名前:A.N | 日時:2003年07月17日 15時14分01秒 |
フェノールの水溶液が酸性を示す理由を教えてください. 化学が苦手なんでよくわかりません.よろしくお願いします. |
名前:芦田 実 | 日時:2003年07月21日 10時50分 |
A.N 様 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います. 質問44 フェノールの水溶液が酸性を示す理由を教えてください. 回答 電気陰性度とベンゼン環の共鳴の2つの効果だと思います.電気陰性度とは,原子(原子核)が電子を引きつける強さを表したものです.周期表でいうと,希ガスを除いて,右上のFが最も強く,左に行くほど,また下に行くほど弱くなり,左下のFrが最も弱くなります.この順序はクーロン引力の問題ですので,原子核中の陽子の数,最外殻の電子までの距離と,そこの電子数によって決まります.電気陰性度については,質問11の回答もご覧下さい.電気陰性度の効果で,フェノールのヒドロキシル基(−OH)では,酸素原子Oが水素原子Hから電子を引きつけて,少し電子密度が増加し(マイナスぎみになり)ます.水素原子Hは逆に電子密度が減少し(プラスぎみになり)ます. ベンゼン環はπ結合が共鳴していますので,酸素原子Oと結合している炭素原子Cが受ける電子密度の変化の影響を共鳴効果で弱め(非局在化し)ます.すなわち,オルト位とパラ位の電子密度が少し増加します.この2つの相乗効果で,水素原子Hが電離しやすくなり,フェノールの水溶液は酸性を示します.なお,通常のアルコール性OHでは,共鳴効果のほうがありませんので,水溶液は酸性を示しません. −OH基と同様に,ベンゼン環のオルト位とパラ位の電子密度が増加する置換基には−OR,−NH2,−NHR,−NR2,−F,−Cl,−Br,−I,−R(アルキル基)等があります.逆に,ニトロ基(−NO2)は窒素原子Nよりも酸素原子Oのほうが電気陰性度が大きいため,窒素原子Nの電子密度が減少し(プラスぎみになり)ます.ベンゼン環のπ結合が,この電子密度の変化を共鳴効果で弱め(非局在化し)ます.この場合は,オルト位とパラ位の電子密度が少し減少します.−NO2基と同様に,ベンゼン環のオルト位とパラ位の電子密度が減少する置換基には−CHO,−COR,−COOH,−COOR,−C≡N,−SO3H等があります.このような置換基の効果で,オルト位,パラ位が反応しやすいか,またはメタ位のほうが反応しやすいかが決まります. 埼玉大学教育学部理科教育講座 芦田 実 |
名前:A.N | 日時:2003年07月22日 00時34分54秒 |
こんなに親切に答えていただいてどうもありがとうございました. とてもわかりやすかったです. |