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名前:酸と塩基 日時:2003年05月29日 22時26分03秒

高校化学の酸と塩基なんですけど,硫酸ナトリウムは強酸の塩だと書いてありました.これは,硫酸ナトリウムのナトリウムをHで置換したら硫酸になるから,強酸の塩だと言う意味なんですか?だとしたら,硫酸ナトリウムの硫酸の部分をOHで置換すると,水酸化ナトリウムになるから,強塩基の塩ということにもなりませんか? もしかしたら根本的に間違っているのかもしれませんが,真剣に分からないので教えて下さい.

名前:芦田 実 日時:2003年06月02日 17時25分

酸と塩基 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問35 高校化学の酸と塩基なんですけど,硫酸ナトリウムは強酸の塩だと書いてありました.これは,硫酸ナトリウムのナトリウムイオンを水素イオンで置換したら硫酸になるから,強酸の塩だと言う意味なんですか?だとしたら,硫酸ナトリウムの硫酸イオンの部分を水酸化物イオンで置換すると,水酸化ナトリウムになるから,強塩基の塩ということにもなりませんか?

回答 質問されているとおりで,合っていると思います.酸と塩基を混合すると水と塩ができるという中和現象からきた言葉だと思います.すなわち,「硫酸ナトリウムは,強酸である硫酸と強塩基である水酸化ナトリウムが中和してできた塩である」という文を縮めたものと考えられます.ゆえに,より正確には「硫酸ナトリウムは強酸強塩基の塩だ」と言うべきでしょう.したがって,言葉の定義や分類の問題だと思います.なお,硫酸ナトリウムの工業的製法は必ずしも,上の中和反応を利用しているとは限りません.
 強酸強塩基の塩は,水に溶かすと強酸と強塩基がイオンに分かれますが,両方とも水中で安定で加水分解しませんので,水溶液はほぼ中性のままです.その他,強酸と弱塩基からできたものは強酸弱塩基の塩(例:塩化アンモニウム)と言います.水に溶かすと弱塩基が加水分解して,水素イオンを生じて弱い酸性を示します.弱酸と強塩基からできたものは弱酸強塩基の塩(例:酢酸ナトリウム)と言います.水に溶かすと弱酸が加水分解して,水酸化物イオンを生じて弱い塩基性を示します.弱酸と弱塩基からできたものは弱酸弱塩基の塩(例:酢酸アンモニウム)と言います.水に溶かすと弱酸と弱塩基が両方とも加水分解しますが,生じた水素イオンと水酸化物イオンが中和するので,ほぼ中性のままです.

 塩の別の分類方法として,正塩,酸性塩,塩基性塩というものがあります.例えば,硫酸と水酸化ナトリウムをモル数の比で1:2に混合しますと,水素イオンと水酸化物イオンが完全に中和しますので,正塩の硫酸ナトリウムができます.モル数の比で1:1に混合しますと,水素イオンが半分残りますので,酸性塩の硫酸水素ナトリウムができます.例えば,塩酸と水酸化カルシウムをモル数の比で1:1に混合しますと,水酸化物イオンが半分残りますので,塩基性塩の塩化水酸化カルシウムができます.すなわち,この分類方法は塩の組成(中和の程度)に基づく定義であり,その水溶液の性質を示すものではありません.例えば,炭酸水素ナトリウムは酸性塩ですが,弱酸強塩基の塩でもありますので,水溶液は弱い塩基性を示します.硫酸水素ナトリウムは強酸強塩基の塩なので加水分解は起こりませんが,水素イオンが半分残っていますので,これが電離して酸性を示します.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実

名前:酸と塩基 日時:2003年06月02日 18時03分53秒

質問箱に質問をした者です.よく分かりました.どうもありがとうございます.助かりました.自分で考えても分からない時は,また質問させていただきたいと思います.