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名前:高木 真弥 日時:2003年05月10日 21時23分41秒

硫黄と鉄を混ぜて,加熱しても磁石によって分離しにくいのは何故ですか?

名前:芦田 実 日時:2003年05月16日 11時00分

高木 真弥 様

 必ずしも専門家ではありませんし,実験して確かめたわけでもありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.何と何を分離したいのか,その目的物質が書いてありませんので,質問の意味がよく分かりません.いつくかの場合に分けて,想像で回答致します.

質問32 イオウと鉄を混ぜて,加熱しても磁石によって分離しにくいのは何故ですか?

回答 最初に混ぜたイオウと鉄を分離したい場合
 イオウと鉄を混ぜただけなら,鉄(強磁性)が磁石に付き,イオウ(反磁性?)は磁石に付きませんので,分離できると思います.しかし,加熱しますと,イオウ(白色〜黄色)と鉄(金属光沢)が化学反応(合体変身)して硫化鉄(黒色)ができます.新しい1つの化学物質(化合物)になりますので,磁石で分離(分解)することはできません.イオウ原子と鉄原子の化合割合(Fe:S)によって,硫化鉄(U)FeSの磁性(磁石に対する性質)は反強磁性(1:1〜0.9:1,磁石に付かない)〜フェリ磁性(0.9:1〜0.86:1,強磁性よりも弱いが,磁石に付く)と変化するそうです.硫化鉄(V)Fe:S=2:3(黒色粉末)の磁性はよく分かりませんが,たぶん磁石に付かないと思います.なお,この反応は固体同士の反応でもあり時間がかかりますので,粒子表面は硫化鉄になっても,内部にまだ鉄(またはイオウ)が残っている可能性もあります.鉄が残っていれば強磁性を示し,磁石に付くと思います.さらに,この反応は粒子同士の接触部分(表面)で起こりますので,生成した硫化鉄によってイオウ粒子と鉄粒子がくっつけられる様な効果も考えられます.いずれにしても,イオウと鉄を分離することは難しいと思います.

反応物のイオウや鉄と生成物の硫化鉄を分離したい場合
 上で述べましたように,反応が完全に終わらずに,粒子内部に反応物のイオウ(磁石に付かない)や鉄(磁石に付く)が残っている可能性があります.また,最初にイオウと鉄を混合する割合が悪くて,どちらか一方が余って残っている可能性があります.やはり,上で述べましたように,硫化鉄の磁性はFeとSの割合によって変化し,磁石に付く場合と付かない場合があります.さらに,FeとSの割合が様々の硫化鉄が混ざって生成している可能性があります.幾つかのケースが考えられますが,反応物と生成物を磁石で完全に分離することは難しいと思います.

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実