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名前:岸本 博文 日時:2002年09月21日 01時29分

先日はよう素滴定の分析の解説をして頂きありがとうございました.
事細かく解説していただいたので,よく解りました.(^o^)
つきましては,また新たに教えて頂きたいのですが.

キレート滴定法で行う硬度分析なのですが.
<全硬度>分析操作
試料に塩化アンモニウム−アンモニア緩衝液にてpH10になるまで添加し,その後エリオクロムブラックT指示薬を数滴入れ,EDTAにて溶液が赤紫色から青色になるまで滴定する.

<Ca硬度>分析操作
試料に水酸化カリウムにてpH12になるまで添加し,その後NN粉末指示薬を少量入れ,EDTAにて溶液が赤紫色から青色になるまで滴定する.

以上,上記分析について教えてもらえますか.
お願いします.m(__)m

名前:芦田 実 日時:2002年09月22日 14時50分

岸本 博文 様

 必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.

質問18 キレート滴定法で行う硬度分析なのですが.
<全硬度>分析操作
試料に塩化アンモニウム−アンモニア緩衝液をpH10になるまで添加し,その後エリオクロムブラックT指示薬を数滴入れ,EDTAにて溶液が赤紫色から青色になるまで滴定する.

<Ca硬度>分析操作
試料に水酸化カリウムをpH12になるまで添加し,その後NN粉末指示薬を少量入れ,EDTAにて溶液が赤紫色から青色になるまで滴定する.

回答 エチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid)は水にあまり溶けませんので,普通はこれの2ナトリウム塩(下式の最も左の分子)を使用します.名前が長くなりますので,略してEDTAと呼んでいると思います.ここでも2ナトリウム塩のことをEDTAと呼ぶことにします.EDTAは塩基性溶液中で金属イオンと1:1で結合し,環状構造の錯化合物(キレート,蟹が餌を捕まえたイメージ)を生成します.



 上の反応式をもっと正確に言うことにします.ビュレット中ではpH10よりもっと中性に近いので,EDTAは上式の最左の分子のような構造をしています.しかし,上側の塩の部分2つはナトリウムイオンNa+とカルボキシルイオンCOO-に電離していると考えられます.pH10やpH12の溶液に滴下されると,下側のカルボキシル基COOHの部分2つも水素イオンH+とカルボキシルイオンCOO-に電離します.水素イオンは直ちに水酸化物イオンOH-によって中和されます.逆に言うと,平衡反応なのでpHにもよりますが酸性溶液中では,上側のカルボキシルイオン2つもカルボキシル基になり,4つとも電離しないようになりますので,キレートを生成しないと考えられます.
 pH10の溶液中ではカルシウムもマグネシウムもイオンの状態(Ca2+とMg2+)で存在しますので,両方ともキレートを生成します(全硬度).pH12ではマグネシウムは水酸化物Mg(OH)2になり,キレートを生成しないと考えられます(Ca硬度).さらに強い塩基性ではカルシウムも水酸化物Ca(OH)2になり,キレートを生成しないと予想されます.しかし,EDTAや指示薬がそのような強い塩基にそのまま耐えられるかどうか,そこまでは知りません.
 陽イオン(Ca2+やMg2+)の一部がキレートになりきらずに残存している間は,それらが指示薬と結合しますので,赤紫色に呈色します.指示薬がEDTAに陽イオンを全て奪われると,指示薬本来の青色に変わります.滴定の終点の前には,陽イオンと結合した指示薬とフリーな指示薬の両方が存在するため,赤紫色と青色の混合色になります.エリオクロムブラックTとNN粉末を替えるのは,これら指示薬も酸塩基の一種であり,先ほどのEDTAと同様にpHによって陽イオンと結合する強さが変わるからだと思います.

モル濃度の計算方法
 陽イオンの価数に関係なく1:1で反応します.滴定に使用した既知濃度のEDTAの体積とモル濃度をV(m)とC(mol/)とします.最初に分取した未知濃度の試料の体積とモル濃度をV'(m)とC'(mol/)すると

C'V'=CV ∴ C'=CV/V'

水の硬度(ppm)
 水1000 m(=1000 g)中に存在するCa2+とMg2+のモル数の和が,それと同じモル数の炭酸カルシウムCaCO3式量100(g/mol)に換算して1 mg含まれているとき,硬度1度(CaCO3単位で1 ppm)とい言います.モル濃度を硬度に換算すると

硬度(度,mg/kg,ppm)=C'(mol/kg)・100(g/mol)・1000(mg/g)

埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実

名前:岸本 博文 日時:2002年9月25日 2時22分

回答ありがとうございました m(_ _)m
よう素滴定およびキレート滴定について教えて頂きありがとうございました.

分析手順とかはすぐに覚えられるんですが,なぜこの薬品が必要なのか?
どうしてこんな反応をするのか? 原理になるとチンプンカンプンで全然理解できないんです.(>_<)

こんなことやったら,学生時代にもっと勉強をしとったらなぁって後悔いしてます.(^_^;)

覚えている事は少なく,忘れることは多くなる一方です(*_*)

これからも芦田先生のお力をお借りすると思いますが,どうぞよろしくお願いします.m(_ _)m