸の濃度を中和滴定によって求める.酢酸の濃度を水酸化ナトリウム水溶液によってもとめ,水酸化ナトリウム水溶液の濃度はシュウ酸で標準溶液を作りこれにより求めるというものです.水酸化ナトリウム水溶液の平均値は9.95mしになり,酢酸の平均値は7.56mしになりました.水酸化ナトリウムのmol濃度と10倍に薄めた市販の食酢のmol濃度はどのようにして求めればよいのでしょうか?? 薄めた食酢の濃度は何mol/しか?また,食酢の密度を1.04g/cm3として,食酢中の酢酸の質量パーセント濃度[%]を求めよ. 回答 物質量のモルは化学種(原子,分子,イオンなど)の個数を数えるときの単位です.化学種が非常に小さいため,その数が非常に大きくなるので,個数を数えるときに便利なように導入されました.例えば,何十万円ものお金を数えるときに全て1円玉で1枚2枚と数えたら大変ですが,1万円札で1枚2枚と数えたら簡単です.この例では,化学種1個が1円玉1枚に,1 mol(アボガドロ数個分)が1万円札1枚(1円玉10000枚分)に相当すると思います. モル濃度[mol/し]は単位体積(1し)中に含まれる化学種の物質量[mol]です.例えば,モル濃度1.0 mol/しの溶液10 し中に含まれる化学種の物質量は1.0 mol/し×10 し = 10 mol,モル濃度0.10 mol/しの溶液10 mし中に含まれる化学種の物質量は0.10 mol/し×0.010 し = 0.0010 molとなります.これらにアボガドロ数(6.02×1023 個/mol)をかけると化学種の本当の数が求まります. 酸−塩基の中和反応では水素イオンH+の数(または物質量)と水酸化物イオンOH−の数(または物質量)が等しくなったときに,ちょうど中和します. シュウ酸(COOH)2はカルボキシル基が2つ結合した形なので,1つの分子から水素イオンH+が2つ生じます.水酸化ナトリウムNaOHからは水酸化物イオンOH−が1つ生じます.酢酸CH3COOHからは水素イオンH+が1つ生じます. 滴定前のシュウ酸のモル濃度をCS,NaOHのモル濃度をCNaOH,10倍に薄めた後の酢酸のモル濃度をCとします.単位は全てmol/しです. シュウ酸とNaOHの滴定で,ちょうど中和するために使用したシュウ酸の体積をVS,NaOHの体積をVNaOHとします. シュウ酸から生じる水素イオンH+の物質量は 2×CS[mol/し]×VS[し] = 2CSVS[mol] となります.これにアボガドロ数をかけると水素イオンH+の数が求まります. NaOHから生じる水酸化物イオンOH−の物質量は CNaOH[mol/し]×VNaOH[し] = CNaOHVNaOH[mol] となります.これにアボガドロ数をかけると水酸化物イオンOH−の数が求まります. 中和に使用した水素イオンH+の物質量(または数)と水酸化物イオンOH−の物質量(または数)が等しくなりますから 2CSVS = CNaOHVNaOH ∴ CNaOH = 2CSVS/VNaOH 酢酸とNaOHの滴定で,ちょうど中和するために使用した酢酸の体積をV,NaOHの体積をV ’NaOHとします. 酢酸から生じる水素イオンH+の物質量は C[mol/し]×V[し] = CV[mol] となります. NaOHから生じる水酸化物イオンOH−の物質量は CNaOH[mol/し]×V ’NaOH[し] = CNaOHV ’NaOH[mol] となります. 中和したときには水素イオンH+の物質量(または数)と水酸化物イオンOH−の物質量(または数)が等しくなりますから CV = CNaOHV ’NaOH ∴ C = CNaOHV ’NaOH/V −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実験条件が不足していますので,以下は想像で回答します.この実験では,上のビュレットにNaOHを入れるほうが,ビュレットを交換したり,ビュレットを水で洗って次に入れる水溶液で共洗いする必要がないので,実験が簡単になります. 下のビーカーにモル濃度CS = 0.0500 mol/し(仮定)のシュウ酸をVS = 10.0 mし(仮定)入れ,上のビュレットにNaOHを入れて滴定し,NaOHをVNaOH = 9.95 mし(仮定)滴下したところでちょうど中和したと仮定します.この場合のNaOHのモル濃度は CNaOH = 2CSVS/VNaOH = 2×0.0500 mol/し×10.0 mし/9.95 mし = 0.1005025 mol/し ≒ 0.101 mol/し 上の計算では,本来は体積の単位をmしからしに変換してから計算すべきですが,分子と分母にmしの単位があり,それらが約せ(打ち消しあい)ますので,手を抜いて上の様に計算しても同じ結果となります. 下のビーカーに酢酸をV = 10.0 mし(仮定)入れ,上のビュレットにNaOHを入れて滴定し,NaOHをV ’NaOH = 7.56 mし(仮定)滴下したところでちょうど中和したと仮定します.市販の食酢を10倍に薄めた後の酢酸のモル濃度は C = CNaOHV ’NaOH/V = 0.101 mol/し×7.56 mし/10.0 mし = 0.076356 mol/し ≒ 0.0764 mol/し 市販の食酢中の酢酸のモル濃度は 10C = 0.764 mol/し (10倍に薄める前のモル濃度) 酢酸分子中の原子の数と原子量より酢酸のモル質量(分子量)は 2×12.01+2×16.00+4×1.008 ≒ 60.1 g/mol したがって,食酢1し中の酢酸の質量は 0.764 mol/し×1.00 し×60.1 g/mol ≒ 45.9 g 食酢の密度が1.04 g/cm3 ≒ 1.04 g/mしですから,食酢1しの質量は 1000 mし×1.04 g/mし = 1040 g となります.したがって,食酢中の酢酸の質量パーセント濃度は 45.9 g/1040 g×100 % ≒ 4.41 % なお,文献によると25℃における4%の酢酸水溶液の密度は1.0027 g/cm3です.問題文中の酢酸の密度は1.04 g/cm3であっていますか.あっているとすれば,純粋な酢酸の水溶液と不純物を含む食酢では密度が違うものと思います. 埼玉大学教育学部理科教育講座 芦田 実 |